裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

金曜日

Oリングストーンズ

はい、体に悪いものだと、ミック・ジャガーの唇が開きますね。

※『創』対談チェック 『ProntPront』コラム原稿 その他二社原稿 テリー兄さん作業

今朝の夢。
ヘミングウェイの小説に出てくるような、海岸沿いの小さな街。
その街一番のレストランで、私は街の有力者と会食している。
ウミガメの卵の料理を二人は賞味している(ウミガメの卵は
食べたことがない。大藪春彦の小説で読んだ記憶だろう)。
「ウミガメの卵は最近なかなか味わえない」
と、相手は美味に目を細めながら言う。
「今年は豊漁でしてね」
と私。
「一年前からの火山活動で、町全体の地盤が隆起しているのは
ご存知でしょう。土地がゆがんで家が壊れたりという被害が出ているが、
また妙な恩恵もある。ウミガメの卵もそのひとつでしてね。
海岸線がかなり後退しているのに、母ウミガメたちは、本能で
以前と同じ場所に産卵するんですな。だから、地元の漁師の
子供たちにとっちゃ、浅瀬を歩くだけで取り放題ってわけで、
彼らのいい小遣い稼ぎになってるってわけです」
「なるほど、海岸線の後退がね」
上機嫌で話を聞いていた相手の顔が急に無表情になり、青ざめる。
「そうです」
私は立ち上がって相手に告げる。
「海岸線が後退して、あなたが殺した奥様の死骸が、ウミガメの卵
捕りの子供たちによって発見されました。岩に鎖でつながれていた
白骨死体がね。……あ、どうぞ食事はお続けを。当分のあいだ、
こういう豪勢な食事はお出来にならんと思いますからね」
私は刑事であったのだった。
……翻訳ミステリを読んでいると夢までそんな風になることである。

朝8時起床、外は寒々とした空模様。
『Pront Pront』コラム原稿200w×5本にかかる。
テーマが地味かつ広範囲にわたるものなので、
どこから切り口をつけたものだか、やや難渋。

9時朝食。
瀬戸香(こういう名前のアイドルがいそうだ)、
柚子みつヨーグルト、青汁。
ミルクティーはバレンタインにいただいた紅茶で。

ダーリン先生、意識を回復し、ひっきりなしに
しゃべろうとしているそうである。
やはり気力が並の人でない。
ただ、イギリスのアンソニー・ミンゲラも同じ18日に脳出血で
死去している。ダーリン先生は命をとりとめただけ運がいいが、
何かその日に地球的に気圧の急激な変化があったのではないか。
そう言えばマイミクさんのところでこんな記事が紹介されていた。
※※
・台風接近でくも膜下出血多発 沖縄・八重山諸島で調査
http://www.asahi.com/life/update/0321/OSK200803210003.html
台風が近づくと、脳卒中の死因の約1割を占める、くも膜下出血が
増える可能性があることが、国立病院機構・関門医療センター(山口県
下関市)の泉原昭文・脳神経外科医長の調査でわかった。低気圧が血管
のこぶを膨張させるなどし、脳動脈瘤が破裂したと推測している。
(中略)
この間に石垣島に接近した台風は56個ある。台風が最も近づいた
日を中心に、前後3日間を「台風接近時」として、接近時とそれ以外の
時期のくも膜下出血の発症者数を比べた。その結果、接近時の100日
あたりの発症が約3.4人だったのに対し、それ以外は約1.9人で、
接近時の発症がふだんより約1.8倍高かった。泉原さんは
「台風接近による気圧変化で脳動脈にできていたこぶが変形したり、
気圧の低下で膨張したりして破れたのではないか。不安感が高血圧を
起こした可能性もある」
と推測する。
「気候と病気の関連についての研究が進めば、予防医学にも役立つ」
と話している。
[asahi.com:2008年03月21日10時01分]
※※

気圧系人種のデータが欲しければ私を人体実験にでも使って結構なので、
早く解明してほしい。

原稿、先に『創』のオタク清談の方のチェック(ほぼ全面改稿)
済ませて、それから『Pront Pront』残り原稿書き上げ、
2時半にメールする。
途中、昼食はピルボックスダイエット、今日はブルーベリー味。
原稿書いているとやはり小腹がかなりすくので、
ソイジョイだのスルメだのを噛ってしのぐ。

某社原稿。依頼がとにかく私(書いている自分)を褒めて、
ということだったのだが、どう書いてもそんなもの、テレが入る。
予定枚数の半分ほど書いて、やはり無茶苦茶テレが入っているなあ、と
自分で判断、コリャ書けんわ、と投げ出す。

4時、家を出て地下鉄で新宿、雑用すませてタクシーで渋谷。
東急ハンズで買い物。大きな買い物するところを、
すんでにオノからもう買ったとメールが携帯にあり、
ことなきを得る。

事務所でもう一本、朝日書評原稿書き。
読んで感心した出来のものだけに、こっちは切り口が十数種類も
一気に頭に浮かび、どれを採用するかで非常に悩む。
週刊新潮、このあいだ電話取材受けたものがもう。
二十行くらい使用されていた。案外多い。
もっとも、話した中では最も穏健な部分。
そうこうしているうち、6時にオノ、どこかで待ち合わせたか
テリーを連れて来社。

わが社のB級映画ビデオコレクションを見てケケケケ、と
喜んでいるテリーを座らせて、見張りながら作業をさせる。
いま進行している企画のための作業(細かいところは
決定後にお知らせする)。
自他共に認める飽きっぽい性格の男なので、階下の仕事場で
原稿を書きながらも、ときおり上がって、出来を確認、
いろいろ指示を出す。

途中ではれつ氏来る。
今日テリーが来ていることを知っていたのか?
おみやげにクリスピークリームのドーナツを持ってくる。
知りあいにもらったのだが、普通に買おうとすると
1時間半待ちなのだそうだ。
……これはこの店の展開戦略が、マスコミに一切CMを
流さず、口コミだけで広める、ということに原因があるだろう。
マスコミにはだまされまいぞ、と身構える一般人も、
口コミならばその情報は正しいはず、と疑念のハードルを
下げるのである。
実はデマってのは口コミで広がるものなのだが。

8時まで、いろいろ作業させる。
原稿はざっと書き上げたが、ドタバタなの中なので、
明日もう一度見直してから送ることにする。
あと、オノが事務所宛てに来た某人からのメールがあまりに
わけがわからずしかも失礼なものだったのに呆れていた。
変なのが来ましたけど、というので、差出人の名を聞いて、
ああ、それは相手にしなくていいから、と答えておく。
古い知りあいで、こちらに好意をもっていることはわかるのだが、
あまりにその行動と物言いが唐突でおしつけがましいのである。
……ところで、テリーは以前ミスドでアルバイトしていたが、
そこでのまかないが、オールドファッションドーナツに
バタを乗せて電子レンジでチンして、ホイップクリームを
かけて食べるというやつで、これがカロリーバカ高ではあるが
無茶苦茶うまいそうだ。
ダイエットしていると、そういう話がもう、ダイレクトに耳について
舌なめずりしたくなる。

店を出て、テリー、オノ、はれつと四人でどこかで
飲もうとあちこち歩くが、金曜日ということで二合目、
花暦、熊吉とどこも満席。
やっと、以前看板だけ見ていた『八詩』(はちうた)に入る。
はれつ氏上機嫌で笑いっぱなし。
テリーと飲む機会はあまりないので、オノも笑いっぱなしで
あった。『アート引越しセンター』の、ドラえもん加湿器のCMが
わざとくさいという話、プロピアのCMの人間関係はどうなって
いるんだという話など、どうということもない話が彼の口から
出ると、爆笑の話になる。

八詩、料理はさすがにどれもうまい。
が、上品な店で一皿の量が少ない。
あっという間に料理がなくなる。
11時過ぎまで飲んで話して。もちろん、最後は四人とも
たまっている、あの話題。
盛り上がった盛り上がった。

駅までオノとテリーを送り、はれつ氏とタクシー乗り合い。
はれつ氏は今日、花粉の飛散がひどいとマスクに眼鏡の
完全装備で来ていたが、私は全く何でもなし。
やはり朝のあのクシャミと鼻水は、飲みすぎによる水代謝不全か。
帰宅して、攣り防止に水をコップ一杯飲んで、翻訳ホラー小説
片手にベッドへ。

※写真はオノの東文研日記から。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa