裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

土曜日

ピカールの碁

 バチスカーフの中で囲碁とは風流な。朝7時15分起床。朝食、シイタケとコンビーフのトーストサンド。牛乳切レ、ブラックでコーヒー飲む。花菜でもらったミカン二ケ、デザート。居間のソファが無くなり、現状はそれまでソファの上に置かれていた(つまりソファの役はほとんど果されていなかったわけだが)モノどもが床上に散乱している。これを片付け、年始までにスッキリさせなくては。猫、昨日K子が連れていった獣医さんの話だと、肉を食べたがるのは、冬で日光照射量が少なくなったのでビタミンを求めているからだ、とのこと。猫はビタミンを肉でとっているのだそう である。ふーん。でも、今日はサカナ。

 光文社『FLASH!』読む。エロ写真ポーズ集、熱海に行っていてチェックが実は間に合わなかったので心配していたのだが、思ったよりまとまっていて、写真の選択もよく、読みごたえのある特集ページになっている。前のハリー・ポッター登場人物マンガキャラ見立ても、配給会社からまで絶賛だったそうだし、要は私よりも、編集のYくんの企画とまとめたライターさんの腕がよろしいのだろう。

 ゆうべしそびれたSFマガジン小説のゲラチェック、やってFAX。これで一番大きな年末の肩の荷を降ろした、という感じ。はればれとする。トハイエ、あと年内の仕事として連載モノだけでも、Web現代コラム2本、北海道新聞書評1本、就職情報誌コラム1本。井の頭こうすけ氏から電話、無事図版資料落手の模様。立体ヌードがオモシロイと喜んでいる。昼メシ中にもうひと仕事、と、と学会年刊の原稿ゲラをチェック。2時から海拓舎Fくんと打ち合わせの予定なりしも、Fくん風邪との電話で、来週に延ばす。

 1時に新宿へ出て、たまっている雑用をすます。その前に参宮橋の道楽でノリラーメン。紀伊国屋で道新用の書評本を揃え、伊勢丹で朝食の材料など。さらに、マイシティで来年の予定表を買う。大荷物抱えて帰宅。公園通りパルコのクリスマス装飾、例年バカ派手なものだったのだが、今年は言われないと気がつかない程のもの。不況につき縮小か、あるいはテロ事件などに鑑み自粛か。公園通りと言えば、渋谷区役所前駐車場進入路増設工事現場の前に、この工事に反対して自殺した“公園通りの生活と環境を守る会”の代表M氏の“遺書”が反対派によって掲示されている。自殺時にM氏は74歳であり、“残り数年の命と魂を凝縮して区長にぶつける”と、まるで特攻隊のように悲壮な文面が連ねてある。正直言って、ここを通るたびに、こういうものを掲示するというのはどうかなあ、と思うのである。抗議運動の正当性の問題はさておいて、人の死をこういう運動に利用するという、そのやり方がすでに感情の産物であろう。自殺したM氏の心情にしたって、その底に“当てつけ”という意志があったことは決して否定できまい。某掲示板で、“一種の自殺テロ”と評されていたが、まさにそういう感じがする。人間の死という厳粛な事実をタテに、異論を封じてしまおうという行動は、民主主義とは相反するものだと思うが。

 もうひとつ、抗議運動(?)がらみネタで、私のマンションから坂を下ったところの、東急ハンズ正面入口前・通称“たこやき坂”だが、すでにたこやき屋は総べて撤去されて、坂の下のところ一帯が、ビル建設のために取り壊されている最中である。坂のすぐ上の、以前東南アジア料理屋があってつぶれ、カレー屋になってつぶれ(つぶれたとき“見事に失敗しました”というヤケクソ的張紙が貼ってあった)、100円ショップになってつぶれと、何やってもつぶれていたスペースと、さらにその隣の小さな雑居ビルまでを含めたスペースが、まとめて取り壊されつつある。この雑居ビル、道路に面した部屋に以前はアジア系小物屋が入っていたがすぐ撤退し、その後空き部屋になっていた。新しいアクセサリー屋が入って店内を改装していたな、と思ったら二日か三日で撤去されたこともあって、あれは不法入居だったのだろうか。それはともかく、この雑居ビルの一階奥に、“T・M子会計事務所”という看板を掲げた事務所が入居しており、この近辺では古顔であった。このT・M子女史のみが、かたくなにこのビルを引き払わないでいる。すでにビルの取り壊しはほぼ終了しているにもかかわらず、その事務所の一角のみ、ケーキの食べ残しの一片のように取り残されている。夜になると灯りがついているところを見ると、ちゃんと人が住んでいるんだろう。これも迷惑な話だろうが、しかし、こっちの抵抗は何か滑稽で、見ていると笑い出したくなってくる。

 3時半、芝崎くん来。と学会運営についての報告を受ける。これまで東大の教室と機材を研究会として無料で使用していたのが、前々回から有料の会議室を使用するようになり(これまで会場をとってくれていた東大講師の会員のD氏が他校へ栄転したため)急速に、コミケでの売り上げなどによる会のプール金が減っていっている状況を聞き、やや愕然。と学会の本は売れて著者グループは儲かっているが、会に金がないのである。会費制の導入、もしくは主要会員からのカンパなど、何か対策を講じないといかん。しばらく芝崎くんとその話をする。

 いろんなことが頭の中でウズ巻いて、ここ数日の疲れがドッと出る。ひさしぶりに街へ出て歩き回ったこともあり。芝崎くん帰ったあと、台所に座っていたらカックリと眠気に襲われて首が垂れた。どうせ寝るなら、と新宿へ出て、マッサージ受ける。左足のつけ根あたりが凝りで腫れていて、揉まれると痛い。他に客がおらず、たっぷり揉んでくれたはいいが、K子との待ち合わせの時間ギリギリになり、あわてて渋谷へ取って返し、パルコ7階でしゃぶしゃぶの紗舞里。スカした店になった。生2ハイと冷酒一本。それほど飲まなかったが何か酔いがヘンに回る。帰宅、風邪薬のんです ぐ寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa