裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

3日

土曜日

朝日のようにタラバガニ

今日の日記に出てくるのはズワイですが。

※古書センター モウラ原稿 金沢カニパーティ

朝8時起床。チャイナ服の女性が、耳たぶにイヤリングの穴を火のついた線香であける、というサディスティックな夢。入浴し、足の爪を切る。かなり延びていたので、切ったあと、気分的に足が軽くなった感じ。

9時朝食、グレープフルーツにイチゴ。イチゴは形もふぞろいなものだが、甘くて非常に美味。部屋で日記つけ、また企画の脚本書き。とりあえず、先に進んでいる方をまずやっつけているが、もうひとつの方も、ロングシノプシスを来週いっぱいくらいにやっつけねばならない。年末に冒頭だけ書いて渡したのだが、これがツカミとして案外いい、と評判がよかった。こっちも気を入れねば。

12時、母の室で昼食。肉なんばん。半に家を出て、神保町へ。古書センターで東京和洋会古書展。駿台坂下角の神保町楽器が無くなり、ビルを建てていた。どんどん東京がビルの街になる。ガオーと泣きたい。

和洋会らしい、普段の古書展の三割増しにホコリっぽい棚揃え。大正時代の庶民生活(一部上流貴顕も)の写真エッセイ本があって、欲しかったが高い。資料本なら買っただろうが、自分の趣味だけのために買う本には、現在そう金は割けない。泣く泣くあきらめる。一方で、資料に使えそうな本はないか、と探していたらドンピシャなものが見つかった。

それからいつも行く某書店で、これはいずれ使えるという珍物件があったので、それを買う。また、資料ビデオをいつも買っていた店が無くなっていた。ショック。最近の神田はちょっと歩くのが恐い。

ランチョンも5日から改装だそうだ。ステーキランチでもと思ったが、ダイエット中により断念。半蔵門線で青山まで出て、タクシーで渋谷の事務所。さっそく、さっき買い込んだ資料を材料にして書き上げる。K子と編集Nさんにメール、図版をFAX。

7時、帰宅。金沢のO酒店さんから贈られた日本酒『萬歳楽』を持って母の部屋に。半キッカリにパイデザ、程も無くマド、オノ夫妻が到着。金沢近江町市場から求めたズワイガニ、香箱ガニを食す会。

マドはつい二日前に、大トラ状態を呈して、東京都下をタクシーで乗り回して16500円とられたそうで、その話で盛り上がりながら。母もヨッパライは嫌いじゃないので、大変に陽気になる。オノ曰く、
「最近の若いのはあまり酒を飲まないので、ウチの相方、これだけひどい酔っ払い方をしながら、上司に可愛がられるんですよ。どうも釈然としない」
と。

足もげ故に、完全なのを買えば三バイで25000円だったズワイが、五ハイで半額以下。それに香箱5ハイ足して、全部で1万7000円だった。オノ、
「あのタクシー代とほぼ同額でこれだけのカニが!」
とわめく。ズワイの脚肉の身の豊かさ、コウバコのウチコの風味。オスメス共にこちらの舌を喜ばせてくれる。

萬歳楽、上品な酒で、のどごし水の如し。これは絶対燗でしょう、と、熱燗つけてマド夫妻と私で飲むのむ。あまり酒はやらないパイデザのHくんが、
「じゃ、私も」
と自分から飲みたいと言い出し、飲んで
「いやー、ウマイじゃないですか!」
と笑う。カニと酒は人を幸福にしますなあ。

あと、メトロン星人さんからいただいた蕪鮨、私はこれまで蕪鮨なるものはどうも甘味がきつ過ぎて、あまりいい思い出がなかったのだが、この蕪鮨は実にそこらへんがさっぱりしていて、挟み込まれた寒ブリがまるでハムの如く、皆でぺろりと一樽、食べ尽くしてしまった。

さらに母が残ったカニの身でカニ汁を作り、アサリとツブ貝のエスカルゴ風味を作り、ゴルゴンゾーラのスパゲティを作る。さすがに腹が一杯になり、デザートは遠慮しようと思っていたら、ヨーグルトケーキのルーバーブジャム添えだという。ルーバーブとくれば食わぬわけには、と思い、そのさわやかな酸味を皆で称賛しながら、ぺろりと
平らげる。

金沢の美味、能登の美味の話になり、パイデザのめぐみさんの故郷の滋賀の鮒鮨の話になる。さんざ飲んで食って話して、満ち足りた気分になって室にもどるが、まだ酒だけは飲み足りなかったと見えて、ホッピー一杯、飲みながら読書して12時まで。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa