23日
日曜日
プロジェクトX〜洋泉社たち
映画秘宝、悪口を言った。
(田口トモロヲ調で)
※原稿執筆 柴田秀勝100周年祝賀会
朝、夢を見た。
大きな川(子供のころに感じた創成川のイメージか)
を渡って、向こう岸のテレビスタジオに行く。
スタジオの中で、私は外国ものの、ハリー・ポッターみたいな
魔法もののドラマの、次週予告編をナレーションしなければ
ならない。そのナレーションを書く女性シナリオライターが
なかなかナレーション台本を書いてくれないのでイラつく。
実はこのドラマで、魔法使いの先生の役をやっている
俳優が来日して、スタジオ前でキャンペーンをやっているので、
その俳優の大ファンである女性シナリオライターは心ここにない
のであった。
その俳優、さすがに魔法使い役らしくやせぎすで鼻が高い。
老人役だが、老けはメイクで作っているようだ。
「もっと爺いかと思ったけど若いんだね」
とシナリオライターに言ったら、その俳優は日本語もペラペラで、
私の言葉を耳にはさみ、
「爺イジャナイヨー!」
と日本語で叫んだので、ちょっとバツが悪い。
8時起床、メール数通。
9時朝食、柚子みつがけヨーグルト、瀬戸香一顆。
青汁と漢方薬。
新聞を読むまで、昨日が日曜で今日が月曜とカン違いしていた。
月曜打ち合せ予定の編集さんに“本日よろしく”と書くところを
“打ち合せよろしく”と書いて送っていたのにホッとする。
トイレ読書(別の本は書評対象書になってしまったので)
また読みかけの『ファミリー』に戻す。
ツマランと書いてきたが、383ページに至って面白い個所に
ぶつかった。チェーザレが父の法王アレッサンドロ6世に、
政敵デッラ・ローヴェレがボルジア家の醜聞を書き立てさせている
という情報を告げたときの描写。父のアレッサンドロは笑って言う。
「ある部分はなかなか興味深いな。なぜなら、もしわれわれが
彼の言うとおりに堕落しているのなら、毎日はもっとはるかに
愉しいはずだからだ。残りの部分はほとんど馬鹿げている。
知性のかけらも感じられない。笑ってしまうほどだよ」
「デッラ・ローヴェレは、いつの日かあの記録を法王庁の
正式の日録として公にするつもりだと思います。気になりませんか?」
「チェーザレ、われわれの敵が金を払っている醜聞屋は山のように
いる。ひとり増えたところで何も変わらんよ」
「父上、中傷屋や嘘つきが我がもの顔に振る舞っているのに、
国を治めて奉仕する人間は身を守ることもできないのですか?
誰も真実を信じようとしないのです。もし醜聞を広めるものを
裁くのが私なら、厳罰を与えるでしょう。大嘘と侮辱を
まき散らして逃げられると思ったら大間違いだ」
このチェーザレの怒りに対し、海千山千のアレッサンドロは
“彼らが思うことを口にする方が、隠されるよりいい”と考え、
息子に言う。
「自由はただの権利ではなく、特権なのだ」
……まるで、親子でネット掲示板のことを話しているみたいな
会話であるのに笑う。いつの時代もことは変わらず。
ずっと原稿書き。
話が前に進むところでなく、設定の説明部分なので筆がノラず。
しかし、ここを読み飛ばされぬよう、工夫せねばならぬ。
昼はソイジョイに味噌汁。味噌汁は茄子とミョウガ。
書いては休み、書いては休み。
今日は一日中この繰り返しにて、日記に記すようなこと
5時半まではなし。
だいたい8枚くらい書いたところで着替えて新宿に出る。
歌舞伎町コマ劇場横、グランドキャバレー『クラブハイツ』。
マイミクTaka@モナぽさんのお誘いで、
『柴田秀勝 芸能生活50周年・突風50周年 100年記念祝賀会』
に出席。席に案内される。ロフトさいとうさん、河崎実監督、
菊池秀行氏と同席。河崎監督は明日からギララのクランク・インだが
花粉症がひどく、薬でモーローとしている様子。
“突風”というのは柴田さんが新宿ゴールデン街で経営している
バーの店名だが、それに関連して、芦辺拓さん御用達の
『幻影城』の話をしていたまさにそこに、幻影城スタッフの方が
やってきて挨拶してくれたので驚く。
他の席には声優陣の大御所の青野武、大塚周夫、内海賢二
の各氏をはじめ、あと辻真先氏、小林亜星氏、水木一郎氏、
山本正之氏など著名人多々。
鈴木美潮さんも当然のごとくいらしていたので挨拶。
やがて、ウルトラマンティガこと真知勇志、ときメモの紐緒結奈こと
中友子の司会で、開演。祝賀会と言っても来賓からのスピーチなど
はゲストを除いて一切なく、柴田秀勝氏が、自分の生きてきた
昭和の時代をふりかえり、自分史と昭和史を重ね合わせて
(柴田氏は昭和11年生まれ、今年71歳)映像と朗読で
語る、という趣向。この映像編集手伝いをもなポくんがやったそうで、
さいとうさんによると三日間くらい寝ていないはず、という
ことである。そう言えば、どこかフラフラしていたが、
今日の映像出しなどもコントロール席にいて全部やっている。
柴田氏の浅草時代から戦争、麻布高校を経て日大芸術家で
歌舞伎を専攻した青春時代などが語られる。
江戸前のべらんめえが聞いていて楽しい。関西歌舞伎に就職が
決まっていながら直前に関西歌舞伎が倒産、太平洋テレビに
俳優として入社、TBSの『熱血カクタス』で主役を演じる。
この熱血カクタスの映像が上映されたが、まあ、『快傑ハリマオ』
以上の無国籍アクション。メキシコという設定なので
悪党がみんなパンチョヒゲを生やしているのがご愛嬌。
しかも、ヒトデみたいな怪物まで出てくる(あとで河崎監督と
“あのヒトデは何かね?”と盛り上がった)。
菊池氏はこのカクタスの大ファンで主題歌も歌えるのだそうな。
そこらあたりで河崎監督、
「ちょっと調子悪いんで帰るわ」
と中座。明日は早いだろうし、大丈夫か、とさいとうさんと。
もっとも、トレードマークの“ヨッ!”はやっていったから
大丈夫だろう。
水木一郎の生歌で『キャプテンハーロック』『マジンガーZ』を
聞けたのもふるえたし、作詞作曲者・山本正之氏による
『銀河旋風ブライガー』を、あの柴田氏の名調子ナレーション入り
で聞けたのはもう、生きててよかったというような経験。
そうか、このナレーションの七五調が異様に決まっているのは
柴田氏に歌舞伎の素養があるからなのだな。
しかし、今回最も拍手をあびたのは柴田氏でも豪華ゲストでもなく、
柴田氏のお孫さん(小学校6年生)による華麗なるダンスであった。
小学校6年でバレンチノばりの衣装でタンゴやルンバを超達者に踊る
(相方の女性も中学3年生。児ポ法にひっかかりそうな衣装だった)。
柴田氏、可愛くて可愛くて仕方ないという表情ながらも
「全部食われちまったよ、やってられねえや」
とボヤいて笑わせていた。
この孫の名前が何と“柴田クムナル”。いったいどういう字を
書くのか。帰宅してからネットで調べたら“久ム成”。
http://www.d-sport.net/06kummai.html
うーむ、普通は聞きなれない名前であっても、親がどういう
意味を込めてつけたのか、その意思はわかるというものが多いが、
この名前のみはそもそも命名動機が全くわからぬ(どこかの
外国語が元になってるらしいが)。
ともかく、数年後にはこの名が世界的知られている名に
なっているかも。
終わって、もなポさんに挨拶、さすがに視線がフラついていたが
柴田さん自身、三日間、台本直しと演出チェックで寝ていないという。
役者は元気だねえ。
山本正之さんに挨拶。歌に関しては“お恥ずかしい”と。
あと、
「唐沢さん、憶えていらっしゃいますか? ぼく、潮健児さんの
車の運転とかやっていたスズムラです!」
と声をかけてきてくださった人あり。
ああ、と、その存在を思い出す。懐かしいねえ、いま何やってんの、
と言うと、東映で監督になりまして、お見せできるようなもの
撮ってないんですが、という。
そう、何かあったらいつでも協力するからね、声かけてね
と言って、後から名刺を見たら鈴村展弘とあって仰天、
響鬼の後期オープニングまで撮っている気鋭ではないか。
三日会わざれば刮目して待つべしというが、みんなエラくなってる。
鈴村氏周辺の方々も次々挨拶に来てくれて、潮山脈みたいな
ものが出来ているな、と嬉しく思う。
これから阿佐谷ロフトで朝まで、というさいとうさんや
菊池さんと別れ、地下鉄で帰宅。
会での食事が幕の内弁当(みたいなもの)だったので、
腹が空く。冷蔵庫にあったジャガイモを繊切りにし、
タマネギと炒めて、牛乳とコンソメスープの素で
グラタン風にしたものを作る。スウェーデン風グラタンである。
K子がポテト炒めはシャキシャキしか認めなかったので
今回もシャキシャキに作ったが、本来はホクホクになるまで
オーヴンで熱しないといけないようだ。次はそうやって作ってみよう。
メール。担当替えになる編集さんなどとやりとり。
電話、某人から、21日の日記に書かれていた変なメールについて、
私のメールもご迷惑でしょうか、と言ってきたので、
そのメール主の迷惑さがいかばかりなものかを説明したら、
「あっ、私はまだそこに至るまでにはまだまだですね!」
と声が明るくなった。
あと、山本会長から、私が依頼している原稿のテーマ変更に
ついての問い合わせなど。雑用すませつつ、
ふと気がついたらいいちこの蕎麦湯氷ロック、四ハイも
いっていた。祝賀会で全く飲まなかったので、反動が来たらしい。
2時、就寝。