23日
水曜日
偽善者操業
いや、善人ぶった顔で商売続けるのも大変ですわ。
※『オタク清談』原稿チェック 朝日新聞社書評委員会
朝7時ころ目が覚めて、8時半までベッド読書。
起きてミクシィニュースを見てたら、政治ニュースのコメントで
「安倍政権が憲法改正や集団防衛構想、日米同盟の強化などを志向している状況を憂慮し、丁度同じような方向を志向した岸内閣が混乱のうちに退陣し、内政と経済重視の方向に向かい 日本の輝かしい発展の基礎を築いた池田政権に代わったように、政権の交代を期待したいと思います」
と言っている人を見つけた。ううむ。どこから突っ込んでいいか。
9時朝食、スイカと豆スープ。
新劇女優鈴木光枝氏死去、88歳。20代からお婆さんを持ち役にしていただけあって、その老人役には定評があったが、いじわる婆さんの多い菅井きん、“妖婆”を演じられた原泉、気品ある原ひさ子などに比べると、ちょっと陰性なところがあって、そこが見るたび気になった。NHKの『宮本武蔵』(大河でない、役所広司版)でお杉婆
を演じていたが、さすが巧い、とうならされはしたもののあの、“とにかく、ひたすら執念深く武蔵を追いかける怪婆さん”であるお杉婆のインパクト以上に、恨みの念が前に出てきていて、リアルではあったが痛快さに書ける点がちょっと惜しかった。と、すると、私の中でのベスト演技は『ひょっこりひょうたん島』のドコンジョ婆さんか。ルパン三世のアニメにもこの名をとったキャラが出てきたほどの名キャラで、行方不明の息子を探して世界を旅しているパワフルな老母を鈴木光枝はパワフルな声で演じていた。しかし、やっとめぐりあえたと思ったら、その息子が二人も出てきて……。鈴木光枝の歌声という貴重なものが世に残ったのは『ひょっこりひょうたん島』のおかげ。ラストは泣けたなあ。
『オタク清談』のテープ起こしチェック、しているうちに昼飯を食いそびれる。3時、家を出て、丸ノ内線に乗り込んだらとたんに人身事故のアナウンスがあって、ずっとストップ。新携帯での機能のチェックなどしているうちに動くかと思ってしばらく待ったが、いっかな動かぬ。諦めて、新宿までタクシー。『C&C』でカツカレー食ったが、腹にもたれること。
事務所に出て、いろいろ連絡事項。某社から、送った原稿のナオシがFAXで。ある程度の読者へのインパクトで断定口調にしたところがほぼ全て、正確を期した文体になって返ってきた。なんとなく、マヌケの書いた文に見えるのだが、まあ、媒体が媒体だけに仕方ないのだろうなあ。香具師の口上、が私における文章の手本なのだが。
6時15分、築地の朝日新聞本社。移動の車中、光文社新書『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』を途中まで読む。築地はさすがに湿気強く、潮の香りがかすかに漂う。もうちょっと暑くなるとドブのような匂いになるのだが。書評用書籍選考、どんどん未読のものがたまるのであまり選ばないようにしようとは思うが、面白そうな内容のものが多く、つい、10冊近く選んでしまう。もっとも希望者ダブりも多く、落札は5冊。
午後ずっと、胃に疲労からくる(のであろう)不快感あり。弁当もほとんど手をつけずに残す。とはいえ、何か胃に入れないといかんので、担当K氏を例によって誘い、チャイナハウスへ。ちょうどあいさんのコンサートの日だった。ジャズを聞きながらチャイナの料理を口にしているうちに胃の不快は全快。やはりここの料理は卓効あり。腸詰めとアスパラの炒めもの、スッポン、黄ニラ、それと、藤の花のてんぷら、サツマイモの葉と貝柱の炒めものという季節の料理が。藤の花はあっさりとして風味あり、サツマイモの葉はねっとりとして、意外に上品。
藤の花のてんぷらとか、芋の葉の炒めものとか、まるで戦時中の食料難のときの食べ物みたいであるが、もともと、食料難であるからこそ、人間はその食の範囲を広げられるのでは、という話をKさんとする。中華料理が食材の範囲が非常に広く、またそれを中華包丁一本、中華鍋ひとつで大体作ってしまうのも、昔の中国が貧乏だったからだ、という説を聞いたことがある。食べられるものなら何でも口にしなければ、生き延びていけなかったのである。アメリカ人の、肉一辺倒な食事は、近代以後、肉に不自由したことのない証拠だろう。同じアメリカでも貧しいルイジアナ移民たちが自給自足で作っていたケイジャン料理はまことに素材のバラエティに富む。アメリカでは、食の素材のバラエティは貧しさと田舎者の象徴なのかもしれない。そう言えば『じゃじゃ馬億万長者』のグラニー婆さんも、しょっちゅうモグラのシチューや木の根っこのスープを作っていたなあ。ただし、クランペット家の資産は77億ドル、あのバットマンのブルース・ウェイン(68億ドル)以上なのだそうだが↓
http://www.planetcomics.jp/index.php?itemid=682
あと、戦前の日本軍における軍刀の所持本数はどれくらいで、どこから調達していたのか、とか、目のキラキラした人たちのこととか、某原稿のこととか。いろいろ工夫した皮肉というのも、読み取れない連中が相手ではなあ、と思う。胃の調子が回復したとはいえ、ここずっと外での飲みが続いていたので、今日は白酒類は飲まず、またリーメンなどは食べず。南條竹則さん一行がいらしたのに挨拶して、先に辞去。南條さんが岩波文庫で訳したアーネスト・ダウスン作品集、文体の古風なところが涙が出るほどうれしいが、
「いや、昨今こんな古くさい文章で訳せる人はいない!」
と言って、ちょっとイヤな顔されたかも。褒め言葉なのだが。
帰宅、ノドが渇いたのでホッピー飲みつつネットなど見る。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm206209
↑こないだのロフトの折、YouTubeでみつからなかった『ザ・モンスター』(『コンドールマン』ED)、ニコニコ動画の方にあった模様。川内康範先生の目には森進一はこう映っているに違いない。