5日
木曜日
オスカー候補だってね、ノミネートクイネート
意味はない。朝4時起き。ひさしぶりに夢声戦争日記を読む。やはりいい。7時半朝食、早起きすると腹が減るので、クネーデルサンドに、サラダスパゲッティを小皿に一杯。それとガスパッチョ、梨という、あまり文化人的でない食欲を示す。午前中の体調、極めてよし。この間に仕事と思って、まず、フィギュア王一本、十枚を一時間でアゲてK子に渡す。早さに自分でもオドロいた。
さらに続けてイーストプレスの風俗誌の創刊新連載コラム、昭和B級エロ物件史、五枚。これもイッキ。続けてやっつけると大変に気分がいいが、ここらで一日のエネルギーを全て使い果してしまった感じになる。ここらへんが、怠け者の節句働きの限界というもの。昼は昨日の残りの栗おこわが茶碗に半分、おとついの菜飯の残りがやはり茶碗に半分残っているので、合わせて一杯分、壷漬けタクアンとタラコ、即席のミョウガ味噌汁でモソモソ食べる。残り物を片付けて腹が一杯になると、何か非常にハッピーな気分になって(安上がりな多幸感である)、やれ極楽々々と爺いくさくつぶやきながら寝っころがる。寝ると言ってもここしばらくのように体力がなくて倒れ込むのと違い、早起きした分の睡眠不足を少し取り戻すためであって、調子はほぼ、回復している。
睡眠は結局、取れず。今日はこのマンションの非常用ブザーの点検日であり、朝から部屋を業者が順番に回って、ブザーが作動するかどうかをテストしている。そのため、間歇的に“ズブーッ、ズブーッ”という音が響き、これが気になって眠れない。井上デザインに、11月1、2日のロフトプラスワンでのオタクアミーゴス公演の告 知をUPしてもらう。
3時、時間割で講談社Web現代編集部Iくん、同社文芸第三編集部Oくんと打ち合わせ。新連載とその単行本化の件。要するに、Web連載のスポンサーが文芸編集部ということになり、自分のところで出す単行本の宣伝扱いにして連載を持たせてくれる、という仕組みである。こういう形式も初めてだし、提示された部数もまだ不満だが、最初から単行本化が決っているというのは大変に安心感のあるものである。
スケジュール調整と、イラストの受渡し(初めて今回、イラストもメール送付することになる)のことを打ち合わせ、いろいろ雑談。私は大手との仕事がこれまであまり好きでなく、と、いうのは、大手出版社の社員というのは妙に自社に対する忠誠心が高く、プライドを持っており、私がまたそういう頭悪いくせに(自分の会社を堂々と自慢するような奴はたいてい馬鹿である)プライドの高い奴というのをツッ突いていじめるのが大好きなもので、どうもこれまで、トラブルが多かった。それが今回、IくんOくんとの打ち合わせが非常に楽しかったのは、お定まりの出版不況で、大手と言えどただデンとかまえているわけにはいかず、いろいろと工夫したり、自社の短所を自己分析したりしなければいけなくなったからで、原稿料や部数の限界など、自分たちの弱味を正直にさらけだす彼ら二人の打ち合わせ方に非常なる好感を抱いたた めである。不況もこうなるとあながち無駄でない。
雑談はずむ。Iくんが東大法学部卒であることを知って驚く。オタクであることが災いして講談社などに入ってしまったらしい。こないだ、叶姉妹の記事を載せて訴えられ、裁判所に行ったとき、担当裁判官が後輩だったりしたらヤだなあ、と思ったという話で笑う。相手側弁護士に“あなたね、法律というものをわかってるんですか”とイヤミ言われたそうである。裁判ばなしになり、私も(バカ)で訴えられた話などして盛り上がる。
Oくんは『メフィスト』などもやっているので、ホラーの話、ミステリ、SFの話などにも及ぶ。徳間の『SFジャパン』のO野くんを、Oくんが、今、日本でSFで商売することがどういうことかをわかっている数少ない一人、と絶賛し、大変尊敬していることがわかる。“でも、アレの服装センスってすげえゲテじゃないですか”と言うと、“ア、あれは何とかなりませんかねえ”とOくんも深くうなづく。彼の服装の趣味というのは、昔、私の担当だったときに招き猫柄のアロハシャツを着てきて驚いたことがあるが、まあ、要するに鬼面人を驚かすという風なものであり、最近エラくなって少しはマシになったかと思っていたら、こないだSF大会に、青いスーツにピンクのシャツ、オレンジ色のネクタイという気違いじみた色の取り合わせで来ていて、ああ、雀百までだなあ、と妙に感動したものである(まあ、私もあのときゃプレイボーイの表紙のパッチワークシャツだったから人のことは言えない)。思えば私に最初に本を書け、と勧めてくれたのもO野くんであり、そういう意味では確かに先見の明はある人物だなあ。
打ち合わせ終わって、青山まで出て、買い物。ゴットー日で、道がえらい混雑である。帰宅して、電話数本かけたり受けたり。また眠くなる。午前中にハリキリ過ぎ。神原正明『天国と地獄』(講談社選書メチエ)など読みながら一時間ほど横になる。8時、新宿二丁目“へぎそば”でK子と待合せ。穴子てんぷら、馬刺し、のっぺ、鯛塩焼など。のっぺの中に小さなアブラムシを発見。店員が恐縮して引き下げる、これで代金少しマカるかと思っていたが、ちゃんと取られた。新宿でゴキブリなどに驚いていてはモノは食えないかもしれない。ソバはさすがのうまさ。その後で、いれーぬへ行く。タケちゃん、ノッポさんとポーランド旅行の話、官能倶楽部の話など。水割り、少し飲みすぎた。