裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

火曜日

みのも朝ズバ撃たれまい

朝ズバであんな不二家攻撃さえしなければ……。

※『DVDデラックス』原稿 『創』対談

朝から雨、しかも寒い。6時半目覚めて、ベッドの中で読書。起き出して入浴。風呂桶がやたら汚れている。定期的に湯沸かし口から汚れが吹き出されてくるらしい。

9時、朝食。オレンジ、イチゴ、青豆スープ。『とくダネ!』で柳家花緑が実相寺昭雄を『温故知人』コーナーでとりあげていて、実相寺マニア、特撮オタクの笠井信輔がまた興奮気味に実相寺監督のすばらしさを語っていたが小倉智明、死去のときに続きいいのかと思うくらい無関心。
「ウルトラマンってTBSの番組だったんだ。(笠井アナに)なんでフジテレビ入ったの? TBSに行けばよかったじゃない」
「私の大学卒業の年にはTBSに入社試験がなかったんです!」
というようなやりとりあり。

自室でDVDデラックス原稿。芸能人とそのセックスばなしについて。いい素材あり、楽しく書ける。オチまでちゃんと材料の中に用意されていたかのように。4枚キッカリ。とりあげたのは昭和48年のエロ実話雑誌の記事なのだが、芸人の女性遍歴談話、4人中に講談師が二人もいるのが、講談がまだメジャーだった時代なのだなあ、と感慨あり。現・講談協会会長の宝井馬琴がまだ琴鶴の名で青カン専門、などと自称して出てきているのが笑えるが、神田連山(生涯十人の女房を持つことを目標にしていた老講談師。矢野誠一の『酒と博奕と喝采の日々』(文春文庫)などに詳しい)の、二番目の女房が名古屋の花魁で、
「これで覚えているのはあんまりナメすぎてシソウノウロウになったこと」
というのには文字通り抱腹絶倒。

昼は母の室で。シャケ、わらび、大根の煮〆に赤飯という絶妙の取り合わせ、それとつけ焼きシャケに白いご飯、という取り合わせを両方試みさせられる。
「どっちがいい?」
と言うが、どちらもうまくて困る。家ではつけ焼きだが、弁当なら断然赤飯か。

アメリカ・バージニア州での銃乱射事件、例によって各ブログで、銃社会アメリカに対する批判多出している。私も大いに同感するが、しかし、その中に
「刀狩りが出来たんだから銃狩りだって出来る」
と、まるで秀吉の刀狩りを平和主義のためのごとく言っている人がいて、この短絡はいかがなものかと思う。あの刀狩りは権力者が、下からの反抗を防ぐための、いわば“独裁”のための行為であったのだ。

ミクシィの中にも少数だがあった意見のように、“武装権”というのは政府の暴政に対しての“威嚇”手段として、個人の自由を守るための権利でもあったのである。……と、ここまで書いたところで『社会派くん』から号外依頼があった(18日)のでそこで書く。請うご期待。

4時、氷雨の中、事務所に行く。バーバラが来ていて、
「センセイ、今日は雪が降りますよ!」
という。実際、雪に変わってもおかしくない天候なので聞き流そうとしたらそうではなく、岡田斗司夫さんが、今日の『創』の対談のとき、事務所のみんなにお菓子をおみやげに買ってきたから食べて、と言ってきたそうだ。
「あの岡田さんが愛人でもない女にそんな親切にするなど雪が降ります!」
とのこと。

4時、時間割。創のKさん、新刊『オタク論!』の見本をくれるのに驚く。見本刷りとはいえ、原稿を渡したのが12日、3日くらいでもう本になっている、というのはちょっと頭がクラクラ。まあ、ちょうど前書きだったので、最初のひと折だけ、輪転機を止めてもらって、入ってすぐ回させたのだそうな。井上デザインの装丁、相変らず、見事。表紙カバが素のままで、オビにコーティングがされているのが笑える。オタクたちは、オビに破れがあるような本は買わないだろう、だから破れないようにコーティングしてやったぞ、というメッセージだそうである。印刷所からなんべんも
「これでいいんですか?」
と編集部に問合せがあったそうだ。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4924718807/karasawashyun-22/ref=nosim

岡田さん、本当にチーズケーキをバーバラとKさんに持ってくる。あまりおいしかったので、ということ。対談はテーマが“男のホームレス化、女の腐女子化”。また岡田斗司夫的キャッチフレーズが今回も満載の回になる。『社会派くんがいく!』とはまた違った、私の代表的対談連載となったな、これも。

6時半、事務所に帰り、連絡事項いくつか済ませ、8時、帰宅の途に。サントクに寄って買い物。自室でテレビつけたら、長崎市長の襲撃が報じられていた。心肺停止状態だそうである。驚く。銃が野放しのアメリカでも、ほぼ世界一の銃規制国である日本でも、こういう事件は起こるときは起こる。

長崎市は前の市長も狙撃されている。犯人が暴力団ということでこれも思想的なものか、と思ったが、伊藤市長は“天皇に戦争責任がある”と言って右翼に襲われた本島等市長を破って自民党推薦で市長になった人物である(選挙ではそれを争点にはせず、4期目になる本島氏の長期政権批判を掲げていた。伊藤市長は皮肉なことに、今回の市長選で4期目の長期政権を目指していた)。大慌てで混乱気味の各局ニュース番組をザッピングしながら見ていたが、犯人は59歳の山口組系の人物で、市長に怨恨を抱いていたようだが、その怨恨というのが、どうも精神を病んでいる系の被害妄想的なもののようであった。
テレ朝に送り付けて来たという手紙が、電波系特有の、文字ギッシリの文面だったことからそう想像はつく。こういうものは本当にもうどうも、防ぎようがない。結局12時近くまでニュースを追い続けるが、襲撃から4時間近くたってもまだ“心肺停止状態”。長引かせず、もう逝かせてやった方がいいのでは。

酒を飲みつつ、夜食。ホタルイカのプルピートスと貝鍋。ホタルイカは半分は丸のまま、半分を包丁でザク切りにし、塩とワインにしばらく漬けておく。鍋にオリーブ油を熱してつぶしたニンニク一片とトウガラシ(丸のまま一本)放り込んで、イカをジャジャッと炒め、バタを溶かし込んで皿にあける。半分を切るのは、ワタやスミをソースにしたいからで、これはパンになすって食べる。

貝鍋は浅なべに酒を煮立たせ、昆布出汁、ネギとショウガのみじん切りたっぷり、カツオブシワンパック、ミソを溶き、そこに貝(今回は小柱とバカガイの舌)を入れて、ちょっと熱を通したくらいで卵を一個割り入れる。

ネットで、バージニアの銃乱射、2丁拳銃なんて当たらないもので、よくあれだけ大量に人を殺せたものだ、よほどの名人か、というような感想があった。『フルメタル・ジャケット』でその正確な射撃を激賞されていた(?)テキサスタワー乱射事件の犯人、チャールズ・ホイットマンは脳に腫瘍があったというが、この犯人もそうなのではないか。脳の腫瘍のせいで射撃の腕前があがるとか、ありそうである。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa