25日
水曜日
ミンナニイケノボートヨバレ
デシカラメンジャウリャウヲトリ イツモシヅカニワラッテヰル。朝、7時20分起床。布団の中で、さて起きるかと思ったら鼻血が出てシーツを汚す。朝食、貝柱入り中華粥、フジリンゴ。テレ朝の朝刊瓦版で、来日中のアナン国連事務総長が国会で日本の自衛隊イラク派遣を賞賛、の記事に、例の勝谷誠彦、大谷昭宏の凸凹コンビが噛みついていた。まあ、昨今の派遣反対派の旗色の悪さは彼らにとって意外でもあり面白くないことでもあろうから、褒めないのは当然のことだとして、その毒舌にもま るキレがないのは哀れである。
呆れたのは勝谷誠彦で、小泉総理に対し、アナン氏に北朝鮮問題のコメントを引き出せていない、と文句をつけ、“それを言わせるのが総理ってもんだろ、都合のいいことにだけ利用しやがって!”と怒鳴っていた。朝から“しやがって”などというコトバをテレビで吐くとは、品のないことであるがまあ、品をこの男に求めても仕方ないかも知れない。問題は、アナンが北朝鮮のことについてコメントしていない、という決めつけである。たまたま、そのときに私が新聞で読んでいたのが、まさに、アナン氏の北朝鮮問題に対するコメントであったので、あれ、この記事は別のときのもの か? と一瞬、思ってしまったほどだった。
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/seiji/20040225/NAIS-0225-04-02-41.html
↑この通り、アナン氏はちゃんと北朝鮮問題に対し、はっきりと拉致問題、核兵器問題について国会の場で発言している。もっとも、国連の力が拉致問題に大して助けにはならない、ということがあるが、それは別の問題である。総理は少なくともこの件で勝谷氏の言う範疇では、責任を果たしていることになる。早朝の番組とはいえ、新聞に目を通すヒマくらいはあるはずだ。自分の情報収集努力の不足を元に、こういう、他人に対する悪罵をまき散らかし、後に謝罪もせず平気でいられるほど、テレビ のコメンテーターというのは気散じな商売なのか?
そもそも、国連なんてものは第二次大戦の戦勝国が、その状態を維持するために組織したものであり、しかも実質的には、かつてはアメリカとソ連の、現在はアメリカの、つまり超大国の意志を各中小国家に確認させるためのシステムでしかない。平和を守ることが義務でもないし、戦争を禁止しているわけでもない。日本人は、ソ連の拒否権で長いこと国連に参加できず、そのため、片思いの男が相手の女性をどんどん理想化させるように、国連を美化し、神格化して考えるようになってしまった。今回のイラク戦争で、いくらなんでもそんな幻想も破れたろうと思いきや、まだそれにしがみついている図は、オウム信者が麻原逮捕後もまだ信仰を捨て得ないでいる図に等 しいような気さえする。
とはいえ、アナン事務総長の来日は公的なものであり、その立場は公人として、である。公的な場、つまり国会での演説が彼の、つまり国連の正式なメッセージだ。それを無視し、個別対談での発言を取り上げて、“アナン氏の真意はそこにない”などと発言する民主党の菅代表のバカさかげんを見ると、ああ、もう政治家としてのこのヒトは終わりだな、と思わざるを得ない。政治というモノは公的な場で運営されていくものでしょうが。あらゆる政治家たちの、国会での証言だの発言だのに意味はないと言うのだろうか。この先、国会で自民党議員がどんなバカな発言をして、それに民主党がツッコンでも、“私の真意はそこにない”と言われたら終わりではないか。
入浴洗顔歯磨剃髭如例。1時、家を出て渋谷J−POPカフェ。『平成極楽オタク談義』収録。今回からディレクターがN田くんからN口くんに変わる。岡田さん、ゲストのとり・みきさんと弁当食いながら雑談。とりさんが小松左京還暦記念パーティのために作成したビデオを見る。私の中でカルチャー・ヒーローであった“あの頃” の小松左京の姿を見て、感慨ひとしおならず。
高校一年の修学旅行が、飛行機で札幌からいきなり大阪伊丹空港へ、というルートだった。このとき、生まれて初めて大阪という土地に降り立ったのだが、その瞬間の思いが、“あ、いま、小松左京と同じ空気を吸っている”というものだった覚えがある。われわれの世代の本好き、SF好きにとり、小松左京の存在がいかに大きかったかは、今の若い人には想像もつくまい。三人で話が盛り上がりすぎ、岡田さん、
「あかん、話がおもしろすぎる。こら本番で持たん」
と、さっと切り上げてどこかへ行ってしまった。このヒトらしい。
で、本番。とりさんの、大ファンであるからと言って全面肯定的態度でなく、きちんと一線を引いて作品評価を下す態度に、いつもながら感心。とはいえ、同世代同年齢同趣味傾向同業種の三人、あまりに対立事項がなさすぎて、和気藹々に盛り上がりすぎ、見ている方ではツマランかも、と進行役としてはちと、思った。
15分ほど休みをとって、次の収録のゲストの談之助さん。危ない資料を山ほど積んであり、スタッフが“これは使える”“これは危ない”“これはいいけど……”などと選別の最中。こっちはいつも話していることになりそうなので、まったく打ち合わせしなかった。……しかし、これは三人が三人、ちょっと異様な盛り上がりをみせて、事前に考えていたよりもずんとディープな内容の回になった。要するに、オタク世代の最大の暗部の問題なのだ。どこまで放送できるか、も怪しいものである。下手すると、この回、まるごとカットされるかな、と話しながら思う。面白いかどうかはまた別問題。三人が三人とも、口が暴走しながら、それでも業界人らしく、ふと単語などを無意識に言い換えているところに、聞いていてもじれったさが残るのではないか。かつて『朝まで生テレビ』で差別問題を取り扱った回のように、一切のタブーをこの時間枠の中では問題としない、という前提で、4時間くらいは討論しあわないと 結論は出るまい。
岡田さんが『マンガ夜話』収録のため4時でケツカッチンで、急いで出かけていった。OTCのIさんと、ちょっと映像ばなし。河崎さんの『イカレスラー』のことなど。某件でのお願い事も少し。一旦家に帰り、メール類などをチェックする。快楽亭から電話、例のネパール公演、まずカトマンズまで飛行機で行き、バスに乗り換え、トラックに乗り換え、最後に“馬に”乗り換えてネパール入りをするという。あまりに凄まじい行程なので、本にして売ろうと企画しているらしい。
7時30分、青山ツインタワー地下『ホルモサ』。沖縄から状況の神野オキナこと中笈木六こと由麻角高介氏の歓迎会。開田夫妻、植木不等式氏、S山氏、S井氏、K川氏、H川氏、I矢氏、それにさっき会ったばかりの談之助。神野氏は一昨日はワンフェスに行ったとのことで、やはり人波に呆れかえっていた。“へぇパンダ”の話などする。口の中に“へぇボタン”が仕込まれているパンダペット(口パクパンダ)なのだが、工夫はへぇボタンを押したときでなく、押して手を離したときに“へぇ”が出ることで、要するにちゃんと、口を開けた状態で声を出すのである。オキナさんとおそろいで着ているキル・ビルTシャツを見せたら、S山さんがうらやましがってい た。
料理は基本的にこのあいだS山さんと試食したときと同じ。それに鶏肉のトウチ炒めと、春雨のピリカラを。白美人(台湾焼酎)を頼んだが、品切れだった。ここはどうも、メニューの品切れが多い店らしい。前回も紙焼きが二人前しかなかったが、今回も水餃子が事前注文にも関わらず数が足りず、またシオカラも切れていた。馬面のおばちゃんが“ないのよ〜”とか言う。こないだの『遠州屋』のおばちゃんのなれなれしさは浅草調であまり気にならなかったが、こっちのおばちゃんのはちょっとハナ につく。青山だからか?
開田さんはダイエットでスマートになり、しかも髪を短く刈った。誰かに似ていると思ったが、そうだ、いしかわじゅんだ、と気がついた。対比するとあまり似てないが、パーツパーツは、髪型、メガネ、細い目、ヒゲ、ちょっとおしゃれっぽい服装、とかなり相似形で、それの統合イメージとしていしかわじゅんのあの容姿を彷彿とさせるんである。そう言ったら、夫妻でやたら嫌がって、“メガネを変えよう!”とか騒いでいた。あと、談之助さんが試写で観てきた、ローワン・アトキンソン主演の映画の話。イギリス映画の役者層の厚みの凄さ、など。ああいうのを見てしまうと、日 本のドラマは学芸会、ことにアイドルドラマは演技以前ですよ、と。
紙焼きをおかわりして、10時半ころお開き。オキナさんは開田家に泊まるとか。われわれは、S山さんのお勧めのドイツ料理屋に明日、行くことに計画を立てる。ホントにどうも、肉親以上に頻繁に顔を合わせている。帰宅、某共著に起きたトラブルのFAX。まあ、これは出版社に完全におまかせ。