27日
木曜日
親譲りのぬっぺっぼうで、子供のときから損ばかりしている。
せめて一つ目小僧だったら。朝、7時半起床。朝食はソーセージとイギリスパン。ゆうべ、ベッドに入ったあたりから、右下腹がシクシクと痛み、それほどの痛みではないのだが朝まで続く。体力がこの冬はあまり落ちないので有り難いと思っていたのだが、やはりいろいろガタが来ていると見える。唇の右端にできた口唇炎はチョコラBBを服用して、どうやら治った。胃の方は蒼胡散をのんでみるが、昼過ぎまであまりおもわしくない状態が続く。テンションには関係ないのでまあ、いいか。
講談社単行本の前書きと後書き、それから紹介しているサイトで閉鎖されてしまっているものがあるので、そのフォロー。相変わらず、執筆の途中に宅急便が来たりクリーニングが来たりとうるさいが、逆にこういうものがまったくなく、執筆のみに集中できる環境に置かれたら、何も書けなくなるのではないか、という気がする。『癒しとカルトの大地』の中にあったが、パラダイス的な気候と景観に恵まれたカリフォルニアの保養地、ビッグ・サーに集まった100人以上の芸術家〜文士、舞踏家、彫刻家〜たちが、何故か最初はこの土地をいたく気にいるにも関わらず、また去っていく現象をヘンリー・ミラーが書いて曰く、
「芸術家たちと言えば、奇妙なことに、この種の人たちで、ここで最後までやりぬいた者はほとんどいない。何かが不足しているのか? それともここには何かが多すぎるのか……日光が多すぎ、霧が多すぎ、平和と満足が多すぎ……?」
安楽な状態の中で神経は働かないのである。知り合いのもの書きの中には、自分への誹謗中傷をわざわざ匿名掲示板に書き込んで、そこで悪口が盛り上がるのを読み、それを執筆の刺激にしている人までいる。私はせいぜい、麻黄附子細辛湯でテンションを高めるくらいだが。
昼は買い物に出かけ、蛍光灯や予定表カレンダーなどを買う。ついでに江戸一の回転寿司で昼食。ここ、ネタがうまいと評判になりすぎて、誰も回っている寿司を食わない。入ってきた客がいきなり“イカと穴子、ヅケね”などと注文する。普通の寿司屋みたいである。エンガワをおかわりする。甘いのなんの。
ロフトプラスワンのサイン会予定を石原さんにFAX。鶴岡から電話。“古書市に行ってきました”というので、伊勢丹のか、と思って受け答えしていたが、どうもおかしいので、よく聞いたら『殺し屋1』だった。浅野忠信の口調のモノマネをしあって笑う。映画館を出て、役者の口調のモノマネで盛り上がるのは『柳生一族の陰謀』以来ではないか、ひょっとして? 傑作なのは、『殺し屋1』のロードショー館でかかっていた予告編が、三池崇史の新作のものだった、ということ。今年一年だけで5本が公開されているという。この多作ぶりはまさに今日的な戦略である。常に名前を出し続けていないと覚えてもらえない。出版とか、映画とか、斜陽な産業に従事している者ほどそうだろう。あと、ネットでひろって笑ったこの映画関係の情報で言うと“この映画のCGはドイツで作られている”のだそうである。
夕方近くになるがまだ原稿終わらない。胃の具合はよくなった。カイロに行く予定だったが電話かけて取り消す。コミケの打ち上げの会場予約、大雑把な人数確認をして店に電話入れておく。芝崎くんからペーパーについての電話がある。最初はウチにあるコピー機で両面コピーして新聞のようにする予定だったが、経理のK子から、と学会の資金から印刷費出すなら、明確な金額の出る街コピーでやった方がいい、と言われたので、仕方なく片面4枚にしてホチキスで止めるということにしたという。芝崎くんを事務方に推薦し、“いろいろ構造改革もしてくれ”とタキつけたのは私なのだが、その結果、彼もハリキリ過ぎていろいろと意志疎通の行き違いや何かでゴタゴタし、会にも彼にも迷惑をかけることになってしまった。まことに申し訳ない気持になる。これをきっかけにそろそろ私も会の運営活動に一線を引いて、モノカキとしての活動に専念する潮時かもしれない。6時過ぎ、やっと全部の原稿を講談社にメールする。それでもまだまだ、終わらない。永遠に年が明けないのではないか、という気になる。
某国営放送のYくん来宅。わざわざ御歳暮を持参してくれる。しばらく雑談。彼もいろいろ悩んだり張り切ったり、複雑な心情らしい。新山千春が自局に出たときのエピソードなど聞いて笑う。それと、まだ彼が情報番組をやっていたとき、私の会にゲストで出た山咲トオルに注目し、彼を特集した番組を作りたい、と言ってきたことがある。私も大いに乗り気になって協力したのだが、運悪く彼の異動があり、当時はまだ山咲くんも名古屋のラジオ局くらいにしかレギュラーを持っていない無名タレントだったので、周囲が反対し、流れてしまった。最近、あちこちのテレビに山咲トオルが出ずっぱりなことに話が及び、つくづくアレは残念でした、という話をした。で、彼はその後また局に帰ったのだが、すぐという感じでまた電話がある。西手新九朗だが、帰ったとたん、新人紹介番組で今度山咲トオルが取り上げられることになり、そこのディレクターから、“キミが取り上げようとしたときにつぶしたのはこちらの不見識だった”とあやまられたそうな。何にせよ、めでたい。
『Memo・男の部屋』にかかる。結局、資料整理のみに終わり、体力・気力とも尽き果てた。新宿に出て、伊勢丹古書市を冷やかし、K子と待ち合わせして、てんぷらで夕食。食べながらつい、いろいろなことをフンガイして、たしなめられる。たしなめられることを期待してフンガイしているのが我ながらイヤらしい。生グラス2ハイと熱燗3合。帰ってゲラなどに手を入れ、すぐ寝る。