裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

10日

火曜日

献本ダッシュ

「自分の新刊、読んでください!」と渡して、さっと逃げる。

※東京三世社原稿 カスミ書房さん打ち合わせ 犬鍋の会

9時起床。夢二本。
一本目は血縁者に悪態をつかれ、ムカッときて、周囲に暴力を
ふるってしまうという後味の悪いもの。
もう一本は対照的に楽しく、1950年代のレトロでキッチュな
怪奇漫画の、むちゃくちゃ豪華な装丁での復刻全集全巻が
引っ越しの作業で出てきて、バスの中(なぜかトラックでなく
バスを貸し切りにして書籍類を運んでいる)で手伝いの子に
自慢するというもの。

……ただ、今日の寝覚め時は、夢よりも、10年来の謎が解けた
ことの方が衝撃的。
以前の日記にも何度か、酒に酔って寝ると、起きたとき何故か前腕部が
痛い、と書いている筈である。ベロ酔いのあしたが一番痛む。
酔っぱらって、記憶にないけど突っ転んだりして、腕をついている
から(あるいは壁などに強く突いて体を支えるからか)と思って
いたが、で、あれば膝とか、他の部分も痛いはずだし、そんなに
何度も転べばアザなど残っているはずだがそれもない。
今朝、寝返りを打とうとして、ふと気がついた。
私は寝ている最中に、腕を組む癖があるのだ。
寝返りをうつときとかはその腕をほどくのだが、酔って寝ていると、
体が自然に動かず、腕をほどけずに組んだまま、不自然に
圧迫するような形で押し付けるようになってしまうことがあり、
血が通わなくなったりする。
それで、酔って寝た翌朝は、前腕部が痛むのであった。
なるほど! とひどく感動してしまった。

朝食、10時近く。
バナナジュース、アスパラガススープ。
無茶苦茶にいい天気である。
母の料理サイト立ち上げの準備のことなど話す。

昨日、快楽亭から電話あり、われわれがよく行く某ちゃんこ屋の
裏メニューのカレーが大変おいしいという話なので、
「何も言わずにアタシを信頼して」
今度カレーツアーを企画しよう、と言う。
詳細は今月末あたりに。

自室に戻り、日記ざっとつけてさて、原稿。
昨日ギリギリに送ったD社原稿に担当Mさんから、
よく読み込んでくれた褒め言葉が返ってきていて喜ぶが、
しかし今日は東京三世社のエロ原稿。
発端から本論に入るときのヒネリがうまくいったので
書いていて気分よし。
ひたすらぱちぱちと進めていく。

昼は弁当、鴨の焼肉と野菜炒め。
食べつつ資料確認して、さらにぱちぱち。
3時チョイ過ぎに完成して、編集AくんとK子にメール。
〆切一日遅れで申し訳ない、と思って確認したら、
〆切は金曜だった。あれれ。

ともあれ原稿完成したのがもう、出る時間ギリギリであった。
急いで神保町まで行き、オノと落ち合って打ち合わせ。
それからカスミ書房さんのところに行き、
買い取っていただいた本類のお礼。
ちょっといい話あって、オノがバンザイしていた。

バーバラとの打ち合わせが彼女の都合でNGになり、時間が半チク
になったので、さっきのバンザイの件も含め、
ランチョンで軽く乾杯。
事務所移転の件も含め、いろいろと話す。

6時、店を出て、都営線で新宿まで。
雑用いろいろ済ませて、7時に新宿区役所前。
Mさん、K先生、カトシューと待ち合わせ。
Mさんのずっと前からの大リクエストに従って、本日は
上海小吃で犬鍋を喰う会、なのである。

入ったとたん、黒板に書かれたおすすめメニューにMさん
大興奮。あれは何だろう、これは何かな、と興味津々の模様。
ここのメニューのひとつにサソリの唐揚げがあるが、
それがシジミの醤油漬けと並んで、
「さそり・しじみ」
と書いてある。“あさり・しじみ”というのはよくあるが、
“さそり・しじみ”というのはなかなかの傑作。

“青島ビール!”と注文したらオカアサン、いきなり
「アイヨ。ホンモノ? ニセモノ?」
とかましてきて、期待にたがわない店だなあ、と。
アサヒビールと提携している青島ビールがホンモノ、
ニセモノは香港からの輸入品だった。
まずは軽く酔蟹、干し豆腐あたりから始めるが、
Mさんが牛鞭(牛のペニス)を食べたい、というので、
醤油味とカレー味の二種類を注文。
コラーゲンのカタマリ、みたいな感じの食感であった。

それから、アヒルの血を固めたものの煮込み。
これは全く血の臭みがなく、大変に美味。
それから香肉の鍋が出て、みなみなその不思議な食感に感服
していた。
ここらあたりから客が続々と入ってきて、店員さんたち、
怒鳴りあって注文とる状態になる。
そんな中でもオカアサン、お客の話を聞き逃さず、割って入って
くるのが凄い。Mさんが繁盛ぶりに感心して、年商何億あるかな、と
つぶやいていた。

鍋の中には猪血を入れる。これはアヒルの血に比べると、
やや血っぽさが味に残り、こっちを好む人とかもいるかも。
さらにはオカアサンが“9時マデ待ッテイルト、殺シタテノ
豚ノ脳ミソ来ルヨー”というので楽しみに待っていると、
来ました、新鮮な脳ミソ。さすがに殺したてだけあって、
鍋で煮て食べると甘みあり、本日の絶品。

さらに鳩まで追加して食って、もう腹いっぱい。
フツーでない食い物はこの店ではいろいろ食べているが、
ここまで多種食ったのも珍しいのではないか。
他のテーブルのお客が、エビチリとか焼きそばとかチンジャオロースー
を注文しているのを見て、この店にもそんなメニューがあったのか、
と思うほど。

それに、やはり海外経験の長いMさんや博識極まるK先生とか
だけあって、会話内容が濃いこと濃いこと。
このメンバーで食事会を数回やって、それをテープ起しすれば
それだけで本が一冊できると思う。
ワリカンで支払い。朝日新聞がちょっと多めに出してくれたので
助かった。

家の遠いMさんと別れ、K先生、カトシューともう一軒、と
ワールドワイドへ。いろいろと人物月旦などしながら。
お店の常連さんにここでもテレビ見てます、と言われた。
12時半ころ、解散。
タクシーで帰宅し、メール連絡数通して寝る。

*くだんの(確かに牛だが妖怪じゃない)ペニス、食材ではなくオカアサンのペット、本日の参加者。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa