裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

土曜日

東宝の三博士

芹沢博士(ゴジラ)、仁木博士(電送人間)、ドクター・フー(キングコングの逆襲)。

※大雷雨

朝4時に目が覚めて、ジョナサン・カーシュ『聖なる妄想の歴史』(柏書房)読みふけって、7時頃また寝る。結局、携帯のベル(食事の)に起こされ、あわててシャワーのみ浴びて、母の室へ。眠い眠い。

朝食、野菜コンソメスープとタンカン、イチゴ。タンカン、タネ多けれども野趣あって美味し。今朝も某と連絡とれず、已矣乎。

GW突入だが一切その感覚なし。明けからの忙しさを思うと、なんとかこの数日の間に前もって片づけておく仕事を、と思うが、なかなかそうもいかず。

赤井孝美氏、ミクシィ日記でオタクと2ちゃんねるを誹謗してサイトが炎上し、責任をとって『天元突破グレンラガン』プロデューサー及びガイナックス総取締役辞任のニュース。おいおい、何のためにミクシィに公開限定機能がついておるのだ。学ばないなあ、とは思うが作画の質低下ごときでガイナックスにガアガア言う輩も、『エヴァンゲリオン』から何も学んでいないのではないか。そもそも、あのときは……(以下72行抹消)。

でもまあ、じゃあ2ちゃんにいるオタたちはこの作品をボイコットできるか、というと出来ないんだよねえ。みんなで見ないで視聴率を下げよう、DVDとかも不買運動しよう、とか言っても、オタは必ずそこで抜け駆けする奴がいる。逆に言うと、みんなが見ない状況で一人だけ(十万単位でいる一人だけ、だが)その作品を見ている、という優越感にひたれる誘惑にはまず、勝てない。いや、自分がそうだから、自分だけ見ないでも他のオタは全員見るだろう、という疑心暗鬼にかられて絶対見る。有名な“囚人のジレンマ”というやつである。あの書き込みが釣りじゃないかと疑われる所以。

アメリカを銃社会でなくそう、といくら平和主義者が言っても、総体的な銃所持率が下がれば下がるほど、銃を持っている者の優位性は高まるわけで、バカ(理想的平和主義者)じゃない限り、そんなことは自明のことなので、絶対に銃所持率は下がらない(あのバージニア乱射事件の犯人が銃を買った店はいま、“自分も持たないと危険だ!”と思った客が押すな押すなで大繁盛だとか)。世の中はそんなもの。

昼は一乃谷から送られた蕗の薹味噌で、シャケ弁当。母の室で昼食をとっていた平塚くんがパソをちょっと覗きに来てくれる。いくつか、今抱えているトラブルを説明。

ミリオンのネタ出し資料を見に書庫の方へ行こうと用意していたら、急に窓外が暗くなり、ぐぁらぐぁらッ!という凄い音。バン、ガン、ダン、と言う音と共に、雹のごときもの(いや、雹だが)が降り出す。気圧の急激な降下によるものか、意識が朦朧としてくるような感じにとらわれて、ベッドに倒れ込む。不快な感覚の眠り。1時間後に、携帯が鳴って目が覚めた。

携帯は白夜書房。次回原稿の打ち合わせ。私の『エンサイスロペディア』、読者票では泉麻人氏と並んでトップだそうな。ちょっと意外。

神保町にも久々に行こうと思っていたのだがこの急な天候変化で断念。5時頃、中野でちょっと買い物、総武線、山手線と乗り継いで渋谷へ。HMVでマルクスブラザース後期作品の廉価版DVDなど買う。

それから東急本店で買い物し、事務所には寄らずに帰宅。夕食の準備をする。スルメイカの丸があったので一パイ買ってきておろし、プルピートス。それとラムと豆モヤシの蒸し物。プルピートスのドロドロをなするフランスパン、紀ノ国屋のものなので美味し。これの残りにチーズなど合わせて、赤ワイン。蕗の薹味噌と赤ワインの取り合わせはオツであった。

DVDで『キング・オブ・キングス』。『聖なる妄想の歴史』読む際の参考に、と。昔、観たときはサロメ役のブリジッド・バズレンのロリコン風味のサロメが印象的だったが、1944年生まれでこの映画の公開年(61年)には17歳。今日びじゃロリとも言えない。オスカー・ワイルドの作品とは違ってヨハネの首を切り落とさせた後も生きているが、バズレン自体はエリザベス・テイラーの再来として(この映画でも、テイラーに似せたメイクをしている)MGMの盛大な売り出しにも関わらず、『西部開拓使』など三本ほどの作品に出たきりで消えてしまった。1989年、ガンで死去。

一方で、美少年で記憶に残ったのが12使徒の若きヨハネを演じたホセ・アントニオ。宗教画ではキリストの脇にいつもぴったりとついていることになっていて、女性みたいに描かれることもある使徒。『ダ・ヴィンチ・コード』では、最後の晩餐におけるヨハネの絵は実はマグダラのマリアだ、と言われたりしている(これは当時の宗教画の慣習に対する無知)。

アントニオとキリスト役のジェフリー・ハンター(これもキリストとは思えないほどのハンサム)の取り合わせは今なら腐女子が放っておかないだろう。ホセ・アントニオ(アントニオ・マヤンズ)はスペイン人の俳優で、この年、22歳。これ以外出演作を知らないから、バズレン同様消えたのだろうと思っていたらトンでもない、スペインきっての美形俳優として、史劇、西部劇からホラーまで見境なく(これもスペイン俳優の通例)、200本近くの作品に出演、制作・監督・脚本業にまで手を延ばして活躍していたのであった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa