裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

土曜日

うさぎ追いしかの山、アラン・スミシーかの映画

アラン・スミシーという名前は有名になりすぎてもう使われなくなっ
ているそうですよ(Wikipediaより)。

※長野花火見物

朝、7時起床の予定が、4時ころ目が覚めてから
ずっと寝つけず、ベッドで展転反側。
遠足の前日に興奮する小学生みたいで情けない。
長野地方の天気をネットで調べるが、
昨日は曇り後晴だったのに、今日になって微雨、
などとなっていて気になる。

ベッドでデイヴィッド・ロッジ『小説の技巧』(白水社)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4560046344/karasawashyun-22
読む。三度目くらいの通読だが、やはり面白い。
日本の文学が(若手がほら野心作だ、と自賛して発表するような
代物が)いかに幼稚か、ということも一目でわかる。

また寝て、結局起床が8時。
あわててドタバタと入浴、準備事項など。
9時15分、朝食。
ブドー(巨峰)とキウイ。
豆のスープ。

10時、着替えて家を出る。
小雨。最初に小田急デパートでおみやげを物色するが
いいものなし、次ぎに京王に行くと、北海道フェアの
最中なので、持ち重りと大きさの適当なもの、と
いうことでイクラにする。
ヒコクさんには酒のつまみ、奥さんにはご飯のお供。

高速バス乗り場、メンバー三々五々。
婦人公論Kさん、三才ブックスTくん、オノ&マド、
バーバラ親娘、声ちゃん、jyamaさん。
Kさんはうっかりゆうべ5時まで飲んでしまってあわてて
来たとか。いいねえ。
K香ちゃん(バーバラの娘さん)、遠足のようなはしゃぎ様。

仕事を持ってきたjyamaさんには一人席に座って
もらい、私はTくんと隣り合わせ。
小雨もよいの中、出発。
ワイワイと、メンバーがメンバーだけに楽しく車中で。
途中、長野のヒコクさんと電話で連絡。
「今日は渋滞すると思う」
とヒコクさん心配していたが、別段そういうこともなく
順調に。双葉サービスエリアでの休息あたりのところから
雨も止み、まず花火には支障なくなる。
天気は幹事の責任ではないのだが、それにしても
初参加の人が多いので気になるのである。

3時15分、順調に伊賀良着。
ヒコク氏がホテルの小型バスを連れて迎えに来てくれていた。
挨拶して、ひとまず全員、久米川ホテルへ投宿。
「まあまあ、毎年どうも」
と挨拶される。

部屋割りを決め、花火モードに着替えて、ロビー集合。
バスで鯉料理『見晴』へ。K香ちゃんおおはしゃぎで、
私の膝の上に乗ってくる。それが片膝なので、
「おいおい、恥骨がまる当りで痛いぞ」
と言ったらオノが
「センセー、その状態は金を出しても買いたいという
人種がいますから」
と。

『見晴』でまずは到着を祝い乾杯。
松茸、お上人(ここ名産の茸)の網焼きから始まって
鯉の塩焼き、洗い、イクチなる紅色のキノコの寄せ物、
牛肉とキノコの炊き合わせ。
松茸の土瓶蒸しで日本酒、熱燗がうまい。
鯉はみんなに大好評、あっという間に骨に。
バーバラが牛肉炊き合わせにご飯を頼んだが、新米で
うまい、と叫ぶので、みんなも注文してちょっとずつ。
さらにイノシシ肉の豚汁、というかイノシシ汁。この肉が、汁が
天然の甘味でもう、うまくて。
腹がいっぱいで、しばらく動けず。迎えの車が来たので、
おばさんたちと記念写真を撮って、また来年、と。

途中でヒコクさんの自動車と待ち合わせて、本日の会場である
七九里村へ。
去年と同じ岡の上の方に、ビニールと毛布を敷いてそこに
陣取るが、やはりこれは下に降りていかねばいかんでしょう、と
足下の悪い中を社務所の方に。
去年のここの祭りの素晴らしい写真をサイトにアップして
いた人がいるので、そこを紹介。
ま、こういう祭りです。
http://tsutomu3.com/06year/0930nanakurijinjya/nanakurijinjya_1.html

今年の放送係のおじさん、妙に手なれたというか、
コントのような定番台詞をバスガイド口調でなめらかに
しゃべって笑いを誘う。桶振りの役の紹介のとき、必ず最後に
「今日こそ、男の、華を、咲かせますと、語っていた○○さんです」
と紹介。そのたびに私ら大笑い。

それぞれの集落の桶振りの青年が練り込んできてお祓いを受けた
後に、中央の柱に奉納した花火(煙火)をくくりつけ、
その下で火花を浴びる。
火花が観客の方にまで降ってくると、K香ちゃんたちパニック、
オノとマドはびっくりしながらも大喜び。
jyamaさんもK保さんもオノたちも
「硝煙の匂いがいい〜!」
と口をあわせる。

K香ちゃん、私とバーバラ、それからTくんと声ちゃんなどの
手にぶらさがってブランコしたり、マトリックス、と大エビ反り
したりして大はしゃぎ。おいおい花火が見られないゾ、と小言を
言いたいが、思えば彼女は母子家庭で、こうやってパパママ
風な男女の間でふざける、なんてこと、出来ないで寂しかった
のだろうなあ、ということに思いが至って、ちょっとウルっと。

桶振りが気負っている間中、周囲で日章旗や旭日旗(放送では
堂々と“軍旗”と言っていた)などの大旗が振られ、ヒコクさんも
振っていたが、雨で地面がぬかるんでいるところで地を履く
ほどの大きさの旗を振るので、泥が四方に飛ぶ。
顔にピチャッと冷たいものが当たる、と思ったら泥だったりした。

やがて七ヶ所の集落の(放送では堂々と放送禁止用語を用いて
BURAKUと言っていた)奉納と気負いが終わり、
仕掛け花火に移る。去年と同様、いや、激戦地のミサイル砲近くに
いるような有り様。シュルルー、パンパンパン! という感じ。
玉箱(弾箱。花火を収めた箱で、昔は本当に花火の火薬が入って
いたが、危ないというので近年はただの箱になった。アナウンスが
「この祭、年とともに、おとなしくはなって参りましたが」
と言っていたがホントのことか)をかついだ若い衆がエンヤエンヤ
と気負って練り、警備係のガードを押し破ろうとする。
押されて、カメラをかまえていた老人が倒れ、泥の中にベチャッと
落ち込んで半身泥だらけという気の毒な場面もあった。
仕掛け花火の最後は会場を縦断するナイアガラ、そして
最後の大三国で〆。以前、清内路の花火のときは大三国の三国とは
“三国一の花嫁”の日本・唐・天竺の三国をさすと教わったが
ここでのアナウンスによると、武田信玄が駿河、信濃、甲斐の
三国を支配した祝いに花火を奉納したので大三国だという。

最後のナイアガラあたりから小雨がまたポツポツ来だして
服がちょっと濡れたが、この花火の間中のほとんどは上がって
いたのだから凄い。K香ちゃんは途中でくたびれて岡の上の
席に戻っていたが、そこにナイアガラの最後のが落ちてきて
はじけて、ズボンに火薬の穴があいた。
みんなが“名誉の弾跡だ”と拍手。
しかし、確かに気がつくと帽子やジャンパーの肩は、打上げ花火
のガラや灰が落ちてきているのでザラザラ。靴やズボンは
泥ハネだらけ。祭りの後、という感じでよろし。
最前列で見学、撮影していたオノとマドが一番ハネひどし。

今年の西平集落の桶をかついだのはヒコクさんの柔道の
後輩で、去年は兄が、今年は弟がかついだ。
その家のところ挨拶に立ち寄るが、いつも祭りの日は
そこでバーベキューをしており、勧められておすそ分けに
預かる。桶をかついだお兄ちゃんに、サイン求められて書く。
やたら感激してくれて、何か純朴な田舎の住民をだましている都会人、
みたいな感じ。

勧められた酒が“部奈(べな)の酒”というもの。
原酒に近い、15度から20度という強アルコール度数なのだが
口当たりはきわめてまろやか、クイクイとみんなやって、
気がついたら一升瓶の1/3を空にしていた。
サイン一枚の代価としちゃ、過ぎるもの。

迎えのタクシーで宿に戻り、まずは風呂に入って、
髪にしみついた火薬の匂いを洗い流す。
女湯の方からもみんなのはしゃぐ声が。
部屋に戻り、K香ちゃん、Tくんとウノで一勝負。
それから酒盛り。
いろんな話が出まくったが、酒と疲れと眠気でほとんど
記憶になし。大変楽しかったことは覚えている。
バーバラ、jyamaさん、Tくんと次々おネムで脱落、
次が私で、そこらで3時半、さすがにおひらき。
寝るというか沈没するというか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa