裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

日曜日

オバマ盆きり盆きり

「盆から先ゃクリントン〜」(オバマ人気も8月までで失速し、その後は
実質的権限をクリントンが握る、という予言詩)。

※『黄昏モンスターズ』最終稽古

朝9時半起床。さすがに9時間以上寝たので、疲れはとれたが
相変わらず朝うつ、ああ、何にもしたくねえ、と
思いつつ朝食の前に郵便チェック。
某所からの手紙の一言で、急に元気が出る。
何のことはないお世辞の一行かもしれないが、現金なもの。

朝食はジュース、スープ、ミルクティーと固形物一切なし。
このおかげで午前中はトイレ頻繁になるが、体調維持には
いいのではないかと思っている。

日記つけ、雑用連絡すませ、入浴、母に握ってもらった
オムスビ二ヶ(梅干しと、ミソガツオ)噛って、
最終稽古へ。

今回の稽古場は四宮区民集会所。
上井草の方である。
荻窪からバスに乗っていったので迷わずに
行き着けたが、みんなかなり迷走していた模様。
杉並に詳しくなるわ。
もっとも、稽古場確保が大変、というのはどこの劇団も同じで、
新感線のような大きなところでも、役者さんの日記で
「今回も稽古場が遠い〜」
とボヤいているのを読んだことがある。

乾ちゃんからチョコを貰う。後で麻衣夢からも貰った。
乾ちゃんの、春らしい、桜味のチョコでおいしかったが、
しかし世の中に絶えてバレンタインのなかりせば、人の心は
のどけからまし、とも思う。

さて、ここ(ルナティック)には、ある伝統(?)のような
ものがある。芝居の稽古が進み、もう、あと一回か二回の
通し稽古で本番にいけるぞ、というところで、誰かから
(NCであることが多いが)、
「ここ、おかしくない?」
と、ダメ、それも芝居の根本のところに対するダメが入るので
ある。初めて参加したときには、
「こんなギリギリ間際で何を言い出すんだ」
と驚いたものだが、数回、これを経験しているうちに、
「あ、これがあるからみんな納得できて本番に臨めるのか」
とわかってきた。
そのダメは結局却下になることが多いが、しかし、じゃあどうすれば
その問題が解決できるか、そこで全員に緊張感と、解決法を必死に
考えるという一体感が生まれる。
どんな劇団も結局は座長(か、それに変わる誰か)の独裁が一般の
形式であり、そうでなければまた芝居などというものは作れるものでは
ないが、しかし、完全独裁下にあって第3者が何も口を出せない劇団は、
結局は外部からの建設的批評というものを取り入れられず、パターンが
マンネリ化して飽きられ(所詮は一人の発想などというものの
パターンは限られている)てしぼんでいく。

ルナも独裁的劇団ではあるが、そこにこういった排気システムを
持っていることが強みだなあ、と思うのである。
実際、私も脇で関わっているシーンであったが、ちょっとした変更で、
見事に動きやすくなった。

芝居が“見せて恥ずかしくない出来”になったあたりで、マイミクの
皆さんに直に突撃メール。お誘いを出す。
すぐに行きます、という返事くださる人もいて、感謝。
遅れてなべかつさん、夜に麻衣夢、親川も来て、シヴさん以外は
全員揃って通しもう一回。さて、これで初日を迎えるということに
なったが、何と親川が本業の方のトラブルで、初日、ウィルソンを
演じるのがちょっと無理かも、となった。じゃ、私が初日は
やりましょうということに。実は、ウィルソンがようやく体に
入ってきたところであり、マチネだけでは演じたりないなあ、と
思っていたところであった。これは神様のプレゼントか?

しかし、潮健児さんが昔、紀伊國屋ホールの『仁義なき戦い』の
舞台公演に出演していたとき、主役の広能を演じていた
曽根晴美が別の仕事で来られなくなり、じゃあ代役で潮ちゃん、
やってよとふられた話を聞いたことがある。代役とはいえ主役で、
大いに張り切っていたら、ぎりぎりで曽根さんが間に合って駆けつけた
そうで、そのとき思わず、
「お前なんか、死んじゃえ」
と口をついて出たそうな。私も、もし親川がトラブル回避で間に合えば
「死んじゃえ」
と言ってしまうかも。これはプロデューサーモードではなく、役者モード。

稽古9時に終わり、上井草でルナ行きつけという鍋料理屋に
ハッシー、私、麻衣夢、容子ちゃん、親川、琴ちゃん、S崎くん、
T田くんで行く。ハッシーお勧めの鍋屋(例のガンダム像のある
駅前からすぐ)のきりたんぽ鍋、なるほど旨い。
演芸論、大坂芸能史などいろいろ話題出るが、私のウィルソンを
ハッシーが
「まさか合格点まで行くとは思わなかった。はっきり言って
難しい役なので、最初は無理だと思ってWキャスにしたんだが」
と言われたので、今回の舞台、書き下ろしとかぶって大変だったが
出てよかった、自信になった、と思った。別に物書きが演技で自信
つけてもどうもならんのだが、しかし嬉しくはある。
乾きょんのこともハッシー絶賛。
退団が決まった役者というのはたいていよくなるが、何かが吹っ切れる
からだろうか?

鍋屋出て、ハッシーともう一軒、白木屋で酒だけ飲みつつ、
今後のことなどちょっと打ち合わせ。
12時にタクシーで帰宅。

*乾きょんからのチョコと、じゅんじゅんの稽古シーン。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa