裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

月曜日

♪マッチョな男に、さぶがある〜

元ネタを知らない人のために。
http://jp.youtube.com/watch?v=jI4UmGVqihI
あ、でもいまは若いゲイたちは『さぶ』すら知らないか?

※NHK打ち合せ アスペクトコラム原稿

朝9時起き。朝食の電話で目覚めた。
それから風呂湧かして入って、朝食は45分。
ゆうべ、ベッドに入ったとき、足の内股がなぜかホカホカして
何とも言えない快感があった。
おかげで快眠だったのだろうか。
五十路も近づいてきて、肉体に現れる兆候と言えばあそこが痛い、
ここが動かぬといったマイナス面ばかりだと思いがちだが、
あの内股のホカホカ感はいままで味わったことのない感覚で、
しかも大変に気持ちがよかった。こういうこともあるか。
もっとも、快眠とはいえ夢は見た。
寝る前に見た『最後の誘惑』をチャート分類する、という夢。

朝食、リンゴと巨峰。コーンスープ。
自室に戻って日記つけ。
メイ牛山死去の報が昨日あった。
13日に亡くなっていたとのこと。96歳。
六本木の事務所時代、『ハリウッド化粧品』の、あの昭和そのものの
ロゴを見るのが好きだった。上京した母とアマンド前で
待ち合わせていたとき、母が
「50年前とおんなじ格好でメイ牛山が歩いていた」
と、ちょっと幻でも見たかのような顔で言っていたものだ。
“モウ牛山”という美容師が出てきたのは、あれは何という
マンガだったっけな(メイ羊山、だったか?)。

雑用いろいろ。
こないだK子の仕事場に、チェーンメールで神の手の雲、
という写真が届いていたと言ってきた(上掲)。
下手なCGであることは明白だが、
いくつかこれを紹介しているサイトでは
「光を抱く神の手」
とこれを表現し、チェーンメールはイヤだけど、見た人が
ハッピーになれそうなので……と友人知人に送りつけている
人がいた。

これ、悪趣味系サイトとして有名なGoatse.cxの画像を雲で
再現してみました、というものだということは(一部で)有名で……。
http://shibuken.seesaa.net/article/54314434.html
↑くわしくはここで調査されているが、良識的な人らしく、
本来の元ネタ画像は下品過ぎる、と提示していない。
隔靴掻痒が嫌いな人のために説明すると、要するに、
http://goatse.cz/
↑この画像(超下品グロなので女性とか気の弱い人、上流家庭出身の
人は絶対みないこと。どういう画像か、ウィキペディア英語版からの
機械翻訳を引用すると“裸の男ストレッチングを表示するには
彼の肛門を開くと等しい直径約幅を手には、彼の直腸の内側が
はっきり見える”というものである)のパロディを、雲間から
陽光が差している写真に手をつけくわえて作ったものなのですね。

人間の意識は不思議なもので、何も言われないと光を抱く神の手、
と見える画像が、いったんそう説明されると、もうアレ以外には
見えないのが笑える。こういうインチキ神秘写真は、以前にも
チェーンで広まった神の目など、いろいろあるが、これは、
元ネタが元ネタだけに、これに神の救いとか神聖性を見て、
チェーンメールを出したオカルトビリーバーたちに対する
痛烈な皮肉になっているところが面白い。

ゆうべ飯を作りながら見た『風林火山』、最近の大河ドラマでは
珍しい力作と思ったが、視聴率は低迷、中井貴一の『武田信玄』の
半分の視聴率だったらしい。中井信玄は女性ファンをおもんぱかってか
最後まで入道頭にならず(西田敏行の勘助もしかり)、見ていて
“こんなのは信玄じゃないやい”と思っていた(実際にはこっちの
信玄像の方が史実に近い、とされる)。

今回は市川亀治郎の信玄、内野聖陽の勘助、いずれも坊主になり、
ことに内野の、人気俳優とは思えぬ汚な作りのメイクが見事で、
これぞ本格時代劇、と思っていた(一方でGacktの謙信も
ぶっ飛んでいてアリ)のだが視聴率的には惨敗。
もはや時代劇らしい時代劇は作れない時代なのかなあ。

いろいろ雑仕事忙しく(雑仕事と言っても企画書を作ったりなんだり
案外重要)久しぶりにタクシーで渋谷へ。
NHKのYくんと待ち合わせて、パルコの上のレストランでランチ。
来春のBSの番組の打ち合せを行う。
いくつか出した案、いずれもいいですね、と好評。
プレ版としてYくんの作った番組のDVD録画を預かる。
母も見たがっていたのでちょうどいい。
雑談。時代を憂えるような話いろいろ。

Nくんが番組のスタッフに『Bの墓碑銘』を見せたら、彼が映画マニア
で、すっかりこれにハマって、周囲に進めまくっていた由。
脇役俳優で番組作れないかね、などと進言。
ランチはひつまぶし定食。
味はともかく、せっかく大きくとったガラス窓が、よくから拭きを
していないのか、濡れ雑巾で拭いた後が如実。いくら店をおしゃれ
な内装にしても、これでは台無し。

Yくんと別れて事務所に帰る道すがら、
「そうだ、チャーリーハウス閉店前飲み会の期日に、夜営業を
しているかどうか、確認しなくちゃ」
と思って歩いていると、なんとそこで、チャーリーハウスのおかみ
さん母子が歩いているのに出くわす。ちょっと驚いた表情に
なっていたかもしれない。魔法で現出したかの如くである。
挨拶して、当日、営業を確認。
場所的に言えばまあ、そう不思議でもないのかもしれないが、
意識的には驚愕の西手新九郎であった。

母親について帰札しているオノとメール連絡。
あやふやな依頼だった某テレビ番組はやはりNGに。
まあ、これはむしろ出ない方がよかったかもしれない。
その代わり、というわけではないが20日にTBSラジオ、
『ストリーム』から出演依頼。

20日には某ビデオ会社のパーティーもあり、かつこのあいだ
テレビ収録でご一緒した清水崇監督から新作の試写のお誘いもあり。
全部に顔を出すとなると、大忙しの一日となりそう。
まとまった原稿も書きたいのだがなあ。

今日がデッドの『アスペクト』PR誌コラム原稿、編集のK田くんに
“たぶん、これくらいに”と予告した時間ピッタリにアゲてメール。
もう少し早くアゲて自慢したかったのだが、物理的にキーパンチする
時間というのは早められず。

バーバラに同人誌原稿ゲラに目を通したもの、いちいち手を入れず
指示のみして返送。これでギリギリという〆切の仕事は年内終わりか。
あ、朝日新聞の年末原稿の書きたしもあった。
福澤さんの事務所からのお歳暮届く。ミネラルウォーターの
詰め合わせ。お返しは海産物かなあ。

肩がまた痛みはじめた(このあいだほどではない)ので、
タントンに行く。上半身の凝りだったが、揉んでくれた先生、
「下半身の疲れと張りがひどい」
という。そこからの凝りなのだろうか。
しかし、夏にひどかった足の攣りも最近はほとんどなく、
快眠快食、この年齢にしては体調は極めていい方ではないか、
と(総合的には)思う。

終わって出て、店の真ん前のバス停にちょうど来たバスに
あわてて飛び乗り、帰宅。
幡ヶ谷近辺で下りた若い女性客二人、この寒いのにすらりと
長い足をむき出しにしたスタイル。伊達の薄着というか、
色気を感じる先に“大変だなあ”と思ってしまうのはトシか?
サントクで白ミノと鴨肉の値引き品を買う。
ニュース見ながら飯作り。
鴨肉はネギと茹でて水炊き風。
白ミノは1時間ほどネギ、ショウガ、ニンニクと茹でて柔らかくし、
ニンニク味噌をつけて食べる。酒が進むこと。

DVDで『カンニバル! ザ・ミュージカル』。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000F7MQKK/karasawashyun-22
『サウスパーク』のトレイ・パーカー監督作品である。
(以下、ネタばれあり)
アメリカのフォークロア英雄であるコロラドの人肉食い、
アルフレッド・パッカーの物語をミュージカルにした、という
あたり、さすがはトレイ・パーカーという感じだが、
しかしそこまでで、実際のギャグやミュージカルシーンはちょっと
おそまつ。ミュージカル映画のパロディにしても、モンティ・パイソン
が『ミーニング・オブ・ライフ』でやった“Every Sperm Is Sacred”
などの凝り様の足もとにも及ばないが、これはまあ、予算が違うから
仕方ないか。
歌は『サウスパーク/無修正版』なみに素晴らしい。

インディアンが出てくるのだが、これが全員日本人。
案外正確な日本語を話し、かつ、目のところにメガネをかけている
ような模様を書き込んでいる。ラストには主人公助ける“いい”役
なのだが、しかし『サウスパーク』でも顕著だったが、トレイ・
パーカーって男は日本人蔑視ギャグが好きだなあ。

実際のパッカー事件というのは、以前『ラジオライフ』でも
取り上げたことがあるが、1873年11月、ゴールドラッシュ
に沸くコロラド州で、9名のメンバーを連れて登山に出かけ行方不明と
なった登山案内人のパッカーが、翌年の3月になって、一人で帰ってきた
という事件である。最初は、吹雪で凍傷になり、動けなくなった彼を
見捨てて他のメンバーはさっさと行ってしまった、と言っていた
パッカーは、その証言をあやしまれて保安官事務所に拘留される。
どこがあやしいかというと、食うや食わずで木の実や野草などを
食べて命をつないでいた、という証言のわりには、実に血色がよく、
大金を所持していたからである。

取り調べに対しパッカーは、パッカーと5人の客(4人は出発して
すぐ、パッカーが信用できない、と別ルートをとった)の間で、
食料を巡っての争いが起き、弱い者から殺されて食われていき、
最後に自分とベルという男だけが残り、すぐにベルが自分を襲ってきた
ために、やむなく反撃してベルを殺し、その肉を食べて生き延びた、
と白状した。

陪審員たちは、このパッカーの涙ながらの証言を信じかけた。
ところが、雪がとけて、現場の検証が始まり、残された死体を検分し
た結果、争ったどころか、遺体はみな、ほぼ同じ、後ろからの一撃で
殺されていることがわかった。最初から、パッカーが全員を食べる
つもりで殺していたのである。
映画はこのあたりを順序を逆にし、最初に食うために人を殺した、
と裁判で判決が出たパッカーが、最初の話を真実として女性記者
に牢内で打ち明ける、という構成になっている。

そして、死刑になる寸前に女性記者が知事の助命命令書を持って
駆けつけてハッピーエンドになるのだが(彼を陥れようとした悪党は、
インディアンの酋長が日本刀で首を切り落とす)、現実のパーカーは
処刑前に隙を見て脱走、9年間逃亡を続けた末に再逮捕されたが、
この間に、パッカーの人食い事件は有名になり、芝居や小説になり、
彼は“人気者になっていた”。

たまたま、殺された5人が全員民主党員であったことも話題になり、
共和党員たちは、パッカー事件をモデルに『民主党員を食った男』と
いう歌を作ってヒットさせた(ひどい話だ)。コロラド州が伝統的な
共和党指示の土地柄であったこともあり、彼は死刑を免れて恩赦で
出獄、マスコミの寵児として晩年を過ごしたという。
ここらへん、日本の佐川一政氏とも類似点がある。

実際には、彼らが閉じこめられた山小屋には、鹿肉のたくわえとかが
たっぷりあった。しかし、パッカーはそれには見向きもしないで、
ひたすら人肉だけを食べ続けていた。どうも、あれは癖になる味を
しているらしい。ちなみに、現地コロラド大学は、“郷土の有名人”
パッカーを記念して、その名前を施設に残している。この大学の食堂は、
“アルフレッド・G・パッカー記念グリル”と名付けられているのである。
ちなみに、キャッチコピーは『Have a friend for lunch!』だそうだ。

モツを食いながら人食いのDVDを見て、ホッピー四ハイ。
1時過ぎに就寝。しかし今日はハナの話題も見たDVDも、
ついでにタイトルも一般読者にはヘビーだったかも。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa