裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

19日

土曜日

シャラポワ宇宙戦艦ヤマト

 森雪の制服にチクビが! 朝6時半起床、入浴、ミク日記つけて朝食。クロワッサンとリンゴ三切れ。昨日書き残した『社会派くんがゆく!』号外原稿を書き出す。書いているうちにだんだんエスカレートしていき、当初の倍くらいの文字数になる。ま たいろいろ敵を作るかもしれないがカマウモノカという感じ。
http://www.shakaihakun.com/data/

 書き上げて、も少し推敲したかったが、ふと気がつくとすでに12時。うわの空のライブ、1時半会場だが中野から上野まで行く時間を考えるとギリギリ。急いで家を出るが、紙入れを忘れた。コンビニのATMで下ろしたり、いろいろ手間取る。

 地下鉄乗り継いで上野広小路まで到着したのが1時15分。すでに広小路亭前は長蛇の列。関係者顔をしてお先に入れてもらい、途中で買った五目焼きそばをかっこんで昼食代わり。昼夜二回興行としたおかげでゆったり見られるが、やはりあのギュウギュウの酸素不足状態が懐かしい気も。神様というのは嫌気性なのか、こういう酸素 不足的会場に降りることが多いものなのである。

 今回からやや参加メンバーに変更があり、おなじみコントの顔ぶれも変わっていて劇団員たちもまだ慣れていないという感じがやや、した。最初のオーディションコント、応募者が二人ではやや(ややが多いな)バランスが悪い。島さんの宅八郎、座長の談志の他にもう一人、短時間でも顔出しする役が欲しかった。とはいえ、これが今回はお気に入り。島さんのキレ方がもう最高にいいし、マジックハンドでおぐりの鼻をつまむシーンのタイミングに爆笑。こういうなんでもないところで息というものの合い方がわかる。富士子、鷹子、茄子美の『ダブファン』三姉妹コントも息の合い方が見ていて心地いい。80年代の姉妹のはずが現代の設定になっていたのにちょっと とまどったが。

 逆にみずしなさんのコントはあと数回、このトリオ(小林三十朗、金沢柱)でやって息を合わせれば倍は面白くなる。パンパン八幡薫が、まだ未完成みたいな一人コントをかけていたがかつて一人芝居をこの世の中に定着させた役者のもとにいた人間として、これは彼女のために台本を書いてみたい、と思わせた。いい具合にいけば、化 けると思う。

 コントは例によりおぐりゆか独壇場。水科孝之のふじいあきらの表情(と、いうか目)が激似。髪の毛を合わせてカットできるのがこの人の強みだな。あと、昼の部のせいか、年輩のお客が多く(白髪の人を見かけて堀川さん、と声をかけようとしたら別人だった)、どういう情報で来たのか、ちゃんと前売りを買って入った人もいたが何か間違って来て、“笑えない”と怒っていた人もいたようだ。それ自体笑えるが。

 うわの空に限らず、最初にマニアックなファンがつき、サイトなどの常連書き込み者たちが会場に増えていくと、だんだん、家庭的、サークル的な雰囲気がライブの場合、会場にただよう。初期ファン(だいたいオタク)がつくのは非常にありがたいし固定ファンへのサービスという面では常連心をくすぐるのは非常にいいことだが、逆にそれが劇団のスケールを小さくしてしまう危険性が常にある。そろそろうわの空、常に初めてのお客さんを相手にする気持ちでメジャー進出への準備に入った方がいい のでは。

 隣の席に、『おれんち』で顔見知りになったファンの力丸さんが座ったので少し話す。クイズ大会コントで、改めておぐりゆかの表情にハマったらしい。
「あの、自分で自分の発言の意味をとりかねているようなときの表情が最高ですね」
 と言う。またファンを一人増やしたと悦に入るが、
「昨日今日のファンが知ったことを言うんじゃない!」
 という、嫉妬みたいな心理も働くのが面白い。しかし、この雰囲気が会場を支配すると、劇団にしろ芸人にしろ永久にマイナーのままになる。窓口は万人に開放してお くべきなのだ。

 今日、昼の部に来たのは夜がアニドウの上映会だから。これまでいろいろなしがらみで二回ほどアニドウは不義理しているので、どうしても足を運ばねばならぬ。ぎじんさんは昼の部終わって、これから上映会の準備に中野へ行くとか。では中野で、と挨拶、まだかなり時間があるので、劇団のみなさんと雑談。週プレの連載のことなどいろいろ。ツチダマさんから、
「うわの空女性陣からの贈り物です」
 とバレンタインデーのプレゼントをくれる。数日前、日記に“誰もくれん”と文句タレたのが同情を引いたらしい。やはりゴネ得というのはある。お心遣い有り難し。

 あまり長居をしてダメ出しの邪魔になってもと思い、出て、東京駅まで駅構内の古書店に久しぶりに行ってみようと思ったのだが、なんと無くなっていた。ありゃりゃという感じ。仕方なく、中央線で中野駅に行き、ブロードウェイの中の古書店など回る。だるま書店で岡本喜八の本を一冊購入。さっき上野でおぐりから、岡本喜八監督死去のニュースを聞いたので、追悼の意味で。彼女はそのニュースを、携帯からミクシィのぞき、Taka@モナぽさんの書き込みで知った。
「私、最近世間のことはみんなモナぽさんの書き込みで知ってます」
 私もご同様。あびる優のことに詳しくなる詳しくなる。

 そうこうするうち時間となり、さて、やっと、となかの芸能小劇場に行ったら、入り口にぎじんさんとなみきたかしがぽつねんと立っていて、上映会、中止と告げる。なんでも、会場を借りるとき、午後といってとったのだが、この会場は午前・午後の二分割でなく、午前・午後・夜という三分割で貸しているらしい。もう何十回となく借りているんだからわかっていそうなものなのに、つい、午後で借りてノホホンとしていたら、会場から“アニドウさん来ないけどどうしました”と電話がかかり、そこ で気づいたが後の祭りだったそうな。

 一応電話やメールなどで会員には知らせたが、私のように昼にも用事があって連絡つかない者が来たときのために、なみき氏がおわびのCD持って立っていた。そう言えば私がアニドレイ(男の手伝いをアニドウではこう称する。ちなみに女性は“アニメイト”)だった頃にもこういうことがあって、お茶の水の電電ホールの前でお客に 謝ったことがあったなあ。もう二十五年も前だが。
「カラサワくんはさっさとまた上野に戻ればいいんだよ、近いんだし」
「近かねえよ、東京の反対側だあね」
「ぐるっと回るのもいいじゃない。上野を発って山手線、回る電車は内回り……」
 半ばヤケらしい。ぎじんさんはなみきに
「早く“打ち下げ”行きましょうよ」
 などと言っていた。打ち下げ、てのはうまい。

 このまままた上野へ戻って、ということも考えたが、もう一件、今日はスッポかし予定の会があったことを思い出し、と学会のmikipooさん、声ちゃん、パイデザ夫妻などと合流して、武蔵小杉(元住吉)の『おれんち』へ。東京大会打ち合わせの打ち合わせなど。と学会員ではないがみなみさんが料理注文を引き受けてくれる。無駄足で東京半周させられた反動か、やたらハイで、毒舌ジョークポンポン飛ばしながら、刺身、新筍刺身、生ホッケ塩焼き、平貝ヒモ唐揚げ、大穴子白焼き、海鮮かきあげに手こね寿司など。mikipooさんが全品に“おいしい!”と声を上げる。

 脇に座った声ちゃんの天然オヤジたらしをじっくり堪能。天然なのか計算なのか、この気配りは? などと考えていたら店の客にサイン求められる。店の常連のガンマニアさんらしい。ここの店には確かにマニアックな客が多いかも(われわれ含め)。そしたらわれもわれもと三件連続。最初のオヤジさんは本当にテレビの私のファンらしいが、あとのオバサン二組は、ただ単に“あら、テレビ出ている人なの”的なミーハーじゃなかったかと思う。しかしまあ、ノリでホイホイと書く。ハイなせいか、飲んだ筈だがあまり酔わなかった。昼間会った力丸さんがカウンターにいた。昼夜見たあと、この店に来たという。近くなのかと思ったら、藤沢在住だとか。根性あるなあという感じ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa