裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

木曜日

イナバウアー 山ほととぎす 初がつお

(意)春から夏にかけて荒川静香選手の活躍が期待されることだなあ。

※秋葉原イベント打ち合わせ、『ポケット!』打ち合わせ

巨大な浴槽に一人で深夜入っている夢。温泉に入っている夢はよく見るが、大抵、昭和30年代ぽい、タイルばりの浴槽である。夢までレトロ趣味な男だ。

朝8時起床、やっと通常に戻る。しかしまだ後頭部の痛みが去らぬ。風邪がこもっているのか。入浴、9時朝食。青豆スープ、イチゴ、リンゴ。

昨日の日記に書いた原稿ナオシの件、揉めるかと思っていたらやけにあっさりと
「唐沢さんの意図が理解できましたのでこのまま進めさせていただきます」
とメールで返信があった。よかったことではあるが、ちょっと拍子抜け。

今日の丹青社打ち合わせ用の資料を作る。12時、母の室でまた鶏そばの昼食。麺が半分はコンニャク、それに細切りキャベツ。これで夜まで腹が減らないのは不思議。もっとも夜はやたら食べるが。

タクシー使って時間割。グラナーテNくん、丹青社Sさん、Mさん(女性)。やはりグラナーテは今日、両方の打ち合わせをやるつもりだったらしい。そりゃそうか。

『オタク大賞』については、すでにロフトの前売りが全て売り切れてしまっているというのに仰天。
「もう、オタク大賞はやりたくない」
と言っていたキャプテン岡野氏が、やはりやるとなると張り切って、労作のデータをまた用意している。頼もしい限り。私は綜合コメンテーターの他、独立コーナー“06年追悼”を担当。

続いて丹青社と。ちょっと表日記には書けないが、今回の企画につき、最も根源的な問題で、“これでは協力できない”というポイントがあった。バカバカしいことなのだが、企画全体の品位にかかわる問題。しかし、そこが社長の発案のポイントだとかで、頭を抱えていた。ところが、まず、今日そこのところを話に持ち出したら、さる事情により、この問題が簡単に解決してしまったという報告があった。思わず喝采を叫ぶ。この企画には運がついている。

そればかりではない。ここに持ち込む予定の企画につき、目玉となるある取材を、出来れば丹青社主体で出来たら、と持ちかけたら、なんと丹青社、その取材先にコネというか古いつきあいがあった!

しかも担当のSさんが、まさにそういう取材先オタクであるという。驚いた。すぐ、Mさんに
「連絡をとるように!」
と命じていた。こういう幸先のいいことがあると、テンション上がらざるを得ず。そして、この話が降ってきたときに即、考えた発展型のイベントの話を持ちかけたら、それはいいですね、わが社もそう考えていまして、とかなり前向き。うーん、こんなにスムーズでいいのかしらん。

とりあえず、詳しくはまた、ということで別れる。次が『ポケット!』打ち合わせで、15分くらい間があるが、偶然、以前頼んでいた、某有名俳優さんの本の出版企画に関し、その企画持ち込んできたと学会のKくんとバーバラに打ち合わせを依頼していたら、この時間割でやっていたので、そこに同席。要は、その有名俳優(と、言ってもここ数年はほとんど仕事をしていない)さんのマネージャーをやっている奥さんが、亭主を神聖視するほど尊敬していて、インタビュー依頼であっても基準をはるかに上回る額を要求、映画や舞台の出演交渉があっても、ふさわしい役柄でなければ受付けないのだそうだ。そのために二人して生活に困窮しているらしいのだが、困窮すればするだけ逆にプライドが先鋭化するという悪循環らしい。

商品に花を飾るのは、買い手のためであり、売り手である身内は、その商品の真の価値を最もシビアに見切っていなくてはならない。フリーランスの、自分自身が商品である作家や役者はその見切りが出来るかどうか、に売れるか否かがかかっている。しかも、その価値というのは常に変動制なのだ。“俺はすごい”というプライド故に自分に高値しかつけられない奴はまずダメだが、それ以上に困ったものなのは、身内が
「ウチのパパ(大抵、そういうことを言うのは妻か娘)はそんな安くない!」
とヒステリーになる場合である。

続いて『ポケット!』打ち合わせ。オノ、I井、イニャハラ。そろそろこの番組も“あと何回”をカウントしつつ、ゲスト選定をしなければならなくなってきている。次のゲストは笹公人さん、それならばテクノだろう、と。テクノと言えば80年代。これまでウチの番組でやってきたのが70年代だったからいいだろう、とそれに決める。

さすがにこれだけ立て続けに打ち合わせすると脳が煮える。事務所に帰って仕事するはずがボーッとしていたらすぐ出かける時間。だが、オノやバーバラ相手にバカばなし。丹青社企画の問題解決の話をしたら、拍手される。

『あぁルナ』稽古に行く予定が講談社モウラから催促電話、一旦家に帰るのでそっちの方を片づけてから、というつもりでいたが、これがいくらたっても片づかない。やむなく今日は稽古休み。

9時まで仕事して、食事。鶏の胸肉をタマネギ、ニラとすきやき風にした鍋を作るが絶品。あと、あんかけ豆腐。ホッピーとビール。DVDでまたコロンボ『死者の身代金』。犯人役はリー・グラント、シリーズ通しても屈指の犯人ぶり。父を愛するあまりその再婚相手の母をうらむ前妻の娘(まあ、この場合後妻は本当にワルだったわけだが)マーガレット役のパトリシア・マトリックはメガネっ娘で、今なら人気者になる顔かもしれない。このとき(71年)に20歳。70年代に『鬼警部アイアンサイド』『探偵キャノン』『マニックス』などの犯罪ものドラマに結構ゲストで出ていた顔で、79年に俳優業をやめ(たぶん結婚)、03年に癌で死去している。

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