11日
水曜日
アシスタンとイゾルデ
姫、共にスクリーントーンを貼りましょう。朝、7時までぐっすり。ううむ、熱燗の力偉大なるかな。薬よりよく効く。ひさしぶりにさわやかに朝食、アワビタケとカブのコンソメ煮。長野で買ってきた二十世紀はちょっと柔らかめである。牛乳は極めて濃厚で美味。メール数通。たまっていた名刺を少し整理する。
出かけたK子から電話。今日からフィンランド語の勉強を始めることにしたそうである。これは、来年はフィンランド旅行をせねば収まるまい。午前中、モノマガジン原稿五枚強。すぐメール。『通販生活』誌から昨日の晩、今年最初の来年度新年号原稿依頼が来た。もう年末なんだなあ。昼飯はゆうべの鍋の残りに冷飯をぶち込んで、塩とトンガラシで味つけをして掻き込む。あまった冷飯を全部片付けたら、腹が張る張る。
食後に寝転がって小泉武夫『味覚人飛行物体』(時事通信社)を読む。私はこの人の悪食エッセイを中学生くらいの時に雑誌で読んで以来のファンである。まず、学者の文章としては第一等の読みやすさを誇る人だろう。最近は学者も小説家のような文章を書くようになったが、この人の文章はあきらかに理系の人らしく論旨明快を極めて、難しい言葉をひとつも用いず、それでいてレトリックが豊富で、スイスイ頭に入る。例えば、この人の文章に出てくる“だから”という接続詞は、ホントウに“だか ら”であり、その役をきちんと果たしている“だから”である。われわれ駄文書きの 用いる“だから”とは格が違うのである。戦前にはこういう名文を書く学者が多かったものだが。おまけに、国立民族博物館研究員として長年世界じゅうを回ってきているから、ネタは無尽蔵で、面白いったらない。教科書に採用したらいいと思うくらいだ。イラストを大抵、佐々木侃司が担当しており、これがまた名コンビ。
ポーランドでガイドをやってくれた堀越さんのサイトから、旅行部分の日記を掲載して、リンクをはらせてくれるよう、依頼が来ていた。OKと返事をしておいたら、今日、掲載しましたとメールが来る。内容はともかく、“ナポリハポリ訊ねる”とか“ジョコンドガエル”などというタイトル、初めてみた人はなんじゃこりゃ、ととま どうのではあるまいか。興味ある方は
http://republika.pl/inu/ems/emskanso/emskarasawa-sama.htm
まで。
SFマガジン用の資料検索に残りの半日つぶす。書き出しは明日。六本木に出て、銀行に寄り、買い物。帰宅後、メールにて打ち合わせ日取り設定二件。7時半、新宿に出る。大ガード近くに、中国食料品の超級市場(スーパーマーケットの中国語訳)が出来ているので、立ち寄ってみる。古くて薄汚れたビルの中にある店だが店内は明るく清潔で、鹹水鴨や血餅(豚の血を固めてプディング状にしたもの。鍋に入れて食べると美味)、さまざまな種類のピータンなどがある。タウナギや草魚などを水槽で生きたまま売ってもいる。カンヅメやお菓子、酒も豊富。なぜだかこういう場所に来 るとウキウキしてくる。金華ハムを買う。
そこを出て、中古ビデオショップ“アラジン”へ。買うつもりもなかったが、ふと気がつくと一万円ばかりが消えている。K子と待合せ、前に一度行った中華料理『紅房子』へ。入口で5%の割引券くれた。たぶん、さっきのスーパーなどで仕入れしているんだろうな、と思いつつ鹹水鴨、小包篭、鶏と栗の煮物など。青島ビール、それと老酒をお燗で二合。K子にフィンランド語教室の話を聞く。歯科学会でしょっちゅうかの地を訪れる人が習いに来ているとか。フィンランドというのはキシリトールの代表的生産国なんだそうだ(キシリトールって何から生産するんだっけ?)。先生曰く“フィンランド人はあまり働きません。寒いから。しょっちゅうサウナ入ってばかりいます”。フィンランドのサウナは日本のそれなど比べものにならぬくらい快適な代物なのだそうな。帰って眠くて、11時にはもう寝る。寝る前にキシリトールを調べたら、白樺の樹皮から採る、とのこと。なるほど、北欧っぽい。他にもトウモロコシの芯などから採れるそうだが、これでは商品としてのウリがな。