裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

日曜日

私のリア・ディゾンでは決められないので

この写真集を公費で買うかどうかは一応会議にかけてから……。

※銀座小劇場『いとしきキヲク』

朝9時起き。このところ連続で9時半の朝食。食べて、日記付けたりするとすぐ午後である。かといって、夜に創造的なことをしているかというとそうでもない。昔は早起きは何の苦痛でもなかったのに、困ったものである。

で、風呂に湯を入れている間にまたYouTubeとかやっちゃうわけですねえ。
http://www.youtube.com/watch?v=JJZisBg3OwA
↑こないだのテレ朝の古館発言、もうアップ。と、いうことで動物虐待シリーズ。

http://www.youtube.com/watch?v=OGf15nz8Qpo&mode=related&search=
↑思い出横丁『朝起』海外に紹介。“ポピュラーフード”じゃねえって。まあ、日本じゃこの程度。

http://www.youtube.com/watch?v=92lUbPvkBe4
↑これはCM……じゃないか。何だろ? 別の所でも取り上げられていたけど(ちょいグロ)。

9時半、朝食。アボカドと青豆のスープ。かなり濃厚な感じ。原稿書き、続く。マイミクさん(現役業界人)のところで、炎上状態になりつつある著作権保護法の非申告化でパロディ同人誌が作れなくなる、という言い募りに対し、
「現実的な運用を考えたらどう考えても(ネットでの騒ぎは)過剰反応」
という冷静な反応があってホッとする。無責任な言辞で焚きつける人もいて、そのうちひとこと言わなくてはいけないか、と思っていたのだが、いや、オタク業界も大人が増えてきた。

彼(マイミク氏)が言う通り、、こういう法案が上がってきたことの根本には、同人誌即売会という一過性のものであったから黙認されてきた二次創作パロディ誌が、今や堂々と書店売りされるまでになり、さすがに出版社サイドも看過できなくなった、という現状がある。そのマイミク日記は
「それを踏まえないと、今回の著作権法に関する議論は、単にエロ同人誌が読みたいおたくのワガママで終わってしまう」
とまとめているが、全く同感である。表現の自由、というのは好き勝手をやっていい、ということとイコールではない。周囲の状況や反応をかんがみつつ、どう自由な表現の場を作り、残していくか、を現実的に考えるべき問題なのだ。

昼は弁当(サバの味噌煮)。今日、急用で札幌に立つオノから、BSフジ『竹中直人PS45』に出演依頼、とのメール。ひょっとして『虎の子』つながりか? と思う。竹中直人さんに対して、私はある時期、あることから非常な対抗心(もちろん、一方的な)を抱いていたことがある。どう考えても現在の日本の映像・舞台業界の異才である
この人のことを、それが原因で理性的に見ることが出来なくなっていた。この依頼で、それが精算されたら素晴らしい。

だらだらしてしまい、ふと気がつくと5時。あわてて家を出て、丸ノ内線で銀座。銀座小劇場にて劇団トツゲキ倶楽部公演『いとしきキヲク』を見る。四ステージ全席満席、ソールドアウトという評判の舞台だが行くよーと答えていて、公演の日取りをカン違いしてしまっており、昨日、気づいてあわてて非常用の席をとってもらったという次第だった。花も贈れず申し訳ない。客席にははれつ、マド、渡辺一哉さん、大友理恵さん、開田夫妻などの姿が。

『アストロ劇団』で共演した横森文さんの作・演出。出演者12人(うちWキャスト一人)中、『あぁルナ』座員が7名、しかも他の2名は元座員、残りも全てあぁルナ公演出演経験アリという不思議な舞台。

売れっ子モデルを抱える芸能事務所を舞台にし、かつては自分も芸人を目指していた女性マネージャー(おかおゆき)を主役に、彼女の幼なじみの新人マネージャー(久保広宣)、主人公の元・漫才の相方でいまはやり手(だがちょっと腹黒い)プロダクションの女社長(横森文)、苦労人だが売れっ子になってわがままいっぱいになったスーパーモデル(乾恭子)、同じ事務所所属で才能はあるが売れないシンガーソングライター(樋口かずえ)、オカマの構成作家(市森正洋)、その彼と以前、ゲイ漫才をやっていたオカマバーのママ(坂本ちゃん)、その店に勤めながら芸人を目指す主人公の従兄弟(伊藤誠吾)、なぜか喫茶室ルノワールに対しオタク的知識を有する会計士(萩原幹大)、売れっ子モデルを自社専属にしたいとたくらむ大手雑誌編集者(助川玲)、そして、なぜかプロダクション社内に出現する幽霊(大村琴重)。

こういった登場人物たちを、横森作品は手際よく出し入れして話を進めていく。ギャグは随所にまかれていて笑いが絶えないが、しかし話が進んでいくに連れて、主人公はじめ、他のキャラクターたちが抱いている、どうしても捨てきれない過去の記憶の正体があきらかになっていく。

ストーリィも非常によくまとまっていて、最後の温かい涙に収斂していくし、その泣きのシーンが自然で嫌味がない。途中でいきなりSF用語(マインドダイバー)という単語が出てくるのにはちょっと違和感あり、そんな用語を持ち出さなくても説明は可能だと思うし、伏線をもう少し工夫すればもっと最後の場面で観客が納得するのではないか、とか、その後の説明がなくて気になるキャラが何人かいるなあ、とか、気になるポイントも多々もあるのだが、それは元の芝居が大変いいものだったから、であろう。

役者ではやはり久保広宣が、多少のブランクを感じさせはしたものの、絶妙のアドリブと存在感で圧倒的。主役のおかおゆきは地味なキャラと見せておいて、最後に全てのことのキーパーソンとなるあたりを見事に演じている。乾ちゃんは本当の売れっ子モデルに、樋口ちゃんは本当のシンガーソングライターに見えるハマリ役。特に乾ちゃんは全編通じての香川(生まれ故郷)言葉でユニーク。坂本ちゃんは当然のことながら、元コンビを演じた市森正洋のオカマ演技のイタについていること。その他大村、伊藤、萩原といったあぁルナの面々は安心して見ていられる(久保とWキャスだった岡っちの演技が見られなかったのは残念だったが、観たラジオライフのTくんによると素晴らしかったそうだ)。

今回驚いたのは、某大手出版社の策謀家の編集者を演じた助川くん。これまであぁルナでふられていた役とは全く違うタイプであり、あぁルナの中だけでは絶対ふられない役柄だったろう。クールで嫌味で、自社の利益のためには手段を選ばず、他人のプライバシーにも平気で踏み込む悪人でありながら、あくまで外見はやり手業界人。黒ブチメガネで顔の上半分を隠したのがよかったか、口元の笑いだけで卑劣さを出して、存在感がこれまでの助くんとはダンチ、だった。役者というのはこれだから油断できないし、また、外で客演するということが(たとえほぼあぁルナと同じメンツだったにせよ)いかに必要か、ということだろう。

そう言えば乾ちゃん、念願の歌謡シーンも。いや、演出上ちょっとだけ……だったけど。それにしても彼女も以前の彼女とはやや、違った印象を受けたのは、こないだネイキッドで大ウケをとったせいか。

ハネて出て、みんなに挨拶。打ち上げは渋谷で10時半ころから(バラシのある関係上)というので、一旦仕事場に帰る(青山でカレーうどん)。事務所でネットつないで、ちょっとヘコむことあり。また、オノはなんと全日空のコンピュータートラブル騒ぎで乗るはずだった飛行機が欠便、札幌行きがNGになってしまったとのこと。眠くなったので、床で抱き枕当ててしばらく仮眠。

10時半、事務所を出て、公演通り『海峡』。YAGIくん、開田さん夫妻、おかおさん、坂本ちゃんそれにゲイバー考証(?)やってた二丁目の人などと最初の乾杯。二村ヒトシ監督の話など。『不思議の国のゲイたち』の話をしたら坂本ちゃんが開田さんに露骨にスリよってきた。

やがて、メンバーが三々五々。乾ちゃんがごきげんで歌を歌ったり、突如感極まって泣き出したり、例によって。いろいろと席を移って雑談。菊田貴公ちゃん、NC赤英と超真面目な恋愛論など。なかなか横森さんたち本体が到着せず、着いたのは一時すぎ。ワイワイのうちに私たちは辞去、開田夫妻とタクシー相乗りで帰る。3時半就寝、最近の午前様の中でもかなりの部類。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa