12日
日曜日
松下に負けた
いえ、日立に負けた〜(『家電枯れすすき』)
※書き下ろし原稿
朝6時まで眠る。
眼を覚まして寝床読書。氏家幹人『江戸の病』(講談社メチエ)
など。
7時くらいに読みくたびれてまた寝るが、その8時までの
二度寝の眠りが実に心地よいものだった。
その時に見た夢。
映画のプロデュースをして、その完成披露パーティをやっている。
しかし、私も、他の出演者も客も、その映画の主役のブルック・
シールズの名前を思い出せず、“ジェニファー?”とか
“キャサリンだったけ?”とか言っている。
9時半、朝食。
ジュースと、カブのスープ、コーヒー。
札幌にいた名物産婆さん・トラさんの話などを聞く。
母や、坂部の家の従兄弟たちなどは、みなこの産婆さんに
取り上げられたとのこと。
ちょうど『江戸の病』で産婆のことを読んでいたので興味深し。
自室に戻り仕事。
脚本を何とか今週中には書き上げないといけないのだが
なかなか進捗せず。
昼はカブのスープを作ったあまりの葉っぱを利用した焼きそば。
うまいうまい。
書き下ろし本用の原稿に移って、これもダッシュかける。
打ち合わせが出来てないので、なかなか形が見えてきておらず。
それはそれとして、書いていて楽しくはある。
ハッシーから、下北で古舘のYさんと打ち合わせ兼ねてメシでも
という誘いが来たが、原稿がちょうどいいところで終らない。
やむなく断りのメール入れる。
8時過ぎ、『天地人』横目で見ながら早川のSFシリーズ(銀背)
のチェック。引っ越しの際に知人にゆずることにしたのだが、
遅れに遅れてしまった。一応、揃いなので、欠けがどれだけあるか
ビクビクもののチェックだったが、317冊中、3冊欠のみ。
その3冊も存在は確認済みなので、新事務所引っ越しの際に出てきた
ものから送るということで。
9時、NHKスペシャルでアマゾンの奥地に住む裸続・ヤノマミ族の
集落に長期取材した番組を見る。いや、前から噂は聞いていたが、
凄まじいショッキングな映像。まず、女の子も含め子供たちの
全裸を堂々と撮影している。さすがに成人男子の局部はぼかされて
いたが。さらにドラッグを吸って陶然となる模様も堂々と記録、
放送されている。田中泯による、ひたすら重苦しげなナレーション
も印象的。
円形の独特の形状の集落の天井からは保存食なのだろう、黒く燻された
猿が何匹も重ねてくくられてブラ下げられている。頭は切られているが
たぶん柔らかい部分が多くて保存に堪えられないからなんだろう。
半ばドクロになった頭の部分をハンモックに寝た子供がうまそうに
齧っていた。
動物の解体で腹から出てきた胎児をオモチャにして遊ぶシーンも凄いし、
ペットにした子猿(親は食ってしまった)に自分の匂いを覚えさせるため
ツバを飲ます少女の図もちょっとショッキングだった。で、この少女は
14歳で赤ん坊を妊娠するが、その出産後、産んだ子を“精霊として
天に返す”ことにして、シロアリに食わせ、そのシロアリを巣ごと
燃やして天に返す。一年に生れる赤ん坊の数が平均20人くらいで、
そのうち天に精霊として返してしまうのが10人〜15人。
しかし、狩に依存した不安定な生活を見ていると、この間引きが
なければ部族は人口爆発で崩壊するだろうな、とも思う。
「自然に帰ろう」
などと簡単に主張するナチュラリストたちの言に同調する前に、
ちょっとこの映像を見てみろ、と言いたくなってくる。
「ヤノマミの祖先が動物となった。それでも動物を殺し、食べよ」
というシャーマンの言葉をグリンピースとかシーシェパードの
連中に聞かせればどう反応するだろうか。
この部族はものの本によると、食事で塩分をほとんどとらない、
世界一の低塩体質部族で、そのためか部族全員低血圧なのだそうだが、
大人たちが年中ハンモックで寝ているのもそのせいかもしれない。
とはいえ、泊まり込みで狩はやるわ、やたらケンカ好きだわ、
14歳の少女に妊娠させるくらいだから(父親が誰かはまるでテレビでも
触れていない。野合か強姦同然の行為の結果だったのだろう)性欲は
あるわ、別の資料によるとときどき他部族と戦争までやるわで、なかなか
活発である。脱塩症状をなぜ起さないのだろう。
転生思想も独特で、シャーマンの話によると、“人は死んだら
精霊になり、その精霊が死ぬと、地上に戻ってくる。男はハエや
アリに生まれ替わり、女はノミ、ダニに生まれ変わる”という。
あまりありがたくない転生であるが、
しかもその上、“ハエで死んだらそれで終わり”なのだとか。
非常に中途半端というか、ここらへんはやはり低血圧なので気力が続かず、
もっと壮大な輪廻転生思想を構築することが出来なかったのかもしれない。
人に聞くと、ヤノマミ族はいま、ブラジル政府の巡回医療を
受けていて、必ずしも原始の姿そのままではないというが、
なるほど、あのような生活をしていて風土病らしきものが
見当たらないのが不思議ではあった。そこらへん、BSで
放映したというロングバージョンでは触れられていたのだろうか。
とにかく、滅多に見られないものを見せてもらった気がした
番組であった。テレビ凋落と言われている中、NHKが独り勝ち
とされるのも、無理ないことかもしれない。
……とはいえ、こないだの台湾統治時代の番組はひどかったが。
夜食、イカの塩辛炒飯。
フライパンにオリーブオイルを垂らし、ホタテの貝柱とイカの塩辛
を炒める。焦げ付き出したら、日本酒を加え、バタ一片も投入。
そこにご飯を入れて、よく混ぜ合わせる。黒胡椒を振り入れ、
皿に盛って、ネギの微塵切りをたっぷり乗せる。
風味満点、うまいこと。
脱塩症状には絶対ならない食い物でもあるな。
DVDでアベル・ガンスの『ナポレオン』前半。
安売りでもないのについ、このDVDを買ってしまったのは
あまりに懐かしかったから。二十代の頃、家に友達を呼んでは
しょちゅうこのビデオの観賞会をやっていた。
少年時代のナポレオンを演じるウラジミール・ルーデンコの
美少年なこと。アントナン・アルトーが演じている(!)
マラーは少し美形すぎる気がするが。