裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

10日

金曜日

雨後のタツノコ

『ヤッターマン』のヒットで、実写化作品がまたぞろぞろ。

※楽工社書き下ろし原稿

朝7時までぐっすりと眠る。
このところ、右足が明け方に攣るのは、水代謝を促進させる
薬をのんでいるせいかもしれぬ。

寝床読書数冊読み散らかし。
このところ蒙を啓かされる読書、多し。
いいことである。

読みふけっていたら眠くなってしまい、母に電話で
朝食を少し遅らせてもらう。ここらへん、やはり自由業として
決まった時間が朝にあるというのは面倒である。

10時15分、朝食。
バナナリンゴニンジンジュース(長いと思うが、これを
“バリニジュース”とか“ABCジュース”とか名付けて
そのシャレっ気を喜ぶ、というセンスが私にはない。むしろ
鳥肌が立つ。いい家の出でない証拠みたいなものである)
とスープ。

日記つけ、テンションを上げて3時、楽工社のオタクアミーゴス本原稿。
まずはあとがき、400字詰め9枚。
途中で弁当(焼き鳥弁当。美味々々)使いつつ、書き進める。
NHK『熱中夜話』の件でやりとり幾人かと。
今回の申込数、凄まじいらしい。

あとがき原稿、5時に書き上げてメールする。
それからサントクに買い物。
ずっと同じ姿勢でいたので、足に水分が溜まって、特に右足が
パンパン。少し歩かないといけない。
あと、資料本をアマゾンでまとめ買い。
とはいえ、どれも¥1とかせいぜい¥95とかいうものだが。

帰って、すぐその次の、鼎談ゲラチェック。
これを送ったあと、差し替えネタ原稿を描く。
ちょうど、スキャンしやすいネタがあったので、この画像と共に
7時には全て書き終えてメール。新担当(前担当のKくんが
病気退社してしまったため)のAくんから、安堵したような
メールが来て、とにもかくにも、四月刊行の本の仕事はこれで
全部終る。

何度もAくんからは心配した催促の連絡あったし、
やってみればこの通り半日仕事でカタがつく分量ではあり、それは
わかっているのだが、しかし何かテンションを上げられなかった。
こういうことはよくあるのだが、何か最初のとっかかりで
つまづき、ずっと延ばし々々にして、最後の最後で、
今日やらないと駄目、というところまで持っていってようやく
テンションをあげる、という仕事があるもの。
これは、その仕事の質とか面白さとかには関係ない。
ひたすら、最初のとっかかりのつまづきなのである。

そこらで夜食の仕度。サントクで買った蒸しホタテと焼きトマトの
サラダ、それとチキンカツで煮カツ。
DVDで昨日の『夕陽のガンマン』の続きを見る。
ラストの、リー・ヴァン・クリーフとジャン・マリア・ボロンテの
決闘に流れるオルゴールの音の効果的なこと、
昨日書いた帽子の笛もそうだが、監督のレオーネは音感の鋭い
人物だったんだろう。

ボロンテに婚約者を殺され、強姦されそうになって自殺した
ヴァン・クリーフの妹役はローズマリー・デクスター。
パキスタン出身だそうで、この映画にせむしのワイルド役で
出ている怪優クラウス・キンスキーとは、その後『マルキ・ド・サドの
ジュスティーヌ』で共演している。

その後、LDで『妖怪百物語』。主役が藤巻潤と坪内ミキ子という
のが今思うと異色だが、ワキの顔ぶれの濃いこと。
神田隆、五味龍太郎、吉田義夫、杉山昌三九といった悪役の
顔ぶれだけで妖怪どもの迫力を軽く凌駕するし、
浜村純、伊達三郎、山本一郎、荒木忍、毛利郁子などがほとんど
数分だけのシーンで登場するというぜいたくさ、
おまけにルーキー新一に林家正蔵(彦六)!
……およそ役者の顔だけは、平成の映画がどんなにがんばったところで
この時代の映画にはおいつけない。
4月9日のTBSテレビは水戸黄門の再放送が最高視聴率だったそうで、
しかしそれも、東野英治郎や西村晃時代の役者の層の厚さを考えると、
むべなるかなとも思わせるのである。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa