裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

月曜日

アッシッジ、アッシッジ

 聖フランチェスコ・ゴー。朝7時半起床。朝食、豆の冷スープ、トースト一切れ。果物はポンカン。朝から電話でいろいろと予定が入る。日記付け、入浴などいつもの如し。原稿、遅れに遅れている『ワイアード・ムービーズ・ア・ゴー!ゴー!』の、アニメについてのもの。一度原稿が消えているので、書き出すのがオックウになって いた。結局、まったく異なる内容のものとなる。

 書きながらいろいろ資料を調べたりする。これが実に面白い。いまの私のように、興味のおもむくまま八方に手をのばすやり方をしていなかったら、フライシャーやアヴェリーのことばかり調べて書いていただろう、と思う。しかしながら、未公開作品の細かい年代のつけあわせをするといった、データマニア的な作業は、やはり私の血にはあわないなあと、そういう人の作っている資料を読みながらつくづく感じる。ついでに言うと、今回の作業で、やはり私はチャック・ジョーンズよりアヴェリーが、アヴェリーよりフライシャーが好みだということを発見。

 原稿10枚、結局4時までかかる。その合間に電話いろいろ。コンテンツ・ファンド第一回の出場クリエイターである岩井天志さんから電話。その折の出品作品である『玉蟲少年』が完成し、中野武蔵野ホールで6月に上映されることが決定したので、その上映の際のトークイベントにゲストで出てほしいとの依頼。もちろん、よろこんで、と承諾する。初日の16日になりそう。『新世紀パペットアニメーション』のタイトルで、この岩井さんのものを含め、4作家の7作品が上映される。正式にチラシなどが完成し次第、またイベント欄に広告しますので。……それにしても、いまさらになってアヴェリー論を書かされてみたり、パペットアニメについて語ってくれと頼まれたり。アニドウ時代の自分とは縁を切っているつもりだったのに、人間、なかな か過去を捨てることはできないということか。

 その他、BSによるFMラジオという、なんだかよくわからないところからの出演依頼。エンターブレインがらみ。5月2日に出演とのこと。あと、オタアミのパティオで、5月末にBSでオタアミの公演収録とのこと。やはりこの時期はいろいろと忙しいこってす。などと思っているうちにまた電話。編集部からかと思ったら、なんと旧知の元・ヤクザの親分、Iさんから。

 このIさん、私の『ぶんかノ花園』の中のシャブばなしの元ネタ提供者。拘置所にいた時期にムショだより記事を某雑誌に投稿して掲載され、そのイラストを女房が担当した。それが大変気に入った、ということで連絡があり、小菅の拘置所まで面 会に行き、それ以来、K子のことを親分々々と呼んでいる人である。刑期が定まり、四国の刑務所に収監されたが、K子は奥さんと一緒に、妹という名目で面会に行ったりもしていた。そのときは、刑期6年というのはかなりな先だなあ、という感じだったけれど、たって見れば6年などというのはあっという間なのだなあ。入っていた人には長いだろうけどね。現在は茨城在住とのことなので、一度連休中にでも会ってメシを食うことにする。このIさん、ライター志望ということなので、興味がある出版社は乞ウ連絡。話の濃さは私が保証します。

 なんやかやで昼飯は食い損なう。まあ、ダイエットと思ってガマンする。青山の紀ノ国屋で買い物。おダンゴを買って、虫やしないとする。古書せどり屋のUさんから電話。探偵小説黄金期の作家たちの、単行本未収録短編をかなりの量見つけたということ。とりあえず、ミステリ関係の出版をしているところの編集者を数人、紹介しておく。

 それからWeb現代、と思ったが、『男の部屋』の方が急ぐ、とのK子の電話で、急遽そちらの方にかかる。お題は“リゾート”。ここのエッセイの調子(語り口が売りの非マニアック風、実はマニアックというやつ)を今後は主体にしていきたい。これが8枚半強、案外楽しく書ける。もっとも、前半と後半で調子が変わってしまった ので、一晩寝かせて、メールは明日のこととする。

 夕刊に、あすなひろし氏死去の報。60歳。いわゆる“バタくさい”作風と呼ばれる作家さんの代表で、私の中では『COM』というと、誰よりさきにこの人の絵が頭に浮かぶ。それくらい、一度見たら忘れられない個性的かつ美しい絵柄の人だった。 肺がんで、闘病生活をしているとは聞いていたが。

 9時、夕食。タチウオのミソ焼き、ラーメンサラダ、油揚の焼いたの。LDで、ウルトラマンの、ガバドンとブルトンの回をK子に見せる。『男前』に名前を出している関係上。ガバドンで、金子吉延たちを追い回すヒゲのおじさん、エキセンな演技が子供のころから好きだったが、原保美であったことを改めて知って驚く。怪奇大作戦の的矢所長の落ち着いたキャラクターとはまるで別人じゃないの。……それにしてもこの時代のウルトラの脚本って、これだけの内容を正味22分につめこむという、ほとんどアクロバットみたいなものだったのだなあ、と改めて思う。その、話のツナギの思い切りのよさにはホトホト感心する。インパクトの強いシーンをどんどんつないで行けば、見ている方がちゃんと、頭でストーリィを構成してくれるのだ。だから、これだけの時間であれだけの“おハナシ”が語れるのだし、また、その番組を自分の分身のようにして入れ込んでくれるファンも出てくるのだ。今の脚本家、演出家、編集者はそこらへんでバッと視聴者にゲタを預けてしまう度量がない。『ミカヅキ』の全スタッフは、もう一度改めてこの時代のテレビを見直すべきである。……まあ、とはいえ、ついでに見た『科特隊宇宙へ』など、冒頭を凝りすぎて、もうラストは時間 がなくなって、凄まじく慌ただしい終わり方だった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa