裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

水曜日

あばずれ番外地

網走女刑務所物語。

※『ピンポン!』出演 廣済堂打ち合せ 『八起』ツアー

またどうにも奇妙な夢。仕事先から、プレゼントです、と金属磨き用のブラシをもらう(そもそも、これからしてヘンである)。そのブラシは針金製の毛の部分が長く、ザワザワとゆれて、ちょっと巨大なフナムシのように見える。銀座の超高級喫茶店で、そのフナムシブラシをザワザワと鳴らしながら店内を歩いていると、店員(超高級点なのになぜか中国人のねえちゃん)が、客の連れている赤ん坊を指して
「そういうものを持ち歩くと四つ足のお客様が怖がります」
と言う。私は
「“四つ足のお客様”はないだろ」
と思う、というもの。

朝8時起き、あわてて入浴。8時半、朝食。豚汁を小椀に一杯、それとオレンジ。テレビ、新聞等でソロモン群島の地震の被害の様子を見る。レポーターの言うところによると、この諸島の1000を超える島々には、電気やガスはおろか、通貨さえ存在しないところがあるという。人々は豊富な自然のめぐみによって自給自足し、文明がもたらすなんらのストレスも感じていない生き方をしていたのだろう。まさに南方楽園。しかし、それは自然がどこまでも人間に優しいという幻想の下での楽園である。一旦自然が人間に牙をむいたとき、文明を持たぬ人々はなすすべを知らぬ。ラジオも通信手段もないため、政府も、被害状況がどの島でどの程度なのかも把握しようがないという。なにしろ国勢調査も行われていないのだから、どれだけの人間が行方不明なのかさえわからない。常夏で自然が豊富ということは傷口にたかる虫や細菌も豊富で、伝染病がこの地震の被害者たちの間に広まるのも早いだろう。こうなると南方楽園どころか地獄でさえある。水木しげる先生のいうことばかり真に受けていてもいけないのである。

日記つけ、9時半に迎えに来たハイヤーでオノとTBS。『ピンポン!』出演。今回は電話して北玄関から入る。いろいろと昨夜、それからタクシーの中で携帯に、今日のニュースで取り上げるものの情報が入り、語るべき雑学を選定するが、結局、調べたものよりも、その場で思い出したものの方が面白くて使える。

宮崎哲哉さん、こないだの『ミランカ』以来なれどもう、始終携帯で調べものをしたり、スタッフにデータを探させたり。やはりみんな、こういう仕込みをやっているのだな、と安心。

今日は何やら血なまぐさい事件、猟奇事件多し。まあ、私と宮崎氏の曜日だから、というわけでもあるまいが。ゲストが上野正彦先生というのは嬉しかったが、お昼12時のまっただなかで、テレビで
「死体の腐敗は……」
「ウジ虫が……」
とお話しになる。昼ご飯の時間のお茶の間でどう見られているか、裏者的には心の中で爆笑、テレビ文化人としてはハラハラ。

収録終わり、メイク落とし。昨日は半徹だったが、あまり酒を飲まなかったせいか、逆にいつもよりファンデーションののりがいい。この歳になって、“今日はお化粧のノリが”ということが実感できるとは思わなかった。そのあと、19階で、入館証の電子化の手続きをする。『ポケット!』が終って、もう使わないからとやっていなかった。

事務所に帰る。オノが連絡をつけてくれて、先日来、つかまらなかった某企画の担当者と話がついた。私はこの数日、企画のスケジュールが次第に詰まってきていることにイラだって、夜もろくろく眠れないくらいだったのだが、向うはスケジュールが詰まってきているので、今しか休みがとれないから、と、ハワイに遊びにいっていたらしい。なるほど、そういう考え方もあるか、と逆に大笑いしてしまった。心に余裕がなくなっていたな。もちろん、腹は立つが、腹ってものは立たせられたら負け、という性質のものでもある。

3時、時間割にて廣済堂出版Iくん。『唐沢俊一の雑学王』、非常に好調で、もう出版社に在庫のない状態とのこと。驚く。ネット書店では『三丁目の猟奇』は非常に好調だが、『雑学王』の方はサッパリで、もう雑学ブームも終わりか、と思っていたのである。やはり猟奇モノは実際に書店で手にとるのははばかられネットで買い、雑学モノはわざわざネットでは買わず書店での衝動買いになるのだろう。見事に棲み分けているというか何というか。コンビニ雑学本も好調なので、続編を、と話が進み、使える原稿をあれこれと。

5時50分、新宿駅小田急線ロマンスカー改札。開田夫妻と一緒に相模大野『八起』。お母さん、
「『ピンポン!』見たわよ!」
と言う。ホントウにあちこちで見られている番組だな。

しら〜と、それから開田さんの友人のCG作家Sさんご夫妻、それと樋口真嗣監督。監督が来たのを見てアッと思う。いや、今日は実はあぁルナの橋沢さんを誘っていたのだが、それは開田さんが“樋口さんも誘ったから”というので、てっきり頭の中で、樋口かずえちゃんを誘ったものだとばかり思っていたのだ。だから橋沢さんにもそう伝えたし、今日、所要で来られない橋沢さんからは“樋口をよろしく!”と伝言があった。あぁカン違いである。いずれ改めてかずえちゃんとハッシーにはおごらねば。

肉の味はくだくだとはもう、ここでは述べぬ。しかしこの店、最初は談志家元はじめとする落語家御用達の店だったのだが、いまや店内には私の色紙だの日本沈没のポスターだの鶴田謙二の色紙だのが所狭しと飾られ、オタク系焼き肉屋へと変貌を遂げつつある。タン塩からサシいっぱいのカルビ、ステーキ並の肉厚のロース、さらにホルモン、レバ刺し(もはや塩も胡麻油もつけずにそのままペロペロと食べてしまう)、ラムチョップ、漬けラム、そして猪肉のあっさりすき焼き風。もうもう、あと一ヶ月は肉はいいわ、というくらい喰った。新宿までゴキゲンで帰り、開田夫妻とタクシー相乗りで。

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