裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

土曜日

小惑星中学生高校生

言ってみただけ。

朝4時ころ、またゲホゲホ。とんとグリーバス将軍のような状態になる。5時半ころなんとかおさまり、寝ようとするが朝日が差し込みまた寝るあたわず。第一、6時半に目覚ましが鳴る。

K子に従って7時、朝食。スイスホテルの朝食は気に入っているひとつ。生しぼりオレンジジュース一杯、目玉焼きにカリカリベーコン、
胚芽パンをトーストしてブルーベリージャムをつけて。それにコーヒー。客はアジア系多し。

神戸のオフ会に行くK子を見送って、日記つけ、少し寝る。集合が京都テルサホール10時半なので、テルサホールとはどこか知らないがまあ、目分量で1時間あればよかろうと思ってギリギリまで。今回の私の『怪談之怪』出演は佳声先生の付き人的な性格のものなので、あまり気を使わないですむ。

9時半、チェックアウトしてタクシーで梅田駅。途中で佳江さんから電話、もう京都に到着したとのこと。新快速電車で京都まで。車中美人の多いのに目の保養をさせてもらう。さすが京美人の産地。

京都駅着が10時半かっきり。
京都駅(相変わらず悪趣味なビル)で降りて、さてタクシー乗って行くか、と乗り場でウロウロしていたら『幽』のSくんと平山夢明さんがいた。タクシー便乗させてもらう。ラッキーであった。

京都テルサ、何もないような場所に建っているが建物自体は大変に立派。フィットネス系の施設が中心らしい。さっそく控室に通される。佳声先生と佳江さん無事入っている。京極夏彦氏、東雅夫氏、木原浩勝氏、山田誠二氏などに挨拶。佳声先生、これだけのベテランなのだが、毎回初めての会場だとかなり神経質になっていらっしゃる。こっちは
「出ればウケるのはわかっているんだから」
と、本人をおいて悠々(?)としたもの。京極さんに佳声先生のネタで、
「火星人が“ナースナース、トウガンカボチャー”と言いながら攻めてくる『宇宙戦争』の紙芝居があったそうですよ」
と教える。
佳声先生によれば原形は“ナースナース、ハジケカボチャー”で
「……これは火星語で“言うことをきかないとカボチャのように頭をはじけさせてしまうぞ”と言っているのであります」
というような説明があったそうで、京極さんに大ウケ。
京「なんで“ナースナース”なんですかね?」
唐「たぶん、最初は火星なんで“マースマース”と言っていたのが英語のわからない紙芝居師が“ナースナース”といい間違えて、それを“茄子”の意味にとって、連想でトウガンカボチャをつけ加えたんでしょうねえ」

客入れ20分前にリハをちょっと。
客席、広く、席数も800席と多い。舞台も大変に広く、立派なものである。構成・演出の人、ガタイがいいなあ、と思っていたら『化猫魔界少女拳』で“鬼畜”の役をやった伊藤えん魔氏であった。私の紙芝居解説は5分くらいで、とのこと。5分のトークのために京都まで来たってのはネタになるかなと思って喜んでいたら、10分程度やっていいと後から修正があった。佳声先生に、画像を操作するパソコンの使い方を係が説明している。この取り合わせが凄い。後ろの大スクリーンいっぱいに『五十鈴姫』が映し出されるのでが素晴らしい。

控室に戻って弁当使う。ちらし寿司弁当で、ちらし寿司におかずが満載というのはどうかと思ったがさすが京弁当でおいしい。佳声先生、本当にあがっていらっしゃるようであまり咽に通らない様子。それでも大阪に現在も“コンドーム普及紙芝居”なんてものがある(「姓は近藤、名はむーちゃん」なんて名乗って主人公が出てくる)ことを教えてくれたので、“それ、解説の対談で話しましょう”と言う。

1時、開演。最初は東雅夫さん司会で、京極さん山田さん、それから京都在住のホラー作家森山東さんの“京都の怪”、次が私と佳声さんの対談、それから紙芝居『五十鈴姫』。対談もウケがとれ、続いての紙芝居はたぶん、初めて見るという人が多かったと思うが、“こんな世界があったのか”的な驚きと笑いと拍手とで満場の観客を完璧に引き回して大成功。最後の“どうする〜アイフル〜”では会場全体が
ひッくり返っていた。

きちんとウケて満足したと見え、佳声先生もうってかわって上機嫌。楽屋でいろいろ話す。物販コーナーで猫三味線のDVD売っていた佳江さん(“梅田商店”という法被を着ていたが、これは佳声先生のお父上がやっていた小間物屋で使っていた本物の戦前ものの法被だそうである)もちょっと興奮して返ってきて、用意していた10本のサイン入りDVDが休み時間にあっという間に完売した、とのこと。喚びにと持ってきた残り10本もたぶん売れるだろうから、急いでサインを、というので特典ジャケットに佳声先生と二人でサインをいれる。

3時、イベント終了。佳声先生と二人、物販コーナーに立ってDVDを売る。即、買って行く人、財布の中身と相談しながら思い切って買ってくれる人、さまざま。追加の10本もほぼ無くなるが、サインしたジャケットが1枚足らず、仕方なく9本であきらめる。さはさりながら、7000円という高額商品がこう飛ぶようにはけるのはやはり凄い。

旭堂南湖さんも来てくれたので挨拶。こっちが忙しくて最近なかなか南湖さんの講談が聞けない。佳声先生、女の子たちに大人気で、握手を求められたり、並んで写真撮影を求められたり。関西系の紙芝居関係者の人も見えていて、その中の1人が、なんと対談で話した『コンドーム普及紙芝居』の作者(女性)であった。

荷物を荷造りして宅急便に出し、タクシー呼んで(なにしろ周囲が寂れているので呼ばないと拾えない)もらい、新幹線で東京へ。車中、缶ビールで乾杯。いい京都出張だった。咽、また痛み出して嫌な咳をし、佳江さんに心配される。新幹線内で本日放送の『ポケット!』のブログ挨拶文、一本書いてメール。仕事すること。

東京駅着が6時40分、大丸デパート上の金沢料理『金城楼』で食事しながら、恵比寿のイベントのことを打ち合わせる。潮健児さんなどのことを話したら佳声先生から
「しかし唐沢さんは、いろんな人の劇的な場面に立ち会い
すぎですよ」
と言われる。快楽亭のときもそう言えばそうだった。食事、まずまず。鴨と麩の治部煮がさすがに味わい深い。先生と少し日本酒過ごす。タクシーで帰宅、半身浴しばし、ちくま学芸文庫『偶然の本質』
(アーサー・ケストラー)読みつつ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa