裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

19日

火曜日

クイズ・バクーニンに聞きました

「無政府主義者100人に聞きました。創造の前にしなきゃいけないことは?」
「破壊!」
「あるあるある!」

※『FLASH!』キャプション書き 電話インタビュー(後で取材申込み)

朝8時起床、メールチェックなどして、入浴。
9時15分、朝食。
いつものオレンジ、大粒イチゴひとつ。
ホワイトアスパラのスープ。

牛田あや美『ATG映画+新宿』読み継ぐ。
論文を仕立て直した書籍にありがちな悪文なのだが、
それが、60年代から70年代の新宿の混沌の中での
発展の状態を表現するのにむしろぴったりで、
盛り場・新宿成立史として読んでゾクゾクする魅力と迫力を
持ち得ている。悪文には読者をフックするパワーがあるのだ。
ビデオやDVDと異り、映画館時代の映画は、その上映された
場所との関係性が不可欠という視点には大いに膝を打つものあり。

日記つけ、『FLASH!』のキャプション原稿書きに入る。
これが数が多くて、書いても書いても終わらない。
間に小仕事がはさまったこともあるが、
書き上げたのは4時半。
予定を2時間半もオーバーした。

昼はパスタでも茹でて、と思ったらパスタが切れていた。
ではパックの飯でチキンピラフでも作って、と思ったら鶏肉が
切れていた。冷凍庫に鶏肉があったと思ったのだが銀ダラだった。
じゃ、と方針をさらに転換して、この銀ダラを、おとついの
鶏肉干しぶどう煮込みと同じようにしてタマネギ・ニンニクと
炒め、煮込んで、それをご飯にかけて食べる。
エスニックぽくてなかなか美味。

知りあい同士でちょっとトラブルあり。
要するに初老オトコが一方的に惚れてフラれて、その腹いせを
しているんだが、酸っぱいブドウ的な言辞で大いにオトコを
下げているのが何とも。
オトコの美学はやせ我慢だと、寅さん映画ファンならわかって
いそうなものなのに。
しかし、私もそろそろ初老という年齢に足を踏み込むが、
その年齢の男性のこういうトマドイ(心乱れること)は他人事ではない。
私も同じことをしかねない。
歳をとっても恋をするのはいいことである。
しかし、歳をとると“きれいな”恋をするのは難しい。
短編小説が一本、書けそうな気がしてきた。

事務所へ出る。
某雑誌が届いていた。
以前インタビューを受けた雑誌で、その特集。
最初パラパラめくって、あれ、ページを飛ばした、と思って
じっくりめくってみて、アレ、ともう一回思う。
で、目次を見てみたら、その、インタビューを受けた項目自体が
無かった。完全没らしい。他の人間のインタビューに差し変わって
いるということもないし、こういう特集なら絶対取り上げる筈の
人物なので、私のインタビュー内容が原因ではなかろう。
その項目の対象とのトラブルを避けるためと思われる。
他の項目にはかなりヤバいネタもあるので、
トラブルを恐れたというよりは、何か掲載自粛の要望でも
あったか、と思う。
たかだか電話でのインタビューであって、記事になろうがなるまいが
大した影響はないし、そう残念でもない(ちょっとは残念)。
しかし、そういうときは普通事前に電話の一本もあるのが
常識と思うのだがなあ。

ちょっとメゲていたら、埋め合わせみたいに別の雑誌から
電話取材。電話で、ということなので、向うの質問にあれこれ
答えていたら、では、改めまして取材と写真撮影を、と
言ってくる。それが女性向けのおしゃれ雑誌だったので、
オノが軽くパニクっていた。

『FLASH!』編集部から電話。てっきり送ったキャプション
のことかと思ったら、別口の件で、しかも同じ号のお仕事。
以前やった仕事の続編みたいな感じなので、要領のわかっている
私に発注せざるを得ないのだが、同じ号で同じ人物に別の特集の解説を
まかせるというのもちょっと、ということなので、こっちの方は
無記名原稿となる。

バスで新宿西口まで。
閉店間際の小田急ハルクで買い物。
帰宅して、仕事をちょっと、と思ったがクタビレて手につかず。
早々に酒に逃げる。
メヒカリの一夜干しを焼いたのと、アブラガニ(北海ガニという
方が聞こえがいいのでは?)の溶かしバタあえ、鉄火巻き。
ビールに蕎麦湯氷焼酎。

DVDで『プッシーキャッツ』(2001)見る。
ハンナ・バーベラのアニメ『ドラドラ小猫とチャカチャカ娘』の
実写版、というだけの理由で買ったDVDだったのだが、
いや、これが(期待しないで見ると)なかなかの拾い物。
アニメの実写化といっても、主要キャラの設定以外はほとんど
オリジナルである。

アニメの方は人気女性グループのプッシーキャッツが
ツアーで回る世界の各地でいろんな事件に巻き込まれるという
ものだが、この映画は全く違うし、そもそもドラドラ小猫
(原作ではセバスチャン)が出てこない。
かろうじて残っているのは、メンバーの一人であるメロディ(メル)
がボケキャラである、という設定くらいだ(日本語版アニメでは
増山江威子がキュートなボケをかましていた)。このメルが
シャワーを浴びているシーン、別に特別に変なことをさせている
わけではないのだが、多分映画におけるおバカ演技の最高峰なのでは
ないかと思える。

スターを夢見ながら売れないバンド活動をしている三人組の女の子たちが、
ひょんなことから大手レコード会社のスカウトの目にとまり
あれよあれよという間に全米トップの座につくが、その裏には
ある陰謀が隠されていて……というのが実写版のストーリィ。
愛とミステリー(陰謀論)と友情とが適度にミックスされたわかりやすい
ストーリィに、主演のレイチェル・リー・クック(当時22歳)の
凄まじいキュートさが加わって、見ていて非常に楽しい(クックとメル役の
タラ・リードの露出度の高い衣装も見物だが、あまりに露出シーンが
多いというのでアメリカではR指定になってしまった)。
悪役コンビを演じるパーカー・ポージーとアラン・カミングも
マンガチックな悪キャラを嬉々として演じていて、キュート以外の
ところでは主演を食っている。
何より、アイドル映画なのにアイドル業界を皮肉っている(と、いうより
アイドルに群がる若者たちを大資本に操られているバカとして描いている)、
そのぬけぬけとしたところが気に入った。

売れる前の貧乏な三人が一人前のラーメンを分けあって啜っている
シーンがあって、ちゃんと“RAAMEN”と発音しているのに驚いた。
以前ニューヨークで聞いたときはRAMENをレイメン、と発音して
いたのである。ラーメンという発音がもう英語化して定着してるって
ことか。ハシの使い方はぎこちないが、ちゃんとツルツルすすりこんでいた。
アメリカ人はものをすすりこめない、というトリビアはガセだったわけだな。

*写真はアニメ版と実写版のプッシーキャッツ、それとタラライス。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa