裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

土曜日

ジオング『魅せられて』

Wind is blowing from the Zion……

※SUPRE★GRAPPLER『ハリケーン嬢』観劇

朝、3時に目が覚めたときは全身が凝り固まっているような
状態で、うひゃあという感じだったが、それからまた寝入って、
6時半頃にまた目を覚ましたときはだいぶほぐれていた。

入浴し、日記つけ、またメールやりとりなどをして過ごす。
談之助から電話、落語会の打ち合せか何かで、八起に行っているらしい。
八起のお母さんが挨拶したがっている、と言って出す。
「神奈川新聞の座談会で店の名前を出してくれたお礼ー!」
とのことだった。ホンの数行だが、義理堅いこと。
残念ながら年内には行けなかった。
来年は年明けに行こう。

9時30分、朝食。
リンゴ4片、イチゴ3粒、ホワイトアスパラガススープ。
麻黄附子細辛湯3服、黄蓮解毒湯、小青竜湯各1服。
サプリの野菜錠、クロレラ錠等。
効いているのかな、とも思うが、この歳まで、大病もせず
寝込むなどということほとんどなく、生きてこられたのも
これらのクスリのおかげかも、とも思う。

自室で仕事続き。
バーバラに電話、ちょっと某企画の販促の件で調査を依頼しておく。
さらにしら〜にもメール。
昼は弁当、ウナギとゴボウの煮物、卵焼き、漬物。

2時、家を出て丸ノ内線で池袋まで。
原田明希子さんのお誘いで、彼女が(銀色金魚とは別に)所属して
いるSUPRE★GRAPPLERという劇団の公演『ハリケーン嬢』観劇。
芸術劇場に到着したあたりで急に腹が減ったので、五分前だったが
一階にある手作りおにぎり屋で大急ぎでおにぎりとお茶を買い、
一個、ロビーで噛る。

で、芝居開演。幕開きから10分ほどは目まぐるしいほど人物が
入れ替わり立ち替わり。ごくフツーの、小手指にある男女共学
高校の冬休み前日。文芸部の課題で休み中に短編小説を書かなければ
ならなくなった藤堂は、参考に、と思ってある携帯小説サイトの
作品を読み始める。それは、エメラルダス王国という架空の国に
竜巻に乗ってやってきた、キュートな女バウンティー・ハンターの
話だった。記憶を失ってはいたが、凄腕のガンマンで、危険が迫ると
竜巻を自在に呼べるという超能力まで持っている彼女はたちまち
王国の人気者になり、国王じきじきの命令で、東の国の悪い魔女を
倒すために旅に出る。従うのは“オズの魔法使い”のかかし、
きこり、ライオンを連想させる三人の部下、そして彼女に
バウンティー・ハンターの女王の座を奪われたライバルのハンター
も後を追う。そして、その旅の途中で、なぜか藤堂は、
自分もまた、その旅の一行に加わっていることに気がつく。
しかも、“犬”として。

ここで彼は、この話の登場人物が、映画『オズの魔法使い』と同じく、
実在する人物たちをモデルにしていることに気がつく。
それもどうも、小手指の、自分と同じ高校の周辺の人物たちを。
だとすると、唯一モデルに憶えのない、主人公・ハリケーン嬢
とはいったい誰なのか。彼女はなぜ、こんな小説を書き続けるのか。
現実社会に戻って彼女を探し始めた藤堂は、意外な事実に……。

という話。最初は、ああ、こういう劇団によくあるファンタジックな
歌と踊りとギャグのお芝居か、と思ってみているうちに、話が急速に
収束しだす。普通の舞台は話がエピソードを積み重ねることで
どんどん拡散していくのだが、まるでその逆回しを観ているようだった。
ラストは正直言って賛否両論別れるだろうが、少なくとも
最初のシーンと見事に連環していて、ストーリィとして感心した。

主役の嬢を演じる吉田仁美と、ライバル・ハンターの明希子ちゃん
はどちらもヘソ出しのセクシーな衣装。
しかし明希子ちゃんに限っては、冒頭と後半で見せる女子高生の
制服姿の方が衝撃(あはは)。
そして、途中で意外と言えば意外、なるほどと言えば納得の
ダルビッシュ役でもちょいと。
そうか、ダルビッシュのあの鼻筋と目を見るたびに、
だれかに似ていると思ったら↓。
http://homepage3.nifty.com/supgra/harada.html

吉田仁美はNHK『うたっておどろんぱ!』で主役を演じていた
子で、さすがに舞台での存在感あり。他にもこの舞台は、
役者として、一般人とはあきらかに“人種が異る”人たちが
いっぱい出ていた。舞台の楽しみは、芝居そのものよりもむしろ、
こういう人種を見る事にあるかもしれない、とすら思う。
いわば人間動物園である。江実なつこのコメディエンヌ・パワー、
村井みゆきの背の高さ(感動的)。
今回も見学者として大いに満足させてもらった。

終わって明希子ちゃんに挨拶(残念ながら衣装は着替えて出てきた)
して、後日の連絡を約して出る。池袋からJRで渋谷へ移動。
東急ハンズでまた掃除用具買い込む。
これも始めるとハマる。

仕事場の整理、のつもりだったがあまりのカオス的状態
(あと、買った掃除用具がツカエナイものだったこと)に精神的にメゲ、
本棚のひとつを片づけたにとどまる。
あとは大晦日、コミケの後だ。

8時、タクシーで幡ヶ谷チャイナハウス。
本店の方が凄まじい混雑(どうも夏目房之介氏一行であったらしい)、
2号店の方で植木不等式氏と待ち合わせて飲む。
例によっての植木氏のダジャレと博識超絶な会話に聞きほれて
いたら、カウンター席に座っていたおじさん(この店の常連さんらしい)
が、自分も加わりたくなったらしく、いろいろ口をはさんでくる。
YouTubeにハマっているようで、携帯にYouTubeの
映像をいくつも入れている。

さすがに植木氏の話の面白さがわかるくらいだから、個々の話題ネタは
彼も豊富(音楽業界人であるらしい)なのだが、オタク的人種の
これは困った特長というか、ネタとネタとの間に脈絡がない。
フってきたネタにこっちが反応するとそれで終わりで、しばらくの
沈黙のあと、唐突に次のネタを無理矢理見せてくる。ちょっと困った。

会話が面白い人間すなわちネタが豊富な人間、ではないのである
(もちろん重要な条件ではあるが)。本当に会話が面白い
人間というのは、どうでもいいような、話と話のジョイント部分に
何とも言えない味がある。いや、そちらの方があきらかに重要なのだ。
私や植木さんなども含めたと学会的人間というのも、どうしても
ネタ重視になりがちで、私など後で反省することしきりだったりするが
このおじさんはその典型であって、しかも、代金を支払ったあとまで
執拗に帰らない。よほど話に加わりたいらしい。
正直な話、困り果てた。名刺までくれた。植木さんは名刺交換して
いたが、私は用心して手渡さず。
途中でコミケ初日打ち上げを終えたしら〜さんがやってきたので
かなりホッとした。

夏目氏一行が帰ったあと、本店の方に移って、マスターとちょっと
会話。一乃谷から通販で買った鯨をマスターにプレゼント。
マスターがおごってくれた五粮液、最近はスピリッツを生で
やるのは控えていたのだが、ひさびさにクイッとやったら、
五臓六腑にキューッと染み渡ってきて、軽く悲鳴をあげた。
11時くらいによいお年を、と辞去。
外は雨だそうで、傘を貸していただく。
タクシー相乗りで。植木さんがかなり酔ってヤサグレてて面白い。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa