裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

土曜日

オオオニバスのオムニバス

 オオオニバスの上にさまざまな少女を乗せて撮ったオムニバス映画。朝5時に目が覚める。寒い。寝床読書で氏家幹人『江戸の女の底力』(世界文化社)。いつもながら豊富な資料を駆使してこちらの知らない江戸時代のイメージを眼前に浮かび上がらせてくれる。もっとも、江戸人の思考や価値観を現代のそれと直結させすぎるように も思えるのだが、それは読者を考えてのことだろう。

 6時半起床、入浴、朝食。バナナとミカン、ポタ。日テレ『ウェイクアップ』、この番組はずいぶんとライブドア寄り。しかし、いくら法律的に道理があるとはいっても、この件で堀江という男は完全に“世間”を敵に回してしまった。どうもその自覚もないようである。仮にもマスコミを牛耳ろうという男がこれではまずいだろう。
「新聞を殺す」
 などという発言、大向こうウケだけを考える評論家ならいいが、力(金)を持った
男の言としちゃ剣呑すぎると取られる。こういう男に天下は取れない。

 12時まで、家のパソコンで『FRIDAY』四コマネタ出し。地下鉄で出勤、新宿山下書店で6千円ほど書籍買う。そこからタクシーで参宮橋。『道楽』でノリミソラーメン(ミソ味スープの豚骨ラーメンに、焼きノリを五〜六枚のせたもの)。基本的に昼食はオニギリ一ヶと黒豆納豆、それにカップ味噌汁のみとしてダイエットしているのだが、土曜日はフリー。週に一度、好きなランチが食べられる。

 とはいっても、私の基本行動範囲にあるランチの外食というのはだいたい決まって いて、新宿だと
「アカシアのロールキャベツシチュー」
「王ろじの豚丼(カツカレー)」
「万世のパーコーメン」
 渋谷だと
「チャーリーハウスの定食かパイコートンミン」
「兆楽のミソそばかギョウザと半チャーハン」
「キッチンハチローの日替わりランチ」
「新楽飯店のホタテと野菜炒め定食」
 神保町だと
「ボンデイのカレー(アサリ)」
「いもやの海老天丼」
「ランチョンのステーキランチかエビフライ」
「スヰートポーヅのライスとギョウザ」
 無くなってしまったが
「おたべ屋のたこ焼きとたこ飯」
 ちと贅沢だが
「松翁の天ざる」
 あと参宮橋だと
「道楽のノリミソラーメン」
 青山では
「志味津のカツカレー」
 くらいになる。神田に移ったトツゲキラーメンも神保町帰りに寄ってみたくはある が土曜が休み。

 思えば参宮橋時代は狭い街だったがランチに関しては上記の道楽はあり、定食のなかなかうまい上海飯店があり、和食飲み屋でほぼ週三回は通っていた無愛想という店も一時ランチに力を入れており、幻のトルコライスを食わせる洋食屋はありと、なかなか充実していた。トルコライスなく、無愛想もなくなった。いま、あそこ、どれだ け店が残っているか。

 今日はとりあえず禁断症状の出ているノリミソラーメン。店長が私の顔を見て、アレ、という表情になる。“あれ、この男、こないだテレビで……”という、電車で乗り合わせた人などがするのと同じ表情。案の定、帰りに
「アレって、事前に練習するの?」
 といきなり訊いてきた。いや、打ち合わせするだけでリハはないんですよ、と答える。タメ口なのは、他の客に“ウチはテレビ出るような客と対等に話するんだ”というアピールするためだろう。いつもお世話になっているので宣伝に(?)協力。

 仕事場、雑用いくつか。あと日記アップなど。肩が昨日のストレスか、バンバンに張っているので、2時にタントンマッサージ。
「えらいことになってますね」
 と言われる。帰宅、今日の朗読ライブの資料等を揃える。

 5時、出かけようとしたら直前に電話、『アサヒ芸能』からコラム連載のお仕事。 まさかここから来るとは思わなかった。ナンパな記事かと思ったら
「硬派な時評コラムでお願いしたいのですが」
 とのこと。さて、どうなるか。打ち合わせ日取りのみ設定。

 タクシーでロフトプラスワン『レトロエロ朗読の会』。川上史津子さんと、写真撮影係の男の子、二村さん、関口さんと6時頃までに順次楽屋入り。前のイベントの人が残ってまだ騒いでいる。アイドル系のところらしい、と思っていたら、吉田豪氏と掟ポルシェ氏が楽屋を訪問。このイベントで売り出しているというアイドルの卵の女 の子二人を紹介してくれた。らば、その子たちが
「エーッ、『世界一受けたい授業』見てます〜! マジ嬉しい〜、写真撮らせてください〜」
 と写メール大会。オイオイ、キミたち撮られなきゃいけない方やがなと思う。それにしても、ラーメン屋さんからアイドルの卵にまで顔を認識されてしまった。この状態がいつまで続くか? 少し今後のことをきちんとやっておかないと、テレビに顔が出なくなった時点が“過去の人”になるとき、になってしまう。もちろん、ちゃんとそのための仕込みはしてあるけれど。

 今日は斉藤さんが体調悪くて休み、加藤くんが代理。週刊文春の人がお会いしたいと言ってます、と加藤くんが言うので行ってみたら、実は『滝沢』閉店でグラビア記事を掲載するので、唐沢さんと辛酸なめ子さんで写真撮影をしていただきたいのです が、というお仕事の依頼。明日夜の撮影ということになる。

 朗読ライブは久しぶりに二村さんとやれたのが大変嬉しかった。今回はやらなかったが、二村さんとガチンコで、二人がからむ芝居をやってみたいと思う。時代劇(山風の『くのいち忍法帖』の、般若寺風伯の台詞)の、読んで気持ちよさそうだったことには嫉妬を感じた。川上さんと私で読んだのは『坂口安吾の阿部さだ訪問対談』。最初はいかにも文学者らしいことを言って阿部さだを感心させよう、としていた安吾が、さだの存在感にのまれてしまって、最後はあたふたという感じで逃げ出すように帰る、という感じを出して読んでみたが、地味なものであっても受けてくれたので安心。関口さんのSMばなしもよかったが、ギター弾き語りはマイクの調子いまいちで 気の毒だった。

 村木さんと島さん、よっしーさんが聞きに来てくれていた。あと福原鉄平くん、笹公人さんも。あやさんは例により同人誌販売。モナぽさんは客としての他、二村さんへのインタビュー。川上さんのお知り合いたちと青葉で打ち上げ。12時過ぎまでワ イワイ話す。 川上さんのつれてきたカメラマンの男の子、掟ポルシェさんが
「可愛いですね!」
 と思わず口走ったくらいだが、聞いてみたらまだ19歳。可愛いわけだ。それでいて、カメラではえらいエロなものを撮っているらしい。週刊文春の記者さんも、なにか文藝春秋という会社のイメージに似合わぬ、きれいな青年(滝沢秀明をタイ人にし たような感じ)だったし、今の男の子というのは総じてキレイなんですなあ。

 料理はアヒル、カエル、シナチク煮込みなど。味が上がったような気がする。特にカエル。別テーブルでインタビューを受けていた二村さん、そのよく通る声で
「セックスというのは……」
「アナルに入れるというのは……」
 と談話を発表。奥の方にいた女性客たち、帰るとき、ジロリとそちらの方に一瞥をくれていた。いやあ、同じテーブルでなくてよかった。こっちでは
「バイブというのは……」
「フェチビデオというのは……」
 などというような高尚な話をしていたわけで、一緒にされては困る。あやさんとタクシー相乗りで帰る。今日の朗読はお気に召した模様。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa