裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

19日

木曜日

訃報っ! いい男

確かにダーリン先生はダンディだった!

※D社書き下ろし原稿完成 『黄昏モンスターズ』マチソワ 前田先生死去

朝6時覚醒、ベッドの中でぐだぐだ。
7時半に起きだし、パソコン起動させてD社原稿の
最後の一本を書く。
書きながらの発見もあり、やはりこういう仕事は
楽しい。

9時半朝食、ささーっとすませて、
再び原稿がりがり。予定(思惑)通り、無事11時過ぎ
完成。思わずふう、と息をつく。

担当Mさんにメール。その後急いで仕度して、家を出て
下北沢。今日のウィルソンにはやや、成算あり。
ざっとした抜き稽古(ドーンのシーン、とみんなが呼んでいる
ところ)やって、昼は温つけ麺。

席作りがあり、暗転チェックがあり、客入れが始まって、
という、緊張感の高まり。やがて最初の私の出、
とにかく声と顔で怒りを前面に出す。
ここでの出演時間、1分ほどで、ラストまでの日本妖怪たちの
どたばたに理由をつけねばならない。
かなりうまく行った、と自分でも思う。
あとで座長にも最高! と言ってもらい、現金に気分がよくなる。

最後の大暴れも気持よくやらせてもらう。
一ヶ所、麻衣夢を“小娘”と呼ぶところを“娘”とやってしまったが。
お客に、桐生祐狩さん、日高トモキチさん、オタク佐藤さんの姿あり。
さらに『吸血ゾンビと妖怪くノ一大戦争』で共演した高嶋ひとみこと
幸田尚子ちゃんも来てくれて、大変に面白がってくれた。
『あっ! この家にはトイレがない』で共演したテリー、岡っち
とも再開を喜んでいたようで、ひょっとしたら9月にも出てくれる
かも……。あと、日高さんは麻衣夢の歌も気に入ってくれたようで、
CDを購入していた。

ソワレまでの休息時間に、マネージャー役のための帽子を
物色、さすが下北沢で、笑えるような色のやつがすぐ見つかる。
小屋に帰り、乾ちゃん、希依子ちゃん、麻衣夢がやっていた
“女のムダ話”の話の中に入って、フェロモン談義など。

そんなバカな時間を楽しく過ごして、携帯を見たら、談笑さんから
メール入っていた。本日2時32分、ダーリン先生永眠。
天を仰ぐ。さまざまな思い出が頭の中を去来する。
最初の出会いは立川流がらみだった。
近しくなったのは快楽亭とのつきあいを通して。
『ブジオ!』に出ていただいたときは、おぐりゆかを大層気に入って、
彼女のミクシィ日記に、いろいろとコメントを寄せて
くださっていた(彼女に、それがどんなに凄いことかがわかり
吸収するだけの理解力がもしあったら、と思う。『ブジオ!』の
放送作家の稲原さんに言わせれば、コメディエンヌとして前田先生
に突っ込まれた、というのは一生の宝であったはず)。

そのうちアップしようと思うが、さだやん師匠と私が先生
の話を打ち上げで聞いて爆笑している写真(ぎじんさん撮影)
がある。談之助師匠が、とにかく隣先生の記憶は凄い、
早いうちに聞書きを、と言っていた。スタッフのデーブさんが
インタビューしてくださった録音があるが、あれだけでも
何とかまとめなくては。とにかく、生前に先生の本を
刊行できなかったのは痛恨の悔事である。
さらに、こちらがプロデュースした仕事がさまざまなトラブルで
流れて、お怒りをかったこともあった。
あのときは本当に申し訳なかったが、そのあとさっぱりと
許してくださったのは、さすが浅草芸人の気っ風のよさ、
だった。先生、改めてあのときは申し訳ありませんでした。

昨日お見舞いに行っていて本当によかった(さそってくれた
談笑さんに感謝、である)。
公演中で死に目に会うことがかなわなかったのが残念だが、
芸人中の芸人である前田隣先生、それはお許しくださるだろう。

あちこちにその件で連絡等して、明日、ご自宅に伺うこと決め、
気分を切り替えてソワレの準備。ところが、ソワレでウィルソンを
演じる親川が、会社の会議が長引いて、到着がかなり遅れそう、
という連絡がある。急遽、ウィルソンの準備も。

果たして間に合うのか間に合わないのか、ギリギリまでわからない
ので、気分の調整に時間がかかる。なにしろ、ウィルソンと
マネージャー役ではまるで役柄が真逆だ。

結局ウィルソンの衣装とメイクで待つことにする。
開演一分前くらいに結局やってきたが、ウィルソンはそのまま
私がやり、マネージャーを親川がやるということに。

ソワレはそんなドタバタがあったせいか、迫力はマチネに比べ
やや、劣ってしまった。しかし、最後の大暴れシーンは
今回の方がタイミングが合ったか。
とはいえ、マチソワでウィルソンは、実際にやってみると
疲れる!

常に声を張っていることに加え、5分以上、ポーズを
つけたまま突っ立っていなくてはならぬシーンがあり、ここで
筋肉が緊張しっぱなしで、これが翌日、かなり足にクる。

出が終って、親川のマネージャー役をちょっと見る。
しゃくれ親分(親川の持ちネタ)で出てきた。
麻衣夢いじり連発で、楽屋裏でみな、笑い声をこらえるのに必死。

ハネて挨拶。今日はNHKのYくん夫妻が来てくれていた。
夜の部なので、私の役が小さいときに来ちゃダメだよ、と文句を
言っていたのだが、ウィルソン役が見せられてよかった。
あと、書評委員の久田恵さんが自分の劇団(パンチ&ジュディの
人形劇団)の方と見えられた。3月の舞台に協力を仰ぐため、
である。

衣装を着替えるが、不思議なことに、初日のウィルソンを
終えたあとはシャツが汗でぐっしょりとなりあわててコンビニで
新しいのを買って着替えたが、今日はほとんど汗もかかず。
役が入り、“精神的に落ち着いたから”であろうか。
ハッシー、なべかつさんと三人(最初は豊田くんもいた)で
劇場の向かいにある静岡おでん屋で、ちょっと演出上の件、これからの件で
打ち合わせ。今日、麻衣夢のお母さん(心臓疾患で去年倒れたのが
命をとりとめ、今回ようやく『黄昏モンスターズ』を見ることが
出来た)が、見た感想で、“よかったけど泣くまでではなかった”
と述べ、最後の日本妖怪退場シーンが確かに去年に比べ
会場からの嗚咽が少ないのはどうしてか、どうしたらいいか、の
対策会議であった。私もなべさんも同意見で、去年はすっと
退場していたのが、今年は退場シーンでみんな芝居をしながら
引っ込んでおり、これが余計なのではないか、と結論。

それからバーキタザワでさらに。ダーリン先生のことを
ハッシーに話したりして、2時過ぎてしまう。
公演中はしゃあないか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa