裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

金曜日

魚肉創世記

はじめにチクワありき。

※『ポケット!』収録 『モウラ』原稿 アルゴ打ち合わせ

朝目を覚ましたらまだ3時。たっぷり寝たような気がしたのだが、不思議。またウトウト。夢を見る。その中で昭和40年代テイストの歌を聴いていた。タイトルが『私のハートはドイツ製』。あまりに笑えた歌詞なので目が覚めたあとも、しばらく耳の中でリフレインしていた。

「高度400メートルから落としても平気なのよ
 私のハートは傷つかない
 だって私のハートはドイツ製
 だって私のハートはドイツ製
 ドイツの製品は傷つかないのよ
 恋をするならドイツのハートが最高よ

 重量20トンのトラックに轢かれても大丈夫よ
 私のハートは新品同様
 だって私のハートはドイツ製
 だって私のハートはドイツ製
 ドイツの製品は頑丈無比よ
 恋をするならドイツのハートが最高よ

 このあいだアメリカ軍がやってきて
 バズーカ砲の的に私のハートを使ったわ
 だけど将軍もあきれてた
 私の胸にはかすり傷ひとつつかなかったのよ
 やっぱりドイツのハートは世界一なのよ

 だから失恋も大丈夫
 冷たくされても平気
 あきらめずどこまでもついていく
 私のハートは私のハートは
 ドイツ製なんだもの」

再度目を覚ましたのが8時15分、大急ぎで入浴。8時45分朝食、ブドーと伊予柑、青豆のスープ。食べ終ってすぐ、着替えて家を出る予定だったがどうもグズグズ。最近スロースターターになった。外が雨、というのも原因を成しているかもしれぬ。いや、一番は酒か。

赤坂TBS。今日はゲストの河崎監督がケツカッチンのため15分ほど早入り。私が一番乗り(と思ったらイニャハラさんが先だった)。まもなく、河崎さん伴ってオノ、入り。河崎さん、いつものペースで周囲を自分世界に取り込んでいく、といった感じ。何かの話で
「そりゃ唐沢さん、血を吐きながら続ける哀しいマラソンだよ」
と言うので、ぽかんとしているI井さんやイニャハラさんに
「ええと、これはですね、ウルトラセブンの『超兵器R1号』という話の中に出てくる台詞で」
と解説する。

持ってきたレコードが加山雄三、克美しげる、『ぼくら』オリジナルのタイガーマスク主題歌(作曲が梶原一騎)、それに川上、王、長嶋の声が入っている巨人軍応援歌のソノシートなど、いかにも。克美しげるのエイトマンのB面が、ディミトリ・ティオムキンの『北京の55日』のテーマに日本語歌詞をつけたもの。その歌詞が凄まじいものだったので、それをかける。

海保さん、今日は素晴らしく声がハスキー。風邪というか、前日に司会をやった会場の音響がひどく、声をハリ上げていたらこんなになってしまったとか。まあ、今日は河崎カントクワンマンショーだと思うし、そんなにしゃべらないでも、と思っていたら、案外カンできていた。面白かったのだろう。カントクもリラックスしたのか、ちょっとプライベートなことをポロリと告白したりして、ノリがよかった。I井Dもオノもカントクのトークを絶賛。
「ほとんど編集せずにそのまま使える」
とのこと。

近くのギャガで打ち合わせ予定あるというカントクを送って、われわれも退出、トップスと同じビル内にあるざくろで昼食。黒毛和牛照焼き定食。河崎カントクが言っていた某事務所の話など。

事務所に帰る。案外仕事あり。まず廣済堂のコンビニ本のあとがき原稿、それから『ポケット!』挨拶文。さらに講談社『モウラ!』原稿、そして『GON!』から来たアンケート。

モウラは予定していた雑誌があまり面白くなく、急遽ネタ変えなどしたために、完成が6時過ぎになる。さらに、これまた雑誌が古いため、コピーがうまくとれず(とったものをFAXすると、もう何がなんだかわからなくなる)また、バイク便が昼、雨だったせいか混雑を極め、到着が8時なるかもという。おかげで『アストロ』稽古、今日も行けず。

TBSテレビ『ピンポン!』からコメンテーター出演依頼。オノがテレビ番組にくわしいことくわしいこと。彼女もバーバラも帰ったあと、7時半にバイク便来て、無事、図版ブツ渡せる。タクシーで新宿。アルゴのH谷さんと打ち合わせ。東口交番前で待ち合わせたのだが金曜の夜で大変な人だかり。待っていたら、近くにいた数人の若者グループの一人が、おそるおそる、という感じで近寄ってきて、
「あの、テレビとかによく出てる人ですよね?」
と訊いてきた。私の顔を見て、“どこかで見た顔だ”と話し合っていたらしい。サングラスでもかけるか?

H谷さん、相変わらず自転車。ハッピー酒場(満員でちょっと近くの村さ来で時間つぶし)で打ち合わせ件飲み。こないだ出した某企画のロングストーリィ、社内で評価されているらしくホッとする。業界の現在のどうしようもなさに話はどうしてもなるのだが。途中から露悪的な別の話になり、これで大いに盛り上がる。基本的に作家はアンコントローラブルな感情を常に持っていないと創作などできない、というところはH谷さんも同意していた。

『ハッピー酒場』、昭和30年代から50年代まで、時代設定も徹底していない、いい加減なレトロ趣味であるが、こんないんちきレトロでも、他のスカした店などよりはるかにいい気分で落ち着くところが業である。ホイスの生レモン割を5〜6パイも飲んだか。
http://www.ichigoichie.jp/hoisu.htm
次回はアルゴで社長が挨拶したいというので、それを約して12時くらいに別れる。タクシーは楽につかまった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa