裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

土曜日

ナターシャ本郷に行くわいな

 八百屋お七ロシア人説。朝7時起き。9時過ぎかと思ったくらい明るかった。昨日とはうってかわった晴天。朝食、マフィンサンド。晴れたとたんに調子戻り、午前中メンズプライス原稿10枚ザクザク。完成させてK子に渡し、鶴岡としばらく電話。

 風呂入り、リハビリマッサージ。母から電話。親父は集中治療室で字の練習をしているとか。昼は新宿の『王ろじ』でとん丼。建て替えで半年以上のご無沙汰だった。店はキレイになったが、味は変わらず。なぜか丼と皿が一体になっている容器も、焦がしタマネギとハム入りのとん汁も、王ろじ漬けも(考えてみれば全部この店のオリジナルであるところがすごい)、そしてスパイスがおかったるく効いたインディアン・カレーにカツが乗っているとん丼の味も以前のままでホッとする。

 食後、紀伊国屋書店の各売り場チェック。『とても変なまんが』ちゃんと一階の新刊コーナー、二階のサブカルコーナー、それからアドホックのマンガ売り場の三ケ所に平積み。よしよし。この本、書評がネットにちらほら出てきているが、好意的なものであっても主旨を正確に読みとれているところはさすがにない感じ。それも面白い現象である。鶴岡に教えられた、ビッグコミックオリジナルで私の著書に触れているほりのぶゆき氏のコラムも立ち読み。

 区役所通り裏の裏本屋を探索。さして面白いものはなし。昔の、“なんじゃこりゃあ!”というものにまま、ブチ当たった頃のエロ本の方が面白かったなあ。最近のはモデルの質が平均的にあがった分、工夫しなくなってしまった。ビデオではまだ、ヘンなのがいくつもあるようだが、これはまだビデオの方が製作にカネがかかり、そういい女優ばかりはそろえられないからであろう。比較的安価に作ることが出来るエロ本では、モデルの女性の方に被写体となることへの抵抗感がなくなったとたん、ルックスや体型が急激にソコアゲされ(それまではトップとボトムの差が27光年くらいあったものだ)、“アイデア勝負”の必要がなくなってしまった。スタンダードレイジングがなされると全体的に個性がなくなってしまうというのは、よくあることである。アニメしかり特撮しかり、エロ本しかり。エロ本などと一緒にすると怒るアニメオタクや特撮オタクもいるだろうが、これらの分野、つまりオタク文化の代表的分野の共通点は、作品点数がやたらとある割に業界全体はそんなに大きくないこと(一時300社以上あったエロ系出版社も現在では50社くらいに減っている)。だから、たまさか出たブロックバスター的なものに業界の主流が右へならえしてしまうと、いとも簡単に傾向が統一され、どれを見ても同じ顔、ということになってしまう。“やはり野におけれんげ草”で、質が高くなるのも考えものなのである。

 帰ってしばらく休息。それから宝島文庫用の『気持ちいいクスリ』原稿、ゲラ手直し。ここの文庫の原稿は原則として誤字、データ間違い以外は手直ししないのだが、この回の原稿のみはその後の状況が変化しすぎたので少々書き換える。それにしても私は、こういう文庫化による原稿の再利用がかなりの程度うまく回っているモノカキで、これは大変にありがたいことだと思う。それにはいろいろ工夫もあるのだが、これはまあ、企業秘密である(そんな大したことか)。

 夜、メディアワークス原稿。最中に藤倉珊氏から電話。こっちもいろいろ話したいことあるのだが、K子帰宅の時間が迫ったので途中で切る。夕食の準備。イカと大根の酢の物、豚バラ揚げ、ネギ豆腐。ビデオで『モンドカルネ2000』。山高帽に燕尾服、ステッキという格好で、借金滞納者にただエンエンとついていくだけ、という商売がオモシロイ。何もしないのだから文句も言えず、しかしながら彼らがくっついているというだけでコイツは借金を返してない、ということが世間に丸分かりになってしまうのである。

・今日のお料理『豚バラ揚げ』
 豚バラ肉をサイノメに切る。ピーマンやタケノコなどの野菜類もサイノメ。塩、コショウをしたあと、片栗粉をさっとまぶし、油で茶色になるまで揚げる。クルミやカシューナッツなども一緒に揚げる。スナック風味の、ちょっと変わった味の肉料理。

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