裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

日曜日

極右の大冒険

 アカーっを見たらばカッカッカ。早朝、5時半に目が覚める。今日は二度寝が出来た。それでも熟睡とかとはほど遠い。左足もちょっとむくみ気味。7時45分ころ朝食、豆のスープとホタテスパ。日曜の楽しみは読売の上田紀行センセイの文章を読むことであるが、先週までのはしゃぎぶりとは打って変わったまっとうな書評。これでオチをつけたつもりだろうか。文体の達人であることはわかったが、文章はポップでも、論旨の流れや、評価のポイントがやはりイカニモな学者さんであるところが惜しい。規制の価値観ではない、もっとユニークな視点から本を取り上げてくれる人、いないかなあ。

 朝、昨日の週刊文春の書評原稿に目を通し、やっぱり書き直すことにする。今度は三枚半に2時間近くかかった。まあ、なんとかまとまりのあるものが書けたと思う。鶴岡から電話。春先で情緒不安定らしい。元から不安定な奴なんだから、自乗で安定しやしないかと思うんだが。K子に弁当、メンチカツ丼。母から電話。お前のように便通がよくてダイエットできないのは水代謝が悪いのだから、五苓散をのみなさいと勧められる。足のむくみもそれが原因か。

 続いて原稿、週刊アスキー。例によって図版用ブツ(お題)が先で、そこに話を考えてくっつける。これをずっと続けているとボケないのではあるまいか。四枚半、三時間半で。『宣伝会議』の対談、こちらが対談相手に三遊亭新潟を選んだだけで連絡もとらず放っぽっていたのを、きちんと連絡つけてOKとってくれ、おまけにこちらの都合で対談時間を変更したいと言ったのまで、了承してくれる。忝ない。

 と学会の藤倉珊氏から電話。ひさしぶりのことで、長電話になる。ヨモヤマ話、いろいろ。古本集めの話、トンデモ本の話、トンデモ科学者の話、日本の通信技術の発展の裏でのゴタゴタばなしから、仮面ライダーの話まで。藤倉さん曰く、いまや仮面ライダーシリーズは、子供のものでもヒーローものオタクのものでもなくなって、やおいOBのお母さんたち向けの番組として作られている。これがいかに日本特撮番組史上画期的なことか、と。ウルトラマンもそうだよなあ。

 二時間くらい電話していたか、文春からの原稿確認電話で中断。『ハチャハチャ青春記』評の行数チェック。編集のSさんと、しばらくヨコジュンばなし。この本の一番オモシロイ紹介のしかたは、中のハチャハチャなエピソードのひとつを選んでまるまる引用することなのだが、それでは書評原稿にならぬ。エピソード紹介でなく、この本の魅力を語るというのは、なかなか苦労したことであった。それにしても、高度経済成長時代に青春時代を送ったものの、これは特権なのだろうが、ここまで既成の権威というものを相対化すること、コトバを変えれば“まったく無意味なことにここまで情熱をそそぐ”ことが出来るというのは本当にうらやましい。われわれ以降の世代だと、同じようなバカ騒ぎをしても、どこかに屈折が入り込む。

 そう言えば、この本を読んで知ったのだが、イラストレーターの畑田国男さんは亡くなっていたのか(調べてみたら平成8年3月死去、51才)。慶応ボーイらしい多趣味人間で、『日本三大協会(日本三大○○、というものを収集する)』などという酔狂なものを作ってみたり、兄弟姉妹の人間学を研究して『妹の日』を制定する運動を起こしてみたり、この人もまた横田さんと同世代の、既成権威相対化型人間の代表であった。

 わたしや藤倉珊、それにとり・みきなどは、横田さんの世代のSF業界人の影響をモロにかぶった人間である。藤倉さんがトンデモ本というジャンルを創り出したり、私が脳天気本という概念を提唱したり、とり・みきがギャグマンガをその発想の段階から解体・再構築してみたりしたのも、いや、そもそもオタクという、価値のないものに自分勝手に価値をつけて大騒ぎする人種が大量発生したのも、横田さん世代の価値相対化ムーブメントのダイレクトな影響なのかもしれない。横田さんと名コンビの鏡明氏がSFクズ発言で大論争を巻き起こしたのも、横田さんとは別の立場での、権威相対化発言なのだろう。97年のあの論争ももはや昔ばなしだが、鏡氏の発言が私など圏外の者には最もわかりやすかった。反論してた人々、なかんずく巽孝之氏の言など、私にも、その回りの連中にも、チンプンカンプンだったものな。あの論争時、もっとも笑ったのは、大森望氏の日記にあった、山野浩一氏と高橋良平氏(鏡氏とのクズ発言対談の相手)の会話。
山野「良平クン、最近ずいぶん活躍してるそうじゃない」
高橋「いやいやそんなことは……」
山野「野阿梓がすごく怒ってたよ、うん。いやしかし、他人を怒らせるようになって一人前だからね」

 肩はそんなに張らないが、長時間座り詰めで腰が痛くなり、マッサージへ。リラクゼーション音楽ということか、越天楽が流れていて、結婚式場でマッサージされているような気分である。先生、例によって脳を使った分だけ体を動かさなくてはならないとか、一時間働いたら一時間休息せよとか、無理なことを言う。そんなことが出来てれば、誰もマッサージになど通いはせぬ。

 9時、家でK子と夕食。甘鯛と豆腐の鍋、ジンギスカン風モヤシ炒め。OAQの人から送ってもらった焼酎『魔王』を飲む。LDで『わんぱく王子の大蛇退治』、アメノウズメの舞踏シーンを何度も繰り替えして見る。現在のアニメ文法からまったくはずれたエクストラヴァガンザ。K子はつまらないと言って寝てしまったが、しばし見入って恍惚となる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa