裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

木曜日

斜視編纂室

いや、左遷されちゃってさあ、毎日、テリー伊藤の目がガッチャになってから治るまでの記録をまとめるなんて仕事させられてんだよ。

※ミリオン出版原作原稿 幻冬舎新書新刊見本刷り出来

朝7時起床、すぐパソコンの前に座ってYouTubeにつなぎ、画像をいろいろ検索。中毒みたいなもの。
9時に朝食(ピンクグレープフルーツ)、すぐ部屋に戻り続き。そんなに好きか。

カナダ在住のファンの方(いつもメールをやりとりしている)も、やはりYouTube中毒らしく、いろいろ見つけた画像の教えあいなど。
彼女はサントリーCM画像を収集しているらしく、
http://www.youtube.com/watch?v=PG2VD8JwCwc
↑ランボオ編や、
http://www.youtube.com/watch?v=UajEbo5_cRQ
↑ガウディ編などがお気に入り。私もランボオ編に使われていた曲(剣と女王)の入ったマーク・ゴールデンバーグ『鞄を持った男』のレコードを買ったくらいであった。調べてみると放映は1982年か。かなり屈託していた時期だったな、私は。

それから宝酒造が焼酎ブームでTAKARAに名称変更してやたら豪華なCMを作っていたことがあった。1986年のこと。
↓ボーイ・ジョージとか
http://www.youtube.com/watch?v=4G2UGFc4ryc
↓シーナ・イーストンとか使って。
http://www.youtube.com/watch?v=3a4m9Hilov8
このあたりって、まだ外タレに対するあこがれがあって、それが日本のこういうCM、しかも焼酎のに出演するのを見て、
「ああ、日本も偉くなったものだなあ」
と感慨にふけったりしていた。これは私の世代特有の思いかもしれない。ボーイ・ジョージはこの西遊記シリーズ途中でドラッグ所持で逮捕され、三蔵法師抜きの孫悟空たち三人が所在なげにバーで飲んでいる、なんてバージョンも放映された。あれはまだ見つけていない。

『立川談志 夢の寄席』で、春風亭柳好の『穴どろ』という珍品(生前最後の高座)のテープを聞いた談志が
「探しゃアあるもンだねえ……ピラミッドの中とか、探してみたら柳好の『クレオパトラ』とか、出てくるンじゃないかねエ」
と感嘆していたが、YouTubeはまさにそんな感じなのである。

いろいろと、嬉しいこともあり悩ましいこともあり。心千々に、という感じ。季節がそういう季節なのだろう。昼は焼きそば、温めわすれたがそれでもうまくて、あふあふと食べる。

3時半、事務所出。乗ったタクシーの運転手さんが、前は返還直後の小笠原の土地開発をやっていた人だそうで、いろいろと当時の話を聞く。今や父島母島合わせて5つのダムが出来るまで開発が進んだそうで、電気も水道もない中で測量をしていた往時を思うと感慨無量だとか。タクシー運転手の話というのもYouTubeみたいなもので、何が出てくるか、わからないところが面白い。
ちなみに、この会話中、小笠原の返還は何年のことだったか、という件につき、携帯からググって、1968年と確認。携帯グーグルの最初の活用であった。

事務所で仕事、ミリオン出版次の書き下ろし本の原作。しかし、例の会津の母親殺し少年の家から出てきたという“過去の殺人事件を集録したノンフィクションの本”というのが『三丁目の猟奇』だったりしたら、やはり出版は差し止めになるのだろうか。それとも、ここぞとばかり増刷をかけるだろうか。

電話いろいろ。某誌の担当さん、退職するとのこと。どこの会社に移るのか訊いたら、アニメ会社の広報らしい。4時半、幻冬舎トテカワのYさん。新著見本刷り、持ってきてくれる。編集部内の評判も上々の由。マニアには悪評被る本だろうが、マニア向けばかり書いていては商売にならんのである。

それから7時半まで、いろいろ雑用。家を出て、東急本店でちょっと買い物(結局買わず)。店を出ようとしたところで“カラサワさん!”と声をかけられるいつぞや丸ノ内線の中で“カラサワさんですか”と声をかけてきた人。特徴ある声なのですぐわかった。今なにやっているの、と聞くと、なんと、今度の参院選に出る、某建築家氏の秘書をやっているという。いろいろと彼のことはネタにしているので奇遇。政党の名刺渡されて、マジな顔で
「うち、比例代表制の候補が足りなくて。出てくれませんかね」
と誘われるので苦笑しながら退散。

家に帰り、『ヴェリー・ベスト・オブ・ジョン・バリー』聞きながら料理の準備。月曜に注文したものが、もう木曜には手元に届いて聞くことが出来る。昔は書籍など、注文は一ヶ月くらい待たされた揚げ句に“版元在庫切れ”とか言って突っ返されることがほとんどで(新刊でない場合)、しかも前金であった。私はレトロ主義者であるが、もし、昭和40年代に帰してやると言われていま、帰ったら、その不便さに悶死するのではあるまいか。

料理はイカの蝦油(ハーユ)炒め。蝦油がないので自家製にする。サラダオイルにショウガとニンニク、干し桜エビを入れて熱して、エビの香を油に移し、その油とショウガ、ニンニク、酒をイカの切り身(サントクで買ったスルメイカのぶつ切り)にまぶしてしばらく置き、強火で一気に炒めあげる。ショウガ、ニンニクを買いわすれたのでチューブのもので。代用品ばかりだったがちゃんと食える。

それと、やはりサントクで、ステーキ用肉の賞味期限間近のが半額だったので買って、賽の目に切って塩胡椒して焼いて、バタライスに混ぜ、自家製ペッパーランチ。あとは生マッシュルームの薄切りサラダ。

ニュース番組ザッピングしながら。光市母子殺害、事件が起きたときに、この残された夫(本村洋さん)の奇妙なスタイリッシュぶり、弁舌の立ちぶりが裏モノ会議室で話題になったものだった。確かに彼のおかれた境遇の悲惨さは理解するに余りあるし、同情するが、しかし、家族が被害者だからその言い分が通らないのはおかしい、というなら、こういう事件は理も非もなく全て死刑で確定してしまう。法治国家の人間として、茶の間の感情にああいう形で訴えるのはいかがなものか、というのが当時の『裏モノ会議室』議長としての私の意見だった。

ところが、それ以降のこの裁判の推移を見るに、そのキャラを上回る弁護団のトンデモぶりが、日本の国民意識を死刑廃止から遠ざけてしまったと思えてならない。人権派という人々のウサン臭さを凝縮したような顔を21人全てがしている。イメージ戦略がゼロ、というのがこういう人々の特徴なのは何故だろう。自分の意見が100%正しい、と長年にわたり自分自身にも信じ込ませてしまった人達のイタさが、弁護団の人たちのの目に露骨に出ている。一方の本村さんは、ますます、テレビを通して自分の思いを伝えることに長けてきている気がする。どう考えても本村さんの方がアタマがいい。どういうつもりなのか、あの馬鹿弁護団どもは?

この件に関し、『報道ステーション』で古館伊知郎が
「この犯行が(弁護団の主張する)傷害致死などとは、全く信じられません!」
と強く言いきり、ほう、古館も言うねえ、と思っていたがすぐボロが出るというか、中国のサファリパークで、生きた動物を虎のエサにするショーをやっている報道のコメントに
「昔の日本と似ている部分はあるのかな? 無いのかな? と思ってこう見ていたんですけどね……今どきの日本はこう見せかけは綺麗にしているってだけかもしれませんけどもね」
と、わけのわからないコメントをしていてあきれ返った。昔の日本のどこで、いつ、こんな残虐なことをしていたというのだろうか。そこまでして弁護しないといけないほど中国の悪口はタブーなのか。ただし、このサファリパークのショーは、お国柄、こういうのをやるのも自由でしょ、という感じ。人間殺す以外は道徳律は世界で基準がそれぞれあっていい。
11時くらいで寝る。久しぶりの早寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa