27日
金曜日
ぱくりびと
「今なら葬式の映画を作れば何でもあたるぞ、急いで撮ってしまえ!」
※『社会派くん』対談 東京中低域ツアー@下北沢440
9時目覚め、あら何ともなや、咳もゼイゼイもヒューヒューもなし。
普通に呼吸ができるということの、何たる幸せよ。
不思議であるが、昨日、帰宅が5時近かったとはいえ
昼間によく睡眠などとったせいか、それともベリコデとアスクロンと
いう超ミラクルパワーコンビの効果か。
ただ、それに関係あるのかないのか、左足に異様にむくみあり。
心臓が弱っているかな、と思う。
気をつけよう。10年前、事業のパートナーだったTという
男が、風邪をこじらせた末の心臓発作で急死している。
死の前々日に一緒にメシを食ったが、やたらハイでやたら大食をし、
鼻の頭に驚くほど大粒の汗をかいていていた。
「あのねえ、Tさん、その汗見ると、まだ体、本調子じゃないぜ。
もう少し安静にしていたら?」
と言ったが、いや、もう治った、大丈夫と繰り返し、翌々日、
営業仕事に向かう途中の自動車の中で突然死した。
横浜の実家まで葬儀に行ったが、残されたご両親の挨拶が哀れ
であった。とはいえ、私はそれを、ずるずると引きずっていた
事業の残りを成算してオノプロを完全にたたむ理由にし、
自由の身になれた。Tの死には秘かに感謝し、心の中でいつも
手を会わせている。それ以来、心臓が苦しかったりすると
すぐ鼻の頭に手をやって、汗をかいていないか確認しているが。
一応、10時半まで寝て、朝食。
バナナジュース、トマトのスープ。
昨日の件で某氏、某事務所から非常に好意的な連絡、ありがたし。
すぐにこちら側で連絡を取りあう。
外はミゾレまじりの雨。
眠いのはそのせいか、ゆうべの薬の効果がまだあるためか。
朝日原稿、字数調整にちょっと手間取る。
しかし、公演終ったあと、3月の〆切ラッシュの前に
脚本とか、残っている仕事を書き上げてしまうつもりが、
全く手付かずになってしまった。時間はムダに過ぎていってしまう
ものである。
SF作家フィリップ・ホセ・ファーマー25日死去、91歳。
北杜夫が学生時代、先輩たちが嬉々として語り合っている中国の
凄いエロ小説というのを手に入れ、どんな凄い描写があるのかと
ドキドキしながら読んだら、詩の交換ばかりしていて全然そんな
描写がないのでがっかりした、というような内容のエッセイを
書いていたが、私の場合、それにあたるのがF・J・ファーマーの
『恋人たち』で、アメリカSFではじめて大胆に性をテーマに
取り入れ、大論争をまきおこした問題作! とかいう謳い文句に、
そこは性欲ギラギラ盛りの高校生、わざわざ自室のドアに鍵が
かかっているのを確かめてから(笑)、ドキドキして読みはじめた
のだが全くエロでもなんでもなく、極めて思弁的な内容で、
とてもついていけんわ、と途中放棄してしまった記憶がある。
まあ、『恋人たち』については大学に入ってから再読し、
傑作であると認識を改めはしたのだが、それでもどうも、
苦手な作家の一人であり続けたのは、やはり初読時のあの印象が
強いためではなかったか。
それと、当時のアメリカのヒューゴー賞など長編SF賞の特徴
として、話のスケールがやたらでかく、話が長いものが
受賞しやすい、という傾向があり、それにあわせて、
階層宇宙シリーズとかリバーワールドシリーズとか、どれも
やたら長く、設定が複雑、主人公もどんどん入れ替わるもの
ばかりを乱発し、その発想の天馬空をゆく雄大、奇想ぶりに
舌を巻きはするものの、ラリー・ニーヴンほど世界構築が論理的
にしっかりしている人ではないので、私程度の頭では読んでいて
必ず途中でワケがわかんなくなり、放り出すハメになった。
いや、邦訳もシリーズ途中で中断されるものが多かったのは、
そう感じた人が多かったからではあるまいか?
何にせよ、大長編がバンバン書かれ、読まれ、売れていた70年代
から80年代にかけてのアメリカSF黄金時代に最もマッチした
作家だったと言えるだろう。日本での評価はどれくらいなのか。
熱烈なファンも多いようで、これを期に、この人の作品の魅力を
わかりやすく解説・分析してくれるならば、もう一回チャレンジ
してみたい作家ではある。
ご冥福をお祈りする。
昼はシャケ弁当。
雑用いろいろ片づけている間に、出る時間が来てしまう。
急いで新宿へ。途中で携帯にNHKから。
懸案の某件、ダメらしいと聞いていたが、その後二転三転、
OKになったとのこと。まずはめでたし。収録は5月だが。
雨は小雨になっていた。
『らんぶる』で村崎百郎さんと社会派くん対談。
案外早く、2時間しないで終る。
時間が半チクになったので、一旦家に戻り、
雑用続き。日記をアップしたり。
6時半、再度家を出て、下北沢440。
『東京中低域』バック・フロム・UKツアー。
いつもは麻衣夢ちゃんと一緒に聞きにいっているが、
今日は彼女が自分のライブなので、乾きょんを誘って。
会場、いつものことながら一杯の熱気。
実は去年の暮れに、域員の皆さんと大木屋にもんじゃを食べに
ツアー組んだとき、ちょっと気になる話をいろいろ聞いた。
「すでに中低域は解散していますので」
とまで言うメンバーもいて、ドギマギしてしまった。
アーティスト同士の間では、それは方向性や運営方針など
いろいろな食い違いは日常茶飯だが、こう急にとは、いったい
何が……と思い、つい変な酔い方をして水谷さんに二次会だか
三次会だかでからんでしまった。
今日のステージを見たら、二人ほど欠けているメンバーがいて
(お一人は自分の持っている別のバンドのライブで欠席だそうだが)
さてこそ、という感じで、ちょっとショックだった。
とはいえ、それが逆に他の域員たちには緊張度をよき加減で
与えていたのか、演奏もいい感じで(域における“いい感じ”とは、
“いい感じにグダグダ”というところも含まれる)、
田中さんの変なノリも楽しく、面白いステージになっていた。
乾ちゃんはさすがに反応いい。アドリブのギャグのところで
大拍手していた。
彼女は『バスキア』の公演のあたり、4年前くらいに域のコンサート
に行ったことがあるそうだが、
「あのときに比べるとメンバーも若くてイケメンな人が増えているし、
ずいぶんおしゃれになったなあ、という感じ」
だそうだ。
五関さん、暮の大木屋の肉のことがいまだに頭から離れないそうで
「あそこを超える肉を見つけることが今年の自分のテーマです!」
と。田中さんはあの写真を待ちうけにしているとか。
終って、ちょっと楽屋に顔を出して挨拶し、乾ちゃん連れて幡ヶ谷、
チャイナハウス。もう閉店まぎわだったので、軽く、ビールと
紹興酒で、いろんな話。最後の客になったが、マスターとちょっと
いろいろ、家庭とはとか夫婦とは、という話をしてしまう。
帰りに、高島屋店で販売予定の、ひなまつりのお菓子を
いただく。これがとてもカワイイ。
もう一軒、行けない時間ではなかったが、乾ちゃんも今日あまり
寝ていないというので、タクシーで中野坂上の大江戸線駅まで
送り、帰宅。演芸会の資料映像など見て、1時就寝。
(追記:水谷さんによると、抜けたメンバーも喧嘩別れではなく、
今後もゲストとして参加予定とのこと)
*チャイナのひな祭りのお菓子