裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

金曜日

「ふっと湧く」がいい

 熟考より直感。朝7時半起床。朝食、イチジクとヨーグルト。K子は今日は台所に起きてきて、パンを齧り、早々と病院(耳鼻科)に行く。風呂入り、サテ、今日こそはアスペクトをやってしまわねばならぬ、と思いつつ、午前中はだらだらしてしまい何も進まず。ロシア機撃墜で世上緊迫かと思ったが、ウクライナのミサイルというのはホントにトンデモないところへ飛んでいくらしいので、誤爆の可能性もまだ高いと専門家筋はまだ様子見の感じ。それにしても報復反対論のサイトはこのところやけにヒステリックな感情論になってきたところが多いようだ。逆に賛成派のところはおしなべて急速にシラケ気味。ミサイル撃ちまくり空爆しまくりの湾岸戦争に比べて、今回は地味でつまらなくなりそうだ、ということがわかってきたからだろう。平和フェチも戦争フェチも、共に笑えることである。

 電話、鶴岡から。芸論になる。世の中には足し算芸と引き算芸があり、引き算芸には引き算芸の売り方がある、というような話をする。足し算芸と引き算芸の人間が互いにその違いをわきまえずカミあおうとすると互いのいいところを打ち消し合って悲惨なことになるという話。足し算芸の中にも、ひっきりなしにゼロばかり足しているやつも多いねえ、と笑う。あと、伊藤剛くんのTINAMIXに載っていた写真の服装センスが昔と変わっていなくて懐かしかった、というような話。

 案外早く病院から帰ったK子から、昼御飯一緒に食べようとの電話。東武ホテルで待ち合わせ、東急ハンズに明日の長野での花火見物用のヘルメット(なにしろ至近に火花がふりそそぐ)を購入。火消し頭巾がないかと思ったがそれはなし。それからまだ時間あったので、新宿にタクシー飛ばして雑用すませて、とって返せばと思っていたのだが、なんとタクシー乗り場長蛇の列。山手線が事故で止まっているためであるらしい。15分遅刻。昼は東武ホテル地下の中華。ここは客席数に比べいつも店員が少なすぎて、対応が遅くてイラつく。食って買い物に行くというK子と別れ、銀行へ寄る。最近出銭ばかりでお勝手元がおぼつかないと思っていたら、増刷分印税などがあり、息だけはなんとかつけていた。

 帰宅して、気圧が乱れてきたのと食事して血が胃に集まりすぎたのとでしばらく横になる。今日は後楽園もあり、5時半には家を出なくてはならないし、アスペクト無理か、と思ったのだが、気力をふりしぼり、麻黄附子細辛湯とアリナミンのみ、奮起して執筆にかかる。5時までに、コラムとあとがき、あわせて10枚、書き上げる。フーッという感じ。

 K子は、札幌から送られた漢方薬が効果を発揮しているらしく、やや調子よし。会社組織にするための打ち合わせを、税理士さんたちとやっている。NHKのYくんが迎えにきてくれたので、便乗して私は後楽園に。植木不等式さんも会社が終わってから駆け付けるのでギリギリになるか、ということだったが、無事入って、本日は奇食トーク。金曜で客の入りはやはり土日よりウスいが、壇上にオケラ、カイコ、ハチノコ、アザラシなどを置いて、通りがかりのアベックさんたちにもすすめたら、案外みんな好奇心を発揮して、寄ってきちゃつまんでいく。二回もきてつまんでいた女の子もいた。オケラが案外人気である。トークもまったりと進んで、まるで緊張しない、いい感じ。ウケも非常によく、気持いいステージになった。

 観客で来ていた世界文化社のDさん、それとYくん、植木さんと、グリーン食堂へ行き、犬を食う。奇食トークの打上げにふさわしい。K子も、やや調子いいんで参加する。植木さんは社内で異動があり、非常におかたい仕事の部署に回され、余技で書いていたコラムエッセイなどもやめなくてはならなくなったとか。講談社のIくんもそうだが、日本の企業というのは人を見て部署を決めるのでなく、部署に人を合わせようとする。大平洋戦争で山中貞雄を前線に送り出して殺した時から、まったくこの意識は変わってないな。帰宅、11時半就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa