裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

土曜日

フォンデュ七不思議

そのチーズを置いてけ〜。

※平山先生打ち合せ@高田馬場

ひさしぶりに9時、朝食の電話で起こされるまで寝る。
アイヌの一族を牛耳る呪術師とその影武者、という
老人にインタビューに行くが、二人ともどうといって
魅力もカリスマ性もないただの爺さんでがっかり、という夢。
どうにも意味も何もない夢であるが、このおかげで、
ゆうべの夜更かしの原因となっていた、ある懸案事項の
解決策が頭に浮かんだ。
おお、と感動する。

朝食、愛媛のオレンジ。
仙台在住の知人からの贈り物。
小粒だが非常に甘い。
それとヨーグルト、カブのスープ。

チベットの暴動鎮圧のニュース、心が痛む。
これまでの旅行先で抜群に印象的だったのはやはりラサであった。
旅先で会ったチベットの庶民はみな一様に素朴で人がよくて
(物売りだけはしつこくてK子がカンシャクを起こしていた。
あと、宗教関係の連中は一様にいばっていて愛想が悪くてしかも
金にガメつかった)、みんなこっそりこちらに近づいては
「ダライ・ラマの写真を持っていないか」
と訊いてきた。中国政府の指導で、所持を禁じられているので
あった(もっとも、マイクロバスの中などにはある程度堂々と
写真が飾られていて、中国人のガイドさんも見て見ぬフリを
していたが)。
K子はじめ女性たちが民族衣装を買って、店で身につけていると
外を歩いていたおばさんが入ってきて、“そのつけ方は違う”と、
くわしくレクチャーしてくれたりした。
ポタラ宮の修復工事は、チベット人だけの手で行うというのが
決まりだそうだが、棒の先に平べったい石をくくりつけただけの
道具で歌うように拍子をとって地ならしをしている様子を興味深く
見ていたら、ニヤリと笑っておじさんがその棒を
「やってみるか?」
と差し出してきた。あのポタラ宮の完成には、私の十回程度の
地ならしも寄与しているのである。
あのときの、人懐こく、世話好きのラサの人々の無事なことを
祈りたい。

昼は焼きおにぎり二ヶ。
赤ん坊の指くらいの大きさのキュウリの味噌漬け。
執筆用メモをコシコシと作る。
冒頭のツカミにいい感じのアイデアが出た。
タアイないメールを合間に書いたり。

『DVDデラックス』原稿執筆用に編集部のKくんから
送られてきた昭和四十年発行の写真誌『甘い写真』(新風社)
のグラビアを見てびっくり仰天。二科会の芸術祭(モデルさん
たちが裸で参加するので有名だったらしい)の写真で、黒人の
扮装をして(つまり体に黒絵の具を塗りたくって)絵を描いて
いる画家が藤野一友だった。他に、自宅の庭でヌードデッサンを
する写真も掲載されている。
私が以前、中川彩子名義の画集を提供して作った
『天使の緊縛』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309265804/karasawashyun-22
の画家である。澁澤龍彦や三島由紀夫に絶賛されながら若くして
筆を折った藤野一友の生前の執筆風景などが、こんな雑誌にひょこっと
載っているとは、と愕然。
すぐ、この本の担当だったA君(現在は安藤礼二の名で折口信夫の
研究家、多摩美大の准教授になっている)に教えてあげなくては。

4時半、家を出て、バスで中野、中央線で新宿、乗り換えて
高田馬場。マイミクお〜いくんことおおいとしのぶくん
(『忍空』『ドラゴンボールGT』などの脚本家)と落ち合う。
二人で平山亨さんをお迎えし、金城会(創価学会の池田会長警備
グループがこの名であるが、そうではなく、金城哲夫ファンたちの
つどいのことである)がいつも会合に使っているという沖縄料理屋
『次郎亭』。

平山さんがおおいくんといま提出している某企画(かなり進んでいる)
に協力するための打ち合せ、であるが、打ち合せそのものは
もう、電話やメールでのやりとり、このあいだの十条飲み会のときに
あらかた済んでいるので、今日は改めてのご挨拶。
おおいくんによると、私が協力を引き受けたことで、一時気力を
無くされていた平山さんがかなりお元気になられたとのこと。
伝説のプロデューサーのお役に立てるというだけで嬉しい。

次郎亭はB級グルメ感あふれる店で、しかし主人の次郎さんの
料理の腕で大人気の店だそうな。
おつまみに出された海ブドウのぴちぷち感が、そこらの店とは
まるで違う。さらに出てきたゴーヤの天ぷらが、うまい!
スナック感覚でいくらでも食べられる。そしてラフテー絶品、
ヒージャ汁(山羊汁)濃厚、あおさ炒め珍味、沖縄そばを
使ったナポリタン(オキナポリタン)傑作(写真)。

上機嫌の平山さんのお話を聞きながらどんどん食べたが、
平山さんが全く料理に箸をおつけにならない。
テンションが上がっているので、食べることよりしゃべること
の方に神経が行ってしまっているのである。
本当に仕事が好きなんだなあ、と感心することしきり。

そこを出て、タクシーで(行きが平山さん、かなりおつらかった
ようなので。そういえばおおいくんも痛風、私も入れて三人足萎えか、
と笑う)高田馬場駅まで送り、その後、今後のことに
ついて、おおいくんとそこらの居酒屋で話す。
今年に入って昔の知りあいに十年ぶりくらいに出会ったりとか、
長年のつきあいの監督とついに仕事したりとか、そういうことが
続き、“そろそろ死ぬんじゃないか”と思っているそうな。
今回の件の先行き、そうそう簡単にコトは運ぶまいが、とにかく新しい
展開は見込めるだろう、と話す。
あと、“ガラゴス(三浦和義の弁護人)って怪獣の名前だよねえ”とか。
そう言えばフラッシュマンに出てたか?

帰宅、今日は家では飲まず。電話あり、それにつきあって
ベッドで読書。1時半ころ就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa