裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

火曜日

MIB(みぶ)の浪人

「京都宇宙人目撃者取締御用、新撰組である!」

※『オタク論2!』ゲラチェック

朝9時半なんとか起床。
さすがに咳がぶり返した感じでゴホゴホ。
あまり午前様はするものでなし。

9時半朝食。
バナナリンゴニンジンジュース、カブのスープ。
自室に戻って日記つけ、さて原稿にかかろうと思ったが
なかなか筆、進まず。
やはり睡眠はきちんと取らないと駄目。
入浴し、昨日のセリフをちょっと浴槽内でさらう。

連絡、角川書店、楽工社、その他いろいろ。
某テレビからまた出演依頼。
日取りは仮押さえ2日ほどされる。
前者なら通常番組、後者ならスペシャルとのこと。

〆切が詰まっているものが三つあり、あせるが、
落ち着いて、まず一つずつ、片づけていくことに。
資料も読まないといけないものがアマゾンからどかっと
届いているんだよなあ、うーむ。

昼は茄子の味噌炒めと、タラコ、目玉焼。
原稿書きは一旦放棄して、『オタク論2!』の最終ゲラチェック。
案外直すところあり。

7時半までかかって、赤入れ終る。
サントクで買い物、その後ニュースいろいろ。
北野誠氏の芸能活動自粛とか。
知らない人ではなし、気になるがどうもどの情報も隔靴掻痒。
あと、マリリン・チェンバース死去の報。

吸血鬼の吸血法にもいろいろあると思うが、
“ワキの下で相手の血を吸う女吸血鬼”なんてエロな
存在は他にないだろう。
しかも、単にワキの下ではなく、そのワキに空いた穴から
ペニスみたいな突起がニュー、と生えてその突起が針で相手の
心臓を突き刺すのである。

吸血鬼史に残る、このエログロ女吸血鬼が登場するのが
デビッド・クローネンバーグの『ラビッド』、女吸血鬼を
演じたのがマリリン・チェンバーズだった。

マリリン・チェンバーズ。
ごく普通のアメリカ一般中流家庭に育ちながら、
芸能界を夢見てハリウッドに赴くが、お定まりで三流ヌード映画
にしか職がなく、モデルなどの仕事口を探し求めているうち、
大手メーカー、プロクター・アンド・ギャンブル社の
『アイボリー石鹸』のイメージモデルの職を手に入れる。
赤ちゃんを抱いた若い母親をイメージしたこの写真は好評を
博し、商品の箱にも印刷されるが、それも、彼女がポルノ映画
『グリーンドア』(1972)に出演するまで。
彼女の出演を知った会社はカンカンになって契約を打ち切るが、
これが彼女の大ブレイクのきっかけになった。
映画会社は彼女の売り文句に、『アイボリー石鹸』のコピーそのままの
「99.44パーセントの純粋さ!」
を使ったのだった。彼女は同時期公開の『ディープ・スロート』の
主演、リンダ・ラブレースと並びアメリカ史上初めて、一般マスコミに
まで名前の知られるポルノ女優となり、70年代のアメリカの性開放
ムーヴメントの一翼を担う存在となった。

彼女の最盛期は70年代後半で、鉄板焼き和風レストラン『紅花』
をイメージした(?)、琴などを使って日本調を出した曲に彼女の
アエギ声がかぶさるディスコティック・ソング『ベニハナ』を
ヒットさせたり、上記クローネンバーグの『ラビッド』で
一般映画デビューを飾ったりしたが、ポルノ界でのあまりの
名声が邪魔をして、転身はかなわなかった。

ドラッグ、アルコール依存症などに悩みながらも独立系映画作品
などに顔を出し続けていたが、4月12日、自宅のトレーラーハウスの
中で死亡しているのを娘に発見された。57歳の誕生日の10日前
だったとか。

『ラビッド』で自分のフェチ系趣味にドキッとしてしまった経験
を持つ全ての男性同志と共に、ご冥福をお祈りするものである。
http://www.youtube.com/watch?v=-petXcizF1E
↑『ラビッド』のクリップ。

雑仕事いくつか。
それから食事。カツオの刺身と、ホタテのサラダ。
DVDで『不思議の国のアリス1903〜1915』。
WHDジャパンの松村さんから送っていただいたもの。
1903年のものは、『アリス』最初の映像化作品。
1915年のものはW.W.ヤング監督によって作られた『アリス』の、
というよりテニエルの挿絵の、完全映画化(一部フィルムの紛失からか
無いシーンがある)。

特徴は兎、グリフォン、まがい海亀からチェシャ猫、イモムシ、ドードー、
さらには気違い帽子屋や侯爵夫人など、テニエルの描いたキャラに
そっくりそのままのぬいぐるみが登場して不思議の国での話が進行する
ことだろう。ジム・ヘンソン(キャラクター製作)の『ドリームチャイルド』
より70年先んじた大特撮の世界である(公爵夫人の料理女が傑作)。
白黒・無声だからこそそこに現出する、悪夢みたいな光景の魅力に
しばし陶酔する。アリス役のビオラ・サヴォイは、当時15歳だったと
いうことだがちょっと大人過ぎる気もする。しかし美人ではある。
当時の撮影の常としてクローズアップはなく、舞台をそのまま
映しているかのように引きばかりで撮っているので、ぬいぐるみの
デティールとかが、せっかくあれだけよく作り込んでいるのに
よく見えないじれったさはあるが、しかし、にも関わらず
フィルムに焼き付けられた光景の幻想味は見ていてその中に
ぐい、と引きずり込まれていく力を持っている。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0024O68ME/karasawashyun-22

*写真はマリリン・チェンバース、ビオラ・サヴォイと『不思議の
国のアリス』。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa