裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

日曜日

町内の腐敗臭

 いいえ、町内のゾンビが、寄ってたかって……(また落語ファン以外にわからないだじゃれを)。朝6時半ころ目が覚め、ナンビョーさんのHPなどに書き込み。昨日出かける前に書き込んだアッチョンブリケがAchzion−bruke(横隔膜矯正帯び)であるというのはホントか? という疑問、帰宅したらやはりデマだと、あちこちのこの話題サイトがリンクされていた。こういうときのネットというのは魔法の箱の如く便利。しかし、デマにしてもこのネタ、まことによく出来ている。意味に横隔膜矯正帯という、アヤシゲなものを持ってきているのもうまい。こないだ海拓舎のH社長から電話があったが、あそこでまた出した『ブラックジャック・ザ・カルテ2』にも取り上げて欲しいネタだったな。
http://member.nifty.ne.jp/windyfield/diary0112a.html#07

 朝食はポークビーンズにコーヒー、イチゴ。ポークビーンズはアメリカ製。さすが本場もので、アオハタのよりうまい。まあ、それにしたってまずい食い物に変わりはない。東京で初めて一人暮らしを始めて、スーパーマーケットで最初に買ったのが、このポークビーンズ。一口食ってあまりのまずさに呆れ返った。後で聞いたら、内田春菊もやはり初めての一人暮らしのときポークビーンズとパンという夕食をとって、あまりのまずさに急に心細くなって泣き出してしまったそうな。罪な食い物である。こんなまずい食い物でも食べると楽しいし、年に数度、必ず食べたくなる。何故かというと、まずいことを期待して、そのとおりまずいと、自分の期待がかなえられた満足感を味わえるからではないかと思う。エド・ウッドの映画を、いきなり観たら腹が立つが、つまらないことを期待して観にいくと、つまらなければつまらないほど大喜びできる、あの心理である。

 新聞はタリバン崩壊ネタ(ネタってこたないか)。オマル師がつかまった、という報道が昨日、横浜行きの電車の中で読んだ新聞で大々的に報道されていたが、あれはまだ未確認らしい。しかし、タリバン、あっけない敗退である。ジハドの信仰力も物量にはかなわない。第一そんなもんで勝てるなら、大平洋戦争で日本が負けたはずがないわな。日曜読書欄(なんとかいう正式名称があるらしい)、東浩紀氏の文章はサンワリくんと並ぶ読売名物になりそうな気がしてきた。ポークビーンズのようにこちらの期待を毎度かなえてくれる文章である。

 小松崎茂氏が7日に死去、86歳。ここらになってくると人間、ひょっとして死なないんではないか、と思えてくるもので、感覚から言うと“早死に”である。戦記・SFものでの功績は私などよりはるかに詳しい人がいるだろうが、カストリ雑誌にときおり挿絵を描いていたのはどれくらいの人が御存じか。晩年に描いた東京シリーズの絵も素晴らしいが、S.KOMATSUZAKI画になる夜の銀座の灯に舞う女たちの図も、また捨てがたい味わいがあったものである。それにしても、この人も量を極めた天才であった。大衆文化は量がポイントなのである。ちなみに、ネットで7日の死亡記事を検索していたら“山下耕作氏死去”との記事があって、あれ、もう亡くなっていたと思ったが、とちょっと驚いた。アタカ工業常務だってさ。同姓同名。

 朝、小野伯父から電話。昨日のこと。復活の声があるフランク永井と組んで何かやるというので、少なくとも50周年ではダメ、と一蹴。山ッ気はもう抜こうよ。母からも電話。この人は外へ向けての内輪誉めをまず、しない人で、兄の小野栄一は飼ってるネコまで人に誇る人。兄妹でよくまあここまで違うものと思う。夕方、お蔵出し本のことでなをきに電話。金子ゴジラばなし。なをきの評価“すばらしく面白いけど新しいところは何もない。ジャンルムービーとしてまともに作ればあれだけくらいにはなるに決まっているのに、どうして今までやろうとしなかったのかそっちの方が不思議”“人がたくさん死ぬのは単に「その方がおもしろい」と監督が思ったからではないか。ただ、そこで主人公がわめくのは無駄。もっとブラックにポコポコ殺せばいい”“トンネルの中でバラゴンの姿がチラリと見えるところ最高。あそこがあれば怪獣ファンとしては満足”“あと、怪獣が白眼というのはやはりイヤ”等々。某熱狂的怪獣マニアの話になり“あの人は何なんだろうね”“まあ、きちがいだろうな”“そうだよねえ”と兄弟で納得する。

 Web現代とSFマガジンコラム『猿たちの迷い道』同時進行で書き進む。Web現代の方が先に完成、メールする。『裏モノ見聞録』のK子のイラスト、毎回デザイナーのNさんが凝ったアニメにしてくれているが、今回はことにすごい。開田裕治がガメラになって回転ジェットで飛び去るあたり、『大怪獣空中決戦』並のカンドーである。ぜひイラストだけでもでもご一見を。
http://kodansha.cplaza.ne.jp/karasawa/index.html
 なお、ここに取り上げている特撮瓦せんべいのマルヤスの社長(若社長?)さんは97年までフリーの助監督を務めていて、『ウルトラマンティガ』などに加わっていた人なのだそうである。なるほど、それで。

 8時、パルコの改装なったレストラン街でK子と待ち合わせるが、どこも超満員。日曜だからか暮だからか改装されたからか。仕方なく寒い中を外に出て、新楽飯店で台湾料理。腸詰、水ギョーザ、イカとセロリの炒めものなど、どれも美味々々。就中鶏手羽の煮込みと芙蓉豆腐がうまい。店員のお姉ちゃんがやたら愛想がいいというか客を客と思わないというか、K子のタヌキの毛皮のコートを“イイネ、ソレ。キット高イヨ。何十万モスルヨ”と誉めたり、紹興酒のグラスを持ってきていながら隠してからかったり、いろいろ親しげに話し掛けてくる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa