裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

金曜日

デジャブー天国

あの伴淳三郎さんには前に会ったような気が……。

※『男の部屋』原稿『ポケット!』収録 晋遊舎打ち合わせ ロフトプラスワン『40語』イベント

結局ゆうべはウトウトしたくらいで一睡も出来ず。こういうことも久しぶりである。あってもかまわないが、今日は午前中からラジオ収録、でもって打ち合わせ、イベントと、ほぼ休みナシ。こういうときに限って。

入浴、湯を抜くのを忘れていたので沸かし直して。原稿、昨日〆切(まあ3日くらい延びるのだが)の『男の部屋』、書き出す。睡眠不足の頭で書いた原稿のテーマが皮肉なことに“眠り”。

執筆途中で9時朝食、コーンスープ、リンゴ、まずいミカン。母は今日のロフトプラスワンに行くといっている。急いで自室に戻り、また原稿。50分頃書き上げてメール。すぐに支度して家を出る。

スタジオ、もう談之助さん入っていて、雑談の真っ最中、すぐ打ち合わせに。おかげで携帯をオノに渡すの忘れ、それが収録中に鳴り出すというアクシデントに見舞われた。

談之助さん、最近はずっと赤ん坊の世話ばかりだそうで、ラジオみたいな場は久しぶりらしく、しゃべるしゃべる。かなりアブない話も出て、調整室でI井くんが青い顔をしていた。私もかなりアブないことを言っていたなあ。こういうときはとまらないのだ。番組の終わりで談之助さんが“え、もう?”と驚いていた。フリートークの時間というのはわれわれおしゃべりにはホンの数分に感じてしまうんであった。海保アナからバレンタインのチョコ、いただく。

終って、トップスでカレー食べて別れる。われわれはそのままTBSに戻り、一階の喫茶で晋遊舎の編集者さん二人と打ち合わせ。反日マンガをトンデモとしてツッコミを入れるという内容。思想的な本だと困るなと思っていたが、野平俊水先生も書いているというので安心する。

タクシーで渋谷に帰る。挨拶文を書き上げ、さらに今日のロフトで配る檄文(『昭和40年代を語る会』結成について)を書いてプリント。『アストロ劇団』チラシ、忘れてきたのでオノに連絡とってもらい、モヤシくんに持ってきてもらうことにする。

ロフト入り。バーバラ、あやさんが同人誌売り場を作っている。『社会派くん』乱世編も、K田くんが版元に在庫のないのを、各書店からかき集めてもってきてくれていた。

半田くん、今日は昭和40年風の襟の大きなワイシャツを着て登場。楽屋に河崎実監督が来訪、半田くんと昭和歌謡で盛り上がっていた。河崎監督とは、トンデモホラーシリーズの第二弾についてちょっと話した他、某件で“こういうのないかな”と思っていた資料を“これ知ってる?”と見せてくれる・
「おっ、○○○○のだね!」
と即答すると監督、ウレシそう。もちろん手に入れるつもりではあるが、ちょっと借りておくことにする。他にレイパー佐藤さんや田中一圭くん、元気いいぞうまで顔を出してくる。

で、7時半、壇上に上がってトーク開始。早めに入ってきた半田君目当てのお客が前面の方を占めていて、周囲をいつものオタク客が包囲する、という面白い構成になっていた。

まず会の趣旨説明、それから昭和の風景がいま、急速に失われていっているという話、歌謡曲の話、昭和40年代は41年から、といった区切りの話、なぜ30年代がブームなのか(30年代は東京タワーというモニュメント、経済成長への入り口と、一直線の分かりやすいストーリィがあるが、40年代は渾沌としていて、100人いれば100人の40年代があるので逆に語りにくい)よいう話などが出るが、次第々々に中野監督のテンションが上がり、映画のテーマ曲に勝手に主題歌をつける話や、新宿の『さくらや』の旧バージョンのCMソングの話、それから発展して町の広告アナウンスの話、さらに地方CMの話と、どんどんマニアックな話題になってきて、会場はもう笑いの渦(周辺がまずドッと笑い、それにつられて中心が笑うという特殊な現象)だが、さすがにそういう話までは半田くんがついてこられず、今日一番お客を呼んだ人なのにも関わらず、最後は完全な聞き手になってしまっていた。『ポケット!』の二大人気ゲスト同士の新世代旧世代対決だったが、まず第一ラウンドは旧世代の中野監督の圧倒的勝利。ちょっと半田くんには気の毒なハンデ勝負だった。

さいとうさん、大入り大ウケで、またやりましょうと。通称が欲しいねえ、と言ったら中野さんが、
「40年代を語る会、で、略して“40語(しじゅうかた)”はどうでしょう」
と。どうしてこう面白いことばかり言えるのかね。

半田くんたちは帰り、残りのメンツで『青葉』へ。あやさん通じて、薫風堂さんの友達のTさん(いつもあすなひろしの同人誌をくれる人)の主治医である、K先生を紹介される。鯉朝くんつながりでもあるらしい。

なんでもK先生、テレビ東京の『主治医のできる診察室』のレギュラーで、トンデモ医学説を論破する役回りなんだそうだが、今回、ある健康法の大家の本を取り上げるにあたり、これが難物なので、レクチャーをお願いしたい、といってきたもの。話を伺うに、相手のその本というのが、間違いは徹頭徹尾間違いなのだが、オリジナルな部分があまりなく、細かいチェックポイントしかないのでつっこみあぐねている、というところらしい。

こういう分野へのツッコミなら皆神さんか山本さんが最適なのだが問い合わせる時間もない(明日が収録)というので、ツッコミの科学的な部分は先生ご自身にまかせるとして、テレビ演出向きのツッコミ方の伝授に絞る。細かいチェックポイントに先生が全部ポストイットを貼ってあったので、
「短い時間の中でいちいちのポイントをついていくのは無駄。そのポストイットだらけの状態の本を見せて、“おかしいところに貼っていったらこんなになりました、いちいちは時間がなくて言えません”とやればテレビ的には最も効果的」
「食事を一口につき30回〜60回噛め、などと書いてありますが、その番組、コメンテーターが彦摩呂さんのようですから、彼に“こんなに噛んで食事がおいしいと思えますか?”とフるといいですよ」
などとアドバイス。

しかし、K先生もべらんめえ口調でかなり独自な理論を開陳する(物理学で修士号をとってから、医者になったという変わり種なのだそうだ)。中にはそれ自体トンデモとされかねないような説もあって面白い。
「成人病なんて何にも心配することはない、あれは国民の半数以上を病気にして儲けようとしている奴らの流したデマで、高血圧なんて何にも体に悪くない」
とテレビで力説したら、自分の病院の患者が喜んでもう通院しなくなり、収入が半分になってしまった、と嘆いていて、笑った。

気がついたらもう2時近く。オノ夫妻とあやさんとタクシー相乗りで帰宅。一睡もしない割には(しなかったから、か?)テンション上がったこと。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa