29日
月曜日
畳の上のシーレーン
自衛隊の海上訓練なんて、所詮……。朝7時半起床。天気晴朗(昼から少し曇ってきたが)、体力回復。本当の疲れと気圧の為のバテとは、翌日の体調で区別がつく。朝食(シーフードサンドと紅玉リンゴ)とった後、すぐ週刊読書人マンガ評原稿一本書き上げ、それからノーザンクロスの単行本イラスト指示6本片付けてK子に渡す。凄い馬力である。ノーザンのはこれで後、前書のみで書きあがり。そうすると出版待ちのものが三冊となる。この調子で来年はサクサク仕事をすすめたいものだ。
K子にひさしぶりに弁当を作る。用意がなにもなかったので、冷凍してあった豚肉と、チンゲンサイを炒めたものをオカズにする。NHKのYくんから電話。彼もこないだ幸永行ってくれたとか。よしよし。以前彼がディレクターやっていた『ウィークエンドジョイ』のナレーターの櫻井孝宏氏、いまや新作・009の島村丈ではないですか、というような話もする。櫻井氏はオタクアミーゴスのファンで、ロフトに来てくれたこともあるのである。
道新からチェック稿FAX。やはり北海道の読者には『富士急ハイランド』とただ言っても通じないらしく、(山梨県)と注がついていた。昼はごはんが弁当用に炊けているので、フリカケででも食べようと思っていたが、つい忘れて新宿に出て、西口でザルパーコーなど食べてしまう。2時、談話室滝沢でなをきと打ち合わせ。滝沢のお姉ちゃんのあのバカ丁寧な挨拶がない。評判悪いのでやめたか、それとも今回だけか。編集プロダクション・マイストリートT氏と。お蔵出しのためにとなをきが掘り出してきた、昔『少年キャプテン』でやってた映画評コーナー、記憶では数カ月くらいだったのが、二年もやっていた。さて、文章の方が残っているかだが。ワープロのフロッピーに残っていたとして、それが読める状態であるかどうかだ。2月中刊行とのこと。早いんだか遅いんだか、時間感覚がいまどうにかなっちゃっているんでよくわからぬ。
帰宅した頃になって、天気が次第にあやしくなってきて、それにつれて元気も次第にあやしくなってくる。将来もし大儲けして仕事部屋を作るなら完全密閉で気圧を調節出来る部屋にしたいものである。SFマガジン新連載第一回書き出す。書いてて自分で面白くて仕方ない(こういうときはたいてい、読者の方はあまり面白がらないものなのだが)。ただし筆はどんどん遅くなり、ついに10枚のところ6枚で挫折。今日は竜頭蛇尾であった。
7時半、渋谷駅銀座線乗り場でK子と待ち合わせ、銀座へ出る。能登在住のこうでんさんに教わった、居酒屋『能登だらぼち』へ行ってみよう、ということで。外堀通りを新橋の方に歩き、ヤナセビル向かいの小さなお店。ここは能登の料理屋や民宿、漁業農業など二十六種の異業種が集まって作った、東京での能登アンテナショップ。カウンターに座り、さっそく『竹葉』をやりつつ、甘エビとはばのり(岩ノリみたいなもの)を頼む。甘エビは青い卵がどっさりついており、これが珍味。はばのりも、ワイルドな風味と食感で結構。あと、いしりの貝焼きと能登牛の香草サラダというのを頼んだ。板前さんももちろん能登の人で、K子が“さんなみ”って知ってますか、と言うと、“ウチの株主のひとりです”とのこと。能登料理について話がやたらはずむ。ここのいしりはさんなみのと違って、イワシで作る(さんなみのはイカ)。貝焼き(貝が入っているわけではなく、貝の殻で煮る小鍋立て。ここでは普通の煮物として出る)にはツト豆腐という固めの豆腐が入っていて、味が染みておいしい。能登料理の、やや塩加減の濃い味を、竹葉特有の酸味がさわやかに洗い流す。なるほど、能登料理に竹葉があう理由はソレか、と合点がいく。あんまりウマイウマイと飲んでいたら、これを試してみますか、と、竹葉のあらばしりを一杯、御馳走してくれた。麹の香りが強い、うまみの濃い酒である。これをやはりサービスしてくれたイカの麹漬けと一緒にやると、もう何もいらん、という感じになる。
二人、少しすごし過ぎた感じで帰る。さんなみはすぐその場で寝られるからいいよなあ、と、これだけ満足してさらに不満をもらすところがどうしようもない。K子はコーヒーに入れると言って、珠州の塩まで買っていた。能登と言えばやっぱり×××ですけど、あまり大っぴらには出来ませんよねえ、と言ったら、いえ、今年からOKになりました、とのこと。ホントか? 今度、入ったらすぐ連絡ください、と言っておく。ゴキゲンにて帰宅、メールチェックしたら『世界の猟奇ショー』と『脳天気教養図鑑』増刷の知らせあり。それぞれもう4刷、5刷めなので部数は少ないが、それでもいまだ増刷がかかるのは結構なこと。『大猟奇』も近々増刷とやら。新刊の話もくる。さらにゴキゲンになって、体調悪いのも忘れて寝る。