裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

水曜日

パイポパイポ、パイポのシュレジンガー

 長久命の猫。朝、やけに暗い夢を見る。軍隊のようなところで、親友だった男に死刑を言い渡す役を与えられるというもの。一ぺん目を覚ましてその夢のことを考え、また眠ったら、その夢の続きを見た。クラス会(なぜか学校なのだ)で、私がその役を勤めたことが糾弾される。カフカの小説のような感じ。8時起床、朝食はハムカツサンド。ハムカツというものも一年に一度は食べたくなるB級食。

 朝刊の人生相談欄に、70代になっても毎日朝、勃起するのだが、家族はみんな、それを異常だという。ホントに私は異常でしょうか、という相談。大笑いする。イヤ本人は真剣なんだろうが。毎日やりたくなって困るというならともかく、勃つくらいいいんじゃねえの。

 昨日、評論家Tの離婚のことを書いたが、さらに友人のUの離婚も知らされる(以前からウワサでは聞いていたが、くわしい次第を聞いた)。結婚式に出てお祝いの言葉まで述べた夫婦が別れるというのは青木クリス以来である。ちょっと考え込んだ。確かにUのところは性格も考え方も水と油の二人だったが、そこが面白かったカップルであったのに。K子に“最近、知り合いで別れるの多いよなあ”と言ったら、“そういう年齢なのよ。あと10年したら、死ぬのが多くなるわよ”とのこと。

『トンデモ本の世界R』、またまた重刷。4刷である。こないだ3刷になったばかりで、早い々々。願わくはもう少し重刷部数を増やしてくれれば……というところなのだが、ゼイタクを言える状況じゃないか。こないだのお茶屋遊びの原稿400字詰め4枚、書いて送る。掃除のおばさんが来て、栗オコワを持ってきてくれたので、それとジャガイモのミソ汁で昼飯をすます。外はずっと雨。

 こういう天気ではいつものことで、食後体調が極めて悪くなり、起きていられずしばらく横になる。南北全集など読む。アスペクトから赤入れの催促。ノーザンクロスの赤入れもせねばならず、海拓舎もやらねばならず、世界文化社の章立ても書かねばならず、光文社に原稿フロッピーも送らねばならず……と考えると寝てもいられなくなる。青林工藝舎から『アリエス』(『アックス』増刊)が届く。目次が昔の雑誌風の両側折り込み式になっている凝り様。マンガでは河井克夫が水木しげるの貸本マンガのパロディ風作品で大笑い。蜂巣さん、睦月さんのエッセイもあり。私のはいつもの脳天気エッセイで他の人たちの耽美の中で浮いているが、まあ図版と引用資料の数をかなり揃えたことで、読めるものにはなっているんじゃないかと。

 川井正貴(K子監督『世界の中心でアイを叫んだけだもの』のゲンドウ役)くんにずいぶん前に頼まれた本の郵送もまだだったことに気がつき、荷造りして郵便局へ行く。ついでに新宿へ出て、健康茶など買う。地下街を歩いていたら、異臭がするのでふと見ると、浮浪者が通路でどうどうとウンコしていた。わー、嫌なもの見てしまった、と顔をそむけるが、ウンコというのはこちらのイメージ以上に臭いもので、モロに匂ってくる。顔をしかめながらなんとかニオイの範囲外まで行くと、向こうからスカした若いカップルが腕を組みながら歩いてくる。コイツらもあのニオイを嗅ぐのだな、と思うと、浮浪者よくやった、という気になる。

 帰宅、居間の雑物の整理。7時、テレビ朝日のスタッフ来宅、大人買いブームについて解説セヨというので三十分ほどしゃべる。使われるのは一分か三十秒か。こちらもこういう取材はもう慣れっこなので異常にサクサク進む。なんと、トッパライで出演料が出た。いままでは無料出演か、粗品くらい。某T×Sのときなど、二時間近くあれやこれやとしゃべらせた上、コメント料出るんですか、と訊くと“普通こういうときは出ないんですがねえ、まあ上に言ってみましょう”などと不承不承に言ってタオル一本置いていったきり、結局振り込まれないままだったこともある。もちろんお涙金だが、それでも感心。

 8時45分、四谷まさ吉。井上デザイン事務所スタッフ、カメラマンの伊奈さんなどとメシ。到着時にはすでにK子たち、イワシシソ揚げなど食べ終わっていたので、私は焼鳥一本牛すじ煮一本、それにウリキムチなどつまんだだけ。あとはモツ鍋というシンプルなもの。井上デザインに新しくバイトで来ている女性、ふだんは劇団『ヘロヘロQ』なるところで役者さんをしているとか。“やっぱり劇団名を言うのは恥ずかしいです”とのこと。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa