裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

10日

水曜日

ベジタリア〜ンのコニャニャチワ

バカボン、野菜を食べるのだ。

※『社会派くん』号外原稿、打ち合わせ二件、池袋『故郷』食事会

朝8時起床。ぬくぬくと眠る。私は暖房が効きすぎるくらい部屋を暑くして寝るのが好きなのだが女房はそうすると暑すぎる、と言って怒る。ただいま仕事別居中なので部屋を自分好みの温度に出来て快適。仕事(と簿記の試験)が終わって帰ってくるとこうはいかなくなる。

入浴後、9時食事、ブドーとオレンジ。食ってすぐ、『社会派くんがゆく!』の幡ヶ谷妹切断事件の号外を書く。村崎さんが鬼畜な罵倒芸でもうさんざ書いているので、私は対比の意味でも、ちょっと押さえめに。それでも内容はずいぶんとまあ、キツく。

阿部能丸くんから電話、次のウルトラマンメビウスに出演したから見てほしいという件。昼は12時半、母の室で。キャベツやきうどん。食べてまた書き続けて、なんとか1時半までには編集のK田くんに送る。時間的にすぐに家を出ないといけない。急いで支度して、飛び出す。今年はずっと出勤がタクシーになってしまっている。

2時、時間割にて打ち合わせ、某社Nくん&某社Sさん。Sさんとは初顔合わせ。Nくんから昨年末に打診があったある企画について。その企画そのものについては、まあ、スケジュールが合えば乗ってもいい、くらいの気持ちだったのだが、そのメールの中に出てくるSさんの会社がちょっと気になって、打ち合わせに臨んだもの。ひょっとしたら面白いことになるのでは、という予感があった。

果然、向うが持ってきた企画が、こちらが練っていた企画の母体にピッタリというもの。ヒサシを借りる形で、
「こういうのがあるんですが、いかがですか」
とプレゼンしてみると、願ったり叶ったりという反応。パズルのピースが、ピタッと合わさった感じで大いに気分よし。自分でも驚くくらい、こういうときは頭が回転し、向うが感心するキャッチコピーなどがひょいひょい浮かぶ。あまりに細部まで具体性を以て話すから、私がもうずっと前からこういう企画を立てていたのだろうとNくんもSさんも思ったことだろうが、ほぼ、全部、コレダと思った瞬間に頭の中に“出現した”アイデアなのである。人間の脳の不思議さよ。

その先まで構想がふくらむが、あまり先走ると構想が妄想になる。走り出したいところを足踏みしてとどまる。とはいえ急に、浮遊していた種々の思いに具体的な形が与えられた感じ。

しかし、この企画、弱点もある。
「今までの仕事に加えてこれが全部動き出したら、確実に血を吐いて倒れる」
ということ。うーむ。昨日電話来た企画もあったのだよなあ。ナンにせよ、今年は春から縁起がいいわえ、である。事務所でオノとバーバラに今後のビジョンを話す。

講演仕事、一件決まり。大阪だそうな。今年も本当に本格的に日常業務。時間割にとってかえし、東急エージェンシーさんと打ち合わせ。盛り上がる打ち合わせのあとはちょっと辛気臭い打ち合わせだったが、前向きに話しが出来たし、今後の協力もとりつけた。順番が逆だったらどうなっていたことか。各方面へ、とにかく顔をきちんと出さないと。

また事務所。いくつか連絡をとったり、資料の確認したり。6時、事務所を出て、池袋駅へ。名古屋からゆめすけさんが上京しているので、歓迎会。ゆめすけさんのリクエストが“唐沢先生の日記に出てくるお店”だったが、和食屋さんを和食の店にお連れするのはどうも、であったし、あまり人数多く必要とするところも急場ではいかんし、ということで、池袋の『故郷(ノタガ)』に決定。名古屋ですでに『楽』に行っているjyamaさん、ゆめすけさんと同じ門仲の寿司屋『匠』の常連であるrikiさん、それにしら〜さんを誘い、池袋駅北口改札で待合わせ。

今日はノタガのお母さん、いる。電話で前もって頼んでおいたのは蒸し肉とホルホグ(オーブン焼き肉)に鍋(ハロントゴ)だが、みんながあまりに美味い美味いと食べるので、もう一品、チャンサンマハ(茹で肉)を頼む。これがまた絶品で、お母さんがナイフで脂身を切り分けてくれて、それを赤身と合わせて食べてみて、という。馬でも鯨でもそうだが、美味い肉の食い方というのは脂身と赤身を合わせて食べること、なのだな。口に入れると、ほろほろとほどけ、そして残ったカタマリを歯で噛みしめると、ぷしゅっ、という感じで旨味が口中にあふれわたる。肉を食う幸せ、というものが具現化して、そこに突如出現するのである。ゆめすけさん、皿に残った、溶けた脂の固まったものまで赤身になすって食べていた。ここの羊の脂はよほど新鮮なのか、いくら食べてもまるで胸焼けせぬ。

胸焼けしないひとつの原因が牛乳酒と一緒に飲むからではないか。毎度々々、ここでウマイウマイと飲んで、お母さんに“ヨク飲ムネ”と呆れられる牛乳酒だが、今日も32度のものから始めて、38度、46度のものと、5人で三本、空けてしまった。

お母さん、相変わらずテンション高く、このあいだテレビが“モンゴルうどん”の取材をさせてくれと来たけど、うちのうどんはチャンサンマハを茹でた汁をダシにしてつくるので、うどんだけ食べようとしても駄目、と断ったとか、どこだかのジンギスカンチェーンの経営者たちがこっそり食べに来て、メモなどとっていたので詰問したら、この値段で羊を出されてはうちは破産だ、と言われたとかエトセトラ。いや、強気なこと。朝青龍を横綱に君臨させている、モンゴル人の闘争心の血がお母さんの体にも流れているのだろう。

出て池袋駅まで歩く。お母さんの自慢が
「ウチの羊はいくら食べても胸焼けしないし、ウチの牛乳酒はいくら飲んでも残らない」
というものだが、これはまさに真実で、しかし真実故に困ったことは、どんなにここでたっぷりと食って飲んでも、
「まだ飲み足りない、食い足りない」
と思わせて、もう一軒、になってしまうことである。
「いや、ここまで来たならゆめすけさん、アンナちゃんを見て帰らないといけません」
と、『浅草屋』へGO。入ったとたんにアンナちゃんが
「あらー、あけましておめでとうー!」
と挨拶してきた。

ゆめすけさんもjyamaさんもその可愛さ、オヤジころがしのサービス精神を絶賛、ゆめすけさん
「ウチの店にスカウトしたい」
と。以前はやや、やせ過ぎかなという感じもあったのだが今日みたらちょっとふっくらして、なお可愛い。それでいて、肌が血管が透けてみえるほど白い。彼女、髪を一房だけ長く伸ばして金髪に染めている。ゆめすけさんがその髪のことを“力髪”と表現したのに感心。サムソンですか。

彼女のオススメで(やはりいいように転がされている)兵庫の酒“龍力”を一本とらせられる。もっとも、うまい酒であった(アンナちゃんも飲む)。しら〜とjyamaさんはさすがにダウンしたが今日は私も元気で、ゆめすけさん、rikiさんとグルメばなしなどしながら、11時半までにほぼ、一本日本酒を空けてしまった(ちょっと残ったのは店員さんたちに進呈)。アンナちゃんにサイン、お客さんに握手求められる。

タクシーでしら〜、ゆめすけさんと乗り合い。ゆめすけさんに携帯で電話で、これからさらに人と会って飲むとか。いや、このタフにはかなわぬ。赤坂見附でゆめすけさん下ろし、しら〜さんとそのあと、ちょっとと学会企画がらみの話をしながら新中野。帰ってご機嫌でバタン。常人の3日分くらいの酒を一晩で飲んだ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa