13日
金曜日
バルバルッ! 来訪(きた)ぜ育郎〜
逆巻くドレス乗り越えて〜。
(すいません、オタクネタです。わからん人は
http://tanizoko2.hp.infoseek.co.jp/baoh.html
か
http://tinyurl.com/2hz4hq
でも参照の程)。
※『社会派くん』ゲラチェック 幻冬舎前書き
朝8時半起床。ゆっくりぐっすり寝て満足。入浴、カカト削り。
9時朝食、キウイとオレンジ、青豆のスープ。キウイ熟していて美味。
原稿書き、まずは遅れていた『社会派くん』のゲラ。『社会派くんがゆく! RETURNS』のサイトが真っ白になっているのは単なるサーバダウン事故だとのこと。どこかから訴えられたかと思った。
社会派くんでは、捕鯨への言及。グリンピースが“捕鯨は海の靖国”と称していたそうだが、私も全く同意見。ただし、日本はクジラはどんどん捕りまくるべきだし、靖国には参拝すべきであるという意味で(どちらも正当化しているわけではない。あくまで政治的意味)。詳しいことは近刊の本に書く予定なのでそこで読むべし。
続いて幻冬舎前書き。Mさんのことを書く。芸能プロダクション時代に知りあった人だが、上品な紳士然とした業界ゴロ、いやゴロというよりは知的幇間持ちみたいなことをやって食べていた人だった。あのころ(20年前)60代半ばだったから、まだ存命かもしれないが、ズルではあっても(東大法学部卒という教養が邪魔して)ワルにはなりきれない人で、ちょっと『金瓶梅』の応伯爵を連想したものである。いろいろ振り回されはしたが、振り回されることが、あの時期の私にとっては勉強だった。
この二つで、まず旅行でセッパつまった緊急な原稿を大半片づけて、ひとまずホッとする。昼は母の室でカレー南蛮。鶏の柔らかさが尋常でない。
ネット散策。ちょっとショッキングな情報二つ。ひとつは酒井一圭ことクラッシャーカズヨシが撮影中に足首を複雑骨折して緊急入院の報。撮影中だった『クラッシャーカズヨシ怒る』の題名は私がつけたものなので、関係者として驚き、心配になる。と、いうか、彼には実はある企画で中心に立ってもらう予定でいたのだ。それがトンだ。うーん、しかし、藤岡弘(現“弘、”)も、俳優として大成したのは、あの骨折の一時期があったから。同じ東映変身ヒーロー出身者として、藤岡先輩を見習って……と言いたいが、その藤岡弘、氏がいま、えらいトラブルに陥っていることであるし、なかなか励ましにくい状況ではあるなあ。
さらに、もひとつ。nittagoro氏の日記で知ったが、中国拳法家、龍飛雲氏、2月14日に腎臓病で死去、51歳。龍先生とは芸能プロダクション時代、何度かお仕事をした。フジテレビ(まだ曙橋にあった当時)の深夜番組のディレクターから、誰かテレビ生えする特技を持っている人はいないかと言われて、先生を紹介したことがある。弟子と一緒にスタジオ入りし、ワリバシを自分の喉に当てて、それを弟子に平手で垂直に打たせて割る、という凄まじい危険技を披露し、スタッフたちは大驚愕大拍手だったが、司会の菊池桃子が恐怖で貧血になり、番組がNGになる、という騒ぎがあった。
それ以来親しくなって、何度か食事もご一緒した。二人の間をつないだのが、Yというインチキ心霊ゴロで、その後Yは金に困って、龍先生の家に転がり込んで居候を決め込んだ。徹底して善人だった龍先生はその迷惑にも我慢していたが、Yが龍先生のお父さんをだまして金を借りていた、と知って激怒、
「今度出会ったら有無を言わさず正拳突きをくらわしてやります」
と言っていた。龍先生の死で一番ホッとしたのはYかもしれない(まだ生きているとしての話だが)。
中国拳法の達人だった龍先生だが、外気功というのはインチキである、と断言し、
「全ての外気功師に挑戦する。私を外気功で一センチでも動かせたらその場で100万円を進呈する。その代わり、動かなかったら次は私の突きを受けていただく」
と宣言していた。私に、その企画をテレビに売ってくれと電話がかかってきたことがあったが、受ける人がまず、いないでしょうねえと笑ったことがある。マスコミに出ることが好きで、あっちこっちの深夜番組でネタ扱いされていたが、
「まず、名前と顔を知られて、自分の拳法が認知されることが大事。どういう出方だってかまわない」
と言っていた。51歳は早過ぎる死である。無念だったろう。黙祷。
4時過ぎ、事務所に出かける。いろいろ雑用。アスペクトK田くんなどから電話。あと、観にいく予定のお芝居などの件で出演者にメール。さてさて。
7時半、帰宅。サントクで買い物して、家で夜食。鴨レタス鍋、小柱とアサツキの胡麻油炒め。ビールと日本酒。田草川弘『黒澤明VS.ハリウッド「トラ・トラ・トラ!」その謎のすべて』を読みだすが、前勉強と思い、『トラ・トラ・トラ!』のDVDの副音声でリチャード・フライシャーのビデオコメンタリーを聞いているうちにそれだけになってしまった。
フライシャーは黒澤を大変尊敬していたようだが、黒澤は田草川の本によると、フライシャーを“あのミクロ野郎”と呼んで(『ミクロの決死圏』みたいな娯楽SFの監督、と思いバカにしていたようだ)いたという。どうも、フライシャーは大人でプロ、黒澤は天才だけどガキ、という感じ。フライシャー曰く
「私は全ての作品を予算内期間内で仕上げてプロデューサーに利益をあげさせてきた男なのだ」
……もっとも、フライシャーがこの映画の前に撮った『ドリトル先生航海記』は大ゴケした作品のはずだが。
『トラ・トラ・トラ!』の東郷茂徳外相役で野々村潔が出ていたことに初めて気がついた。同じ東郷外相でも、『日本のいちばん長い日』で宮口精二が演じた、軍の脅しにも毅然として動じぬ役柄ではなく、開戦時、東条英機首相の命に諾々と応ずる、気の弱い外相のキャラだった。登場シーンは一個所だけだが、野々村潔と言えばかの岩下志麻の父親であり、われわれオタクにとっては『仮面ライダー』第一作の緑川博士(仮面ライダーの生みの親)を演じた俳優として有名である。第一話ですぐ蜘蛛男に殺されてしまうとはいえ、この緑川博士なかりせば、後のライダーシリーズはなかったのである。