裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

土曜日

ヘルスケア蛙飛び込む水の音

 俳聖、健康にはお気をつけて。朝5時半まで寝られる。7時、朝食。ポークビーンズとパン、果物。ポークビーンズというもの、一年か二年に一回くらい、無性に食べたくなって、食べると後悔して、あと一年か二年は思い出すだけで胸が悪くなるものなり。鳥取の震災、世間の同情が極めて薄いようで気の毒。ニュースショーでもユーゴの政変のことがトップだ。昨日の日記の米子空港のこと、全くの間違いで、私が子供の頃からありますぞ、と鳥取出身のテリー・天野氏からメールが来る。やはりタクシー運転手なんぞのウワサ話は信用ならないか(笑)。

 バテは取れた代わりに、妙に肩が凝る。目か。昨日チャイナハウスで、漢方素材を見ていて、蟻の乾燥させたものに目をつけていたら、マスターが、“これ、体にいいんだよー!”と、少しつまませてくれた。蟻酸の味か、ほのかに酸っぱい。酒に漬けると、どんな体調不良も回復するという。一度蟻酒、試してみるか。

 ユニークな人材が櫛の歯の欠けたようにいなくなって、いささか寂しくなった感のあるFMISTYであるが、最近また、バトルになりそうな火の気があちこちに見えてワクワクする。ずっと、発言がほとんどなかった超心理研究室で、COLTさんが超能力完全肯定発言をして、こないだの『たけしのTVタックル』に出たスプーン曲げの人をホンモノと断じたことに反論した人に対し、温厚な氏らしくもなく“あなたの目と耳は節穴ですね”“あなたとの超能力論争はしたくありません。あまりにも、不勉強で、非論理、感度がわるい人と話していても疲れるだけです”などと激語を吐いて、発言数も増え、盛り上がっている。一方、おなじみのUFO会議室では、例の宇宙連合のKONY氏がと学会に憤懣をぶちまけて、ゴロツキと同じ、と断じ、興奮のあまりか、“それなりにお覚悟下さいと思います”などと日本語もヘンになっている。さすがに回りの人が“また野次馬(私みたいなの)が寄ってきますよ”とたしなめるが、KONY氏、聞く耳持たず。心底、怒っているらしい。ベテランらしく、なかなかいい味。

 昼はレトルトのライスカレー。函館カレーというやつで、上に目玉焼と、マンゴーチャツネを乗せて食べる。レトルトもホント、馬鹿にできないという味。それから仕事にかかる。対談本の資料をインターネットで検索。どんどん書き込むが、最近のわが記憶力の頼りなくなりたること、自殺したくなるほど。毎朝この日記つけるのにさえ、ちょっとした店名や人名が思い出せずに、十数分、七転八倒することが珍しくない。スマートドラッグでも試みるか。

 書庫を少し整理。上記の、思い出せない記憶を確認する資料を探すためだったが、肝心の資料は出て来ず、あれ、こんなところにしまったっけ、というような本が何冊か出てきて、それを座り込んだまま読みふける。三遊亭円丈『御乱心』をそのまま、ベッドに持っていき、寝ころんで一冊丸々読了してしまう。以前は落語界の裏ばなし的面白さで読んでいたが、今回は、突如自分の所属していた世界が崩壊の縁に立ってしまった人間たちの、アイデンティティ保持のためのドタバタとして楽しんだ。ラスト近くに、著者円丈師匠の、三遊ナショナリスト、三遊国粋主義者としての表明が唐突に出てくる。あまりに狭い、小さい世界の中での、超個人的なアイデンティティ確立。しかし、狭いが故に、超個人的故に、そして古くさいが故に、その自己規定は強力で、深い。これを否定する者に、人間はわからず、社会はわからず、ついでに言えば交友も恋愛も家庭もなぁんにもわからないだろう。

 朝、あまり肩が張っていたのでマッサージ予約するが、寝転がって読書しているうちに凝りも治っていた。しかしまあ、予約しちまったものは仕方ない。新宿へ出る。初めての先生にあたるが、指圧しながら、うわ、こりゃ凝りが奥深いところへ入ってしまっている、と驚き、それを表へ揉み出す、ということをしてくれる。揉み終えたときには、すっかり肩が“元通りに凝っていた”。これで明日の朝は楽ですよ、との ことだったがどうか?

 渋谷に戻り、焼鳥屋行くつもりだったが土曜は休み、船山に行く。刺身、風呂吹大根、カキアゲと御飯。いつも我が家で食べる米を買っている、ここの主人のお父さんが来ている。お父さんといろいろ話。中野でやっている農家直送お米フェアのために上京してきたそうだ。いかにも田舎のたくましい伯父さん、という風貌の、純朴で感じのいい老人だった。揉まれた後のせいか、酔いが回る々々。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa