裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

土曜日

しんじょ夫人

男爵令嬢、唐澤瑠璃子は父を救うため、泣く泣く卑しいネリモノ屋の妻となるが……。

※トーク&サイン会 中野昭慶監督出版記念パーティご挨拶

朝、目が覚めたら7時45分。
あわてて地下の浴場へ(8時半までのはず)。
複雑な作りで、地下で部屋キーを使って浴場へ
入ったあと、入浴には別のエレベーターで一階上がったり
する。脱衣所、かなり混雑。Kくんと会う。

こういうホテルの温泉には珍しく、赤茶けた酸化鉄の
湯で、じわっと体にしみ、非常に結構。
もっとゆっくりつかりたかった。
つくづく自分は温泉が好きだなと思う。

部屋に入って着替え、9時、朝食に。
Kくんと待ち合わせて。
浴場のあるのと同じ地下一階。
和食中心のバイキングだが、ぜいたくにシェフが
(さすがにシェフという感じでなくコック、であるが)
卵を目玉焼きにもオムレツにも焼いてくれる
サービスあり。もっとも今朝はあっさり、
納豆二パックと味噌汁、ツケモノ、それと北海道らしく
スジコの皿。飯は硬かったが味もまずまず。

ヤクザっぽい巨漢二人がちょっと離れたテーブルで
会話しながら食事していた。パンチパーマの兄貴分ぽいのが
「それはあいつのワンポイントだな」
「はあ」
「だからそのワンポイントをつくのよ」
坊主頭の弟分、しばらく頭をかしげていたが
「……兄貴、それ、“ウィークポイント”っスよ!」
味噌汁を吹きそうになる。

11時のチェックアウトまで部屋でぐずぐず。
講演に使う画像素材をネットで探したり。
このホテル、昨日の『オテル・ド・オテル』に比べ
料金も半額、部屋もベッドもそれなりに小さいが
快適度はどっこい、仕事は室内LANが使える分、ましか?

空は抜けるような快晴、台風一過。気温も上がって、
また夏が来たよう。こういう気候の時の北海道は格別。
今回の札幌行きは、台風に先駆けて入り、台風が過ぎてから
仕事済ませて悠々帰京という、実に晴男な塩梅になった。
結構々々。

11時、ホテルを出てタクシーで駅前、ビックカメラで
パソコンとモニターをつなぐコードを買う。
時間早いが昼食を、ということになり、Kくん行きつけという
ラーメン屋“一国堂”。昼どきは満員で入れないという。
ミソラーメンを頼むが思ったよりオーソドックスでおいしい。
とはいえ、私は昨日の華平のようなウルトラクラシックな
方が好み。

旭屋書店に入って、打ち合せ。
当初はパソコンをつないでYouTubeの画像を見せながら、
という考えでいたが、オノが電話で打ち合せしたときも
「つながらないと思いますが」
という情けない返事だったそうで、昨日、そのことで
「どなたかパソコンに詳しい店員さんがいらしたら」
と頼んでみたが、ちょうど休みをとっているとのこと。
案の定、いくらやってもモニターに映像映らず、
仕方なく、映像つかわないバージョンにする。
いろいろ考えて準備してきたのだが、まあ仕方なし。

トーク、椅子を用意しておいた方がよかったという感じ。
立って聞いている聴衆に座って話すのは落ち着かず。
オノのマイミクのさっきーさん、豪貴のマイミクのメグさん、
須雅屋、それに高校時代の友人の千葉哲平の姿などあり。
新刊が出たときに来ればもっと大きなイベントが出来るだろう。

終って、店長と少し雑談。
私のファン層の変化、という話を。
最近はアンケートもファンレターも、サイン求めに来るのも
圧倒的に主婦層が多いということ。昼のワイドショーなどに
出ているからだろうが、Kくんそれ聞いて、今進めている
新刊も主婦向けの作りにしたらどうか、と言う。

それからKくんと旭屋を辞して、スカイライナーで千歳へ。
ホームで待っていたら、前に並んでいた子供連れの奥さんが
私の顔を見てアッと小さく叫び、ノートを取りだして、
サイン下さい、と言ってきた。ついさっき、旭屋で話した
ことが証明できたような感じで、Kくんにドウデス、という
顔をする。

千歳着、おみやげを買うというKくんと別行動で喫茶店で
日記つけ。機内で合流。離陸後、ほとんどKくんは
寝ていた。私は松本清張『昭和史発掘』2巻と3巻。

羽田でKくんと別れてタクシー。銀座へ。
オノと携帯で電話、落ち合う場所を決める。
中野昭慶監督新著『特技監督・中野昭慶』刊行記念パーティ。
もちろん会には間に合わないが、中野監督からはオノともども
直々のお誘いを受けていたので一言お祝いなりとも、と。
ちょうど、帰りの迎えの車を待っておられた監督にお会い
できて、北海道のおみやげを渡せる。

おおいとしのぶ君他Gのメンバーにもひさしぶりに。
今度2年ぶりに和田屋の会を復活させるそうで、
ぜひ、と誘われる。
おおいくん、ネットでデマを書かれた、とちょっと憤慨。
ああいう連中は虫みたいなもので、怒っても詮ないものだよ、
と私、悟ったようなことを言って笑う。

いろいろな人が挨拶、名刺交換。あっという間に名刺が
なくなる。驚いたのは、モデラーの平田篤史、というより
大恐慌劇団のウンコ平田が、やあやあやあ、と駆け寄って握手
求めてきたこと。十年ぶりくらいだろうか、いや、もっとか?
今日はだいぶ懐かしい顔に出合う日であった。

中野監督と写真撮り、おそれおおいと言うオノも
並んで撮って、迎えに来た奥様、娘さんにも挨拶。
いつもお世話になって、と言われ恐縮。
そこで別れて、打ち合せがてら地下鉄で荻窪、
いつぞやハッシーと行った『客家亭』。
一度行ったきりだし、迷うかな、と思ったのだが、
稽古場からの帰り道と、道々ハッシーと交わした
会話を思いだしつつ歩いたらたどりついた。
荻窪は秋祭りだったのか、道筋に屋台がたくさん出ていた。

エビと茄子のチリソース、しじみ醤油漬け、
イカボール、ギョウザ、揚げパンなど。
新楽飯店なき今、気軽に台湾料理が食える店として貴重かも。
今後の打ち合せをいろいろ。年内に詰まっている仕事、
そろそろ優先順位を考えないと危ない。
二人で紹興酒1本あけ、私だけタクシーで帰宅。
K子とちょっとやりとり。
大和書房の本のことなど。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa