裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

1日

土曜日

12話ヘビー級チャンピオン

 そりゃあ『セブン』のあの回でしょう。朝8時起床。ずいぶん通俗なお涙の夢を見る。初老の金庫破りが下宿屋に身を隠しているが、それを追って刑事が踏み込んで来る。そのとき、下宿屋の中年のおかみが必死でそれを逃がす手助けをする。“なんでオレなんかを”と驚く金庫破りに、未亡人のおかみが恋を告白する。金庫破りは十分逃げ切れるところを自首して出、“守ってやらなくちゃあいけないもんが出来ちまったんでね”と刑事にボソッとつぶやくシーンでエンド。キャスティング、金庫破りが船戸与一、刑事が柳葉敏郎、おかみが木野花。朝食、K子に菜の花のオムレツ、私はオイルサーディンのサンドイッチ。K子、食べると少しムカつくという。胃炎が軽い胃潰瘍に進んでいるのかもしれない。開田さんの特撮同人誌に載せるコメントを書いてメールする。

 小野伯父から電話。こないだとほぼ同じ内容。落語協会の理事会がなかなか紛糾の模様だとか。……紛糾と言えば先日の新聞に青林堂が、Webのガロで著作権者全員の許可をとらぬままに古いガロをネット復刻したことに対するお詫び広告を載せていた。全国紙への謝罪広告掲載ってのは、いくらくらいかかるもんなのだろうか。

 ジョージ・ハリスン死去。58歳。ビートルズ世代ではないのだが、彼らの映画のファンだった。『ヘルプ!』のハリスンは美青年だったよなあ。彼がその映画の中で縮小されてしまい、オールヌードになるシーンは、当時の女性ファン失禁モノではな かったろうか。

 体調悪し。風邪が内にこもってグダグダしている。12時、新宿に出てロフトプラスワン。オタクテレビの収録である。楽屋で空揚げ弁当もらって食べるが、ちょっともどしそうになる。切通理作さん、氷川竜介さんなどと久しぶりに話す。壇上で並んでトークするが自分で客観的に見ても生彩なし。ただ、ネタの数々には大いに笑い、楽しむ。ロシアのオタク美女、いつきちゃんをオタクテレビで招聘しよう、という話にまでなった。いつきちゃんについては下のファンBBSを。
http://freebbs.around.ne.jp/article/i/itsukiak/index.html         本人のサイトはここ。                           http://kawaii.otaku.ru/

 4時、終わって打上げを辞退して帰宅。家でグッタリとする。ラジオをつけたらいきなりビバルディの『四季』が流れ、アッ、生まれたな、とすぐわかる。皇室のテーマ曲だものなあ。日本国民ってこんなに天皇一家を敬愛していたのですか、と意外に思うほどのお誕生祝いムード一色。私は“開かれた皇室”反対派なので、あまり喜ばない。

 休んでいるうちにやや、体力は回復してくる。安達Oさんの日記、ハリウッドでもう金はいらないと考える人がいると思うところが、裏者の私とは正反対の立ち位置だろう。イーストウッドは来日時に“俳優という仕事の魅力は?”と訊かれて、即座に“グッドペイ”と答えた人物なのだが。しかしまあ、このポイントでヤリトリをしているとゴジラから徹底的に離れてしまうし、(以下、35文字削除させていただきます)。ただ、私などから見ると、よくひとの作品をこんなに褒められるよなあ、と、まるで異次元の生物を見る思いなのだ。

 8時、夕食。イワシの塩焼き、豆腐と大根のあっさり煮、アナゴのわっぱ飯。K子にわっぱ飯好評。ただし、ある程度食うとまだ胸が苦しくなるとのことで、すぐ階下に降りて寝る。私はそれからDVDで新東宝映画『大東亜戦争と国際裁判』見る。嵐寛寿郎の東条英機、なかなかのなりきりぶり。丹波哲郎も天知茂もワンシーンのみの出演だが、戦争肯定論を唱える弁護人役の沼田曜一が出演シーンは短いもののやはり怪演。もう少し日本映画史において語られるべき怪優と言えるだろう。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa