裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

木曜日

ALLGAYS 二丁目の夕陽

いい時代だっていうけど、あの頃はホモって病気とか社会不適格者って呼ばれてたのよねえ。(“ALLGAYS”はマイミクさんのネタ)

※ミリオン出版原作原稿 ミリオン出版打ち合せ

朝8時半起床。さすがにちょっと二日酔いで寝汗多々。
濛から本降りに移行していく空模様。入浴して、メールチェック。9時朝食。

朝日新聞担当K氏に、原稿(取り上げる書籍のこと)で相談メール。日記つけ、雑用連絡いろいろ。オノに、本日から新宿ゴールデン街劇場で公演の清水ひとみさん『大女優宣言・勝栄版』に花を贈るよう指示。ショ〜ゴさんにも、連名で。贈る相手を連名でというのは非常識かもしれないが、なにしろ狭いところに花が重なっても扱いに困るだけだろう。

ミリオン出版の次回刊行本の原作、一本書く。弁当を食い噛りながら。2時、渋谷時間割。書いてプリントアウトしたものを持って。Yくんと。

Yくん、『オタク論』の増刷ペースの早さに驚いていた。『創』は小さい出版社だけに、増刷結論が早いのだろう。普通の出版社はたいてい、営業の方がブツブツ文句を言って遅らせる。今朝も『創』Kさんから連絡あったが、大量注文がきたそうで、動きがハンパでない、ということだった。ネットでの評判のせいもあるか。

とはいえ、『三丁目の猟奇』も評判はよし。統計を見ると、20代後半から40代までの女性が、これまでの類似の猟奇本に比べ多く買ってくれている。猟奇本は読みたいが怖いのが多くて、その点、唐沢&ソルボンヌのなら……という気持ちで買ってくれるのでは。

今後のスケジュール打ち合せして、別れる。雨はほとんどやんで、まぶしい日光。清水さんとショ〜ゴさんから花のお礼の電話。なんと律義な。初日に晴れたのはめでたし。

朝日KさんからFAX、次回掲載原稿、さらに字句の付け合わせ。OKのメール。どうも、ミクシィメールに不具合が起きているらしく、果たして届いているのやらなんやら、不安になってしまう。

はな寛太さん死去の報(61歳だったのか、と驚いた。子供の頃から聞いていて、もう70はとっくに超えていると思っていた)に続き、藤原伊織さん死去の報。こちらも59歳と何と若い。『テロリストのパラソル』に影響され、私の作るホットドッグは必ずキャベツのカレー炒めを入れる。これからもこのホットドッグを作るたびに『テロリストのパラソル』を思い出すだろう。

5時半、久しぶりにタントン。肩凝りから来る緊張性頭痛に悩まされていたが、頭と顔面をマッサージしてくれて、少しほぐれる。
「頭がむくんでました」
と言われる。むくむものなのか。

東急本店紀ノ国屋に行って買い物、さすがに疲労堆積なので早めに帰宅。イカの中華風炒めと、小ハマグリの酒蒸しで軽く(黒ビール一缶とワイン半瓶)飲む。小ハマグリ、安かったので二皿買ってしまったのでもう、凄い量をむさぼり食うことになった。

DVDで『ゴッドandモンスター』見る。かの『フランケンシュタイン』を撮った大物監督ジェイムズ・ホエールの死を描いた、文芸色の強い作品だが、ゲイであったホエールをゲイをカミングアウトしている名優、サー・イアン・マッケランが好演。もっとも、演技する必要がないくらい、マッケランそのものの役であり、ホエールという登場人物の話なのかマッケラン本人の話なのか、見えなくなっているところが欠点かも知れない。
http://www.c-pro.org/homohomo.htm
↑このサイトによると(田村信って、あの田村信か? と思っていたら本人だそうである)、この映画は“ホモの原作をホモがプロデュースし、ホモが脚本・監督を務め、ホモの俳優を使って”ホモの映画を作って、“見事にアカデミー賞をかっさらった”作品、ということになる。
そう言えば田亀源五郎氏のブログ↓でも絶賛されている映画だった。
http://tagame.blogzine.jp/tagameblog/2005/06/anddvd_c7d1.html

冒頭、マニアックなオタクがホエールのもとに来て、インタビューする。フランケンシュタイン映画の監督に会えたというので興奮気味で、映画の台詞などを諳んじてみせる(ホエールは白け気味)、そしてホエールがが生い立ちのこととかを話しはじめると、
「怪奇映画の話はまだですか」
などと催促する。あ痛々々々々々々。
学生の頃の自分もこうでありました。オタクは往々にして、相手の人生のうち、自分に興味のある部分以外は“なくていい”と思いがちだ。そこに至るまでの過程にもきちんと興味を持つことが、いい話を引き出すコツなのだ、ということは潮健児さんや湯浅憲明監督のインタビューでしっかりと学んだことだった。

映画後半で、その彼が監督のもとに連れてくる、監督にとっては過去の亡霊のような存在であるボリス・カーロフとエルザ・ランチェスター(ジャック・ベッツとロザリンド・アイレス)がメイクの巧さもあるのだろうがホンモノか、と驚くほどソックリ。じゃ、劇中に登場するモンスターはこのジャック・ベッツがカーロフのメイクをした上にさらにモンスターのメイクをして撮っているのか、と思ったらそうではなく、エジプト人俳優のAmir Aboulelaという人が演じていた。女モンスターの方はロザリンド・アイレスが本当に演じているようだ。

ホエールが過去の戦争の悲惨な記憶(恋人を失う)のフラッシュバックに悩むシーンと、ラストでの夢の中での再会は、普通の演出だとちょっとあざといのだが、それを脳卒中の後遺症で次第に正常な思考能力が失われていく状態の現れとしているのはうまい。皮肉にも、その病が、彼を望んでいた恋人に再会させ、彼にその一生を“素晴らしい人生だった”と結ばせる。ブレンダン・フレイザーはあまり好きな俳優ではないのだが、彼の武骨な肉体とイノセンスな顔つき(髪型も)が今回の役にはピッタリ。ラストシーンには泣けてきた。

ちなみに、私がホエールをホモだと知ったのはケネス・アンガーの『ハリウッド・バビロン』によって、だったが、柳下毅一郎氏のブログによると、アンガーはマッチョ嫌いで、ホエールの趣味はあんなのじゃない、とい言い、この映画の描写をケシカランと憤っていたそうだ。アンガーもゲイだが、ゲイは自分の好みにウルサイのである。

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