裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

土曜日

ムロタニ・ネツ造

納豆のねばねばが地獄くんの顔に……。
ちなみに『地獄くん』知らない人はこちら↓
http://www.geocities.jp/kindanhm/jigokukun.html

※ロフトプラスワン『文サバ』イベント

朝7時半起床。寒気凛冽、外を見るにちらちらと粉雪舞う。入浴して、9時朝食。グレープフルーツ、コーンスープ。ニュースサイトをみたら、『あるある大辞典』で起きた納豆ダイエットの効果は実は捏造だったとある。いやあ、それは信じる方が愚かだろう。納豆2パック喰ったくらいで痩せてたら水戸にデブはいねえやな。そんなことの判断は、周囲で納豆を食っている人間がどれだけ痩せているか、という事例を頭の中に思い浮かべるだけで充分だろう。

テレビが視聴率まずありき、で作られていることがこういう捏造事件の最大の原因ではあるが、しかしそこで捏造された事実というのは、大抵の場合、ほんのちょっとの理性さえあれば裏がわかるような、チャチなものにすぎない。なんでこんなことを信じるの? と言いたいものを人が信じるのは、信じるという行為自体に快感が伴うからだろう。

ある一つのことを信じる、ということは、他の、それに反する(かもしれない)情報を脳内で遮断することであり、それだけ、この複雑な世の中を単純化できる、ということだ。恋愛という行為の魔魅はまさにそれであり、ある一人の人を世界一の異性、として認識することにより、他の異性への目移りを遮断することが出来る、“世の中の単純化行為”なのである。信じるという行為は、快感を与えてくれるのだ。例え、それが騙されて信じる場合であっても。
「騙されたい人間が一分ごとに生れてくる」
というのはT・P・バーナムの言葉だが、これは真実だろう。人はテレビに知らず知らず騙されるのではなく、騙されようとしてテレビのスイッチを入れるのである。

「どうせわたしをだますなら だまし続けて欲しかった」
                (バーブ佐竹『女心の唄』)

日記つけなどざっとやって、白衣を用意し、新宿ロフトプラスワンへ。『文筆業サバイバル塾』イベントである。珍しく昼イベント。今日はバーバラがほぼ、仕切ってくれて私はただしゃべるだけでいいので気が楽、とはいえ、気圧のせいか精神状態最悪。

会場入り、斉藤さんが世にもすまなさそうな顔でやってきて平謝り、いや、誰も怒っていないからいいんじゃないの、と言う。オノもつっつくこと。酔った彼女を介抱しようとした酒井くんに
「バーカ、おめえに介抱されるほど落ちぶれてねえや、バーカ」
とか毒づいたことまでは覚えているという。
「ひでえ話ですよね」
「いや、そりゃひでえ」

宅急便に今日の午前中配送を頼んだ文サバ同人誌がまだ届いていない、というのでドタバタしている模様。腹が減ったので、近くにオノと飯を食いに出る。腹が減ったこともあるが、ずっと自分の講義ビデオが流れていて、その自分の滑舌のダメダメさに、聞いているのが
苦痛になったためもある。

『餃子の山東』で、私はギョウザと半チャーハン、オノはサンマーメン。サンマーの語源が思い出せなかった。後で調べたら“生碼麺”で、“活きのいい具材の麺”の意、だとか。横浜が起源で、もやしあんかけ麺のことである。楽屋に帰ったらアスペクトのK田さん来ていた。

さてイベント開始。客は昼にしては入って、40数人。最初にバーバラが苦労して作ったパソコン上の画像が動かない(テストでは動いたのに)というアクシデントあり、先行きが危ぶまれるが、しかし最近のイベントの多くに共通するパターンだが、最初はノラず、嫌で、出来れば壇上に上がらずに帰ってしまいたいと思うほどなのだが、いざ壇上に上がり、しゃべりはじめるとテンションがあがり、最初からノリのいいときよりいいトークが出来るというやつ。まさに今回はその典型で、バーバラ相手に漫才のようにギャグ入れつつ、出版界のこの悲惨な状況からどう脱していくか、を説く。ああ、講義でもこれくらい話せたらねえ。

途中休息をはさんで、4時半までドトウのように。とうとう宅急便の荷物はつかず、オノに事務所まで行ってとってきてもらった同人誌を売る。終って、何かテンションが別人のようになっていた。打ち上げに青葉に行こう、と皆を誘うが、まだ考えてみれば4時台で、青葉も炙り屋も開いてない。こういうときは、という感じで24時間営業のお好み焼き屋、大阪屋へ。オノ夫妻、バーバラ、しら〜、K田、jyama、大内カメラマン、キグルイさん、それとバーバラの友人であるなかちん&HAL.Tのオタク夫妻。
「寒いッすねえ」
とオノが言うので
「そういえば今朝、粉雪が舞ってた」
というと、
「あ、あれやっぱりホコリじゃなかったんスか!」
と。風情のない女だ。

もんじゃ屋、まだこの時間だと空いている。大内さんに
「カラサワさん、今日は前半、やる気なかったでしょ」
と図星をさされた。生ビールで乾杯、しかるのち牡蛎バター、明太もんじゃー(この店の表記)、それに大エビ玉。食べているうちに電話数回、『FLASH』からのインタビュー依頼(2ちゃん閉鎖騒動について)、それから中野監督から、某作品に紙芝居師さんを出したいのだが……という相談。後者のときはちょうど大エビ玉焼いている最中で、みんなにその焼き方の講釈を垂れていたのだが。途中で“後はまかせた”と、焼いたこともないjyamaさんにまかせてドアのところへ(携帯の電波が届くところ)。まかされた方は困惑したことだろう。

食べ終ったところで6時ちょいすぎ、今日は7時から、大阪芸大のKくんが東京での住居探しに来ているのと会って食事をと約束している。誘ったらバーバラ、なかちん夫妻、jyamaさん、キグルイさんがついてきた。渋谷までタクシー、そこからどこへ行こうかと思うが人数もいることだし、いつも文サバの後に行く英鮨。

オタク夫妻のなかちんさんらは『宇宙塵』に関わっている。懐かしのSFばなし、SF大会ばなしで盛り上がり、アニメばなし、『くりいむレモン』の話で大盛り上がり。
「亜美、とんじゃう!」
でバカ笑いができるのはオタの特権。非オタのjyamaさんにデストロン怪人とはいかなるものか、を説明して混乱させたり。

そうこうするうち、Kくんから電話で、8時に遅れるとか。まあ、話が盛り上がっているのですぐ1時間くらいたち、そこで帰宅するjyamaさんを送るのと入れ替わりに彼を英鮨へ。彼の大阪芸大での作品『怪獣迷子』のセル版をもらう。ジャケ画(荘司克也)が大変よく、なかちん夫妻も絶賛。腹も空いているだろうとKくんに
「おごるからどんどん食べなよ」
というが、
「まあ、八分目というところで」
などというので、私もなかちんさんも少々不満。おじさん族というのは、若い人間は常に飢餓状態でいるべきと思っていて、こっちのふところが心配になるくらいガツガツと食べてほしいものなのである。

そこで店を出る(お好み焼きもこの寿司屋も激安。まあ、『バル・エンリケ』や『八起』の値段に比べればそれは)。Kくんをどこかのカプセルホテルか漫画喫茶に案内するのをバーバラたちにまかせ、タクシーで帰宅。メールを何通か書いて、寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa