裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

13日

日曜日

惟幾ないでしょう

陸軍の暴発を押さえるには私が腹を切るしかないでしょう。
                   (阿南陸相・談)

朝6時半起床。空は曇りのようだが、雨は降っていない。ラッキーである。入浴し、K子の入れたコーヒーにたっぷりミルクを入れて、サンドイッチを食べて朝食。風邪っ気はまだ抜けない。
陽射しはだんだん強くなる。

7時、飲み物を買ってタクシーでお台場ビックサイトへ。昔はお盆時期は高速もほとんど朝など無人(並走しているのは大概が同じコミケ参加者の車なので、互いに挨拶など交わしながら行った)同様だったものだが、最近はお盆の日曜と言えどかなり混雑。

今回は西館。西館は何か陰気で嫌いなのだよなあ、などと思いつつ、ブース設営。ちょっと印刷屋さんに頼んだ冊数と出来上がりのそれとが違うというトラブルあり。名古屋からコミケ初体験のためにやってきた明木さんや、なをき、と学会、ロトさん、新田五郎さんなどと挨拶。立川流には鯉朝が手伝いに。ユリさんは身重の体で参加。まいどのことながら、コミケでは次から次へと知人友人、ファンの皆さんが挨拶に来るので、全てを覚えていられず、また記載も出来ず、その点ご容赦を乞う。

岡田斗司夫さんのところは配本する冊数が三千冊を超えたが報告する(混雑緩和のため三千冊を超えると実行委員会に報告の義務がある)のを忘れたため、他のブースに置かせてもらっている。

オノも無事に来て初コミケ、いろいろ準備。『Bの墓碑銘』、一部提出用のを係に渡したら、何が悪いのか、
「ちょっと確認してきますので」
と販売準備を差し止められる。すぐ、“問題ありません”になったが、ちょっとドキドキした。

10時に開館。先日のネイキッドロフトでのトークでも言ったが、
「最初に自分でコミケのブースを出したときは、とにかく唐沢俊一の出す同人誌なのだから薄い内容のは出せないと気張って、濃い内容のを出したらほとんど売れなかった。その反省からその次からは薄く々々していったら順調にハケるようになっていったが、あまり薄いのばかりが続くといけない。今回は久々に濃い内容のを出すが、さてどうなるか……」
であった。予感的中というか、内容がB級映画関係者追悼記録というマニアックに過ぎるもののせいか、あまり出足がよろしくなし。表紙も単色で、1000円という値段で買うにはちょっと地味すぎたかもしれず。また、治りきっていないノドをかばって、あまり声を出せなかったということもあるかもしれない。

とはいえ、いつもは1時くらいまでが勝負で、それ以降はほとんど売れなかったのだが、今年は1時以降も断続的に売れ、最終的に箱をほとんど開けることになった。あと、去年は
「ちょっと見せてください」
と言って立ち読みする人はほぼ、買わずに去ったが、今年は丁寧に『Bの〜』を読み、南湖さんの同人誌『大坂城』(極めてわかりにくいが『東京タワー』のパロディ)を読み、両方買って行く人が多かった。K子のやおい本は順調、『ぶらりオタク旅』もすぐ売り切れ。

オノが“たぶん来ている”モヤシくんを携帯で呼び出して、申込書を手渡す。今年の冬コミはあぁルナ20周年記念本をうちと合体で出すのである。カスミ書房さんから『セブン回想計画』いただく。私も執筆しているわけだが、他の執筆者もすごく、mixiなどで
「これはいったいどういう同人誌だ?」
と一部で話題になっていた模様。

オノには知人に頼まれていた加藤礼次郎の同人誌を買わせに東館にやる。初コミケで西館〜東館の横断を体験するのも一興だろう(コミケのテーマソングは“♪探し物はなんですか”の井上陽水『夢の中へ』なのだが、同じ陽水の『東へ西へ』も影のテーマであろう。
“♪がんばれ、みんながんばれ、オタは流れて東へ西へ……”)。

石黒直樹さん、こんとうじさん(お仕事の依頼も受けた)、小学館の鈴木さん(コスプレ?)、ちょんげらさん、本郷さんK川さん、K子の簿記仲間、加ト吉さんの友人さんたち、それから美好沖野さん、五味くん、enoさん、najaさん、jyamaさんなどいろいろさまざまな方々来訪。差し入れ、挨拶等々感謝! バーバラは新刊が届いていない、と騒いでいた。

2時、とりあえず所期の目的冊数は売り切ったので撤収。昨日、豪雨で中止になった花火大会の客が夕方から押し寄せるのでどうなるか心配だったが、無事、さまで待たずにタクシーに乗れる。渋谷まで行って私とオノを降ろし、K子は中野の仕事場まで。

オノにバイト代。もっとどっと売れればその一部をボーナスとして出す、という話だったがバイト代程度になったのは申し訳なし。それでも喜んでくれた。昼飯を会場で食い損ねていたので近くにうどんを食いに行き、そこでアサヒビールで水分補給。次回冬コミは今回の下巻がメインだが、もう一冊、売れ線をねらったものを出そうと話す。新企画含めた今後の話なども。心ないファンから無神経な声をかけられたことも頭の隅にあり、ちょっと新分野への移行を具体化させないとな、と思う。

そこからタントンマッサージ。今日は揉まれていい気持ち、というよりキツい。体が回復しているということか、と考えたり。仕事場に戻り、さて、ではとオノとタクシーで東新宿。タクシー降りたところで自転車でやってきたIPPANさんに会う。元気だねえ。

明木先生、談之助夫妻の近くに座る。声ちゃんも来て、さっそくK子の言葉責めにあっていて、それを聞いて明木先生が“あれが噂の”とちょっと感動していた。あと、店長がお礼を言いに来た。このあいだ、『ランティエ』でここの冷麺を取り上げたからであろう。

IPPANさんの依頼で乾杯の音頭をとり、さて打ち上げ開始。夏バテか、うどん食ったせいか、あまり焼き肉には箸が伸びず。豚足、焼き海苔など食う。明木先生が明後日の夜、あいているというので大木屋に電話するがすでに貸し切り後。ここもとりにくくなった。仕方ないのでチャイナに電話する。

開田さんの席から“唐沢さん、北海道の赤飯は甘いって本当?”と質問が来たので、赤飯自体が甘いのではなく、赤飯に甘納豆を入れるのだ、と教える。加えてオノに、
「東京の葬式饅頭は普通の饅頭で、それを青白に塗りわけている」
と教えたら驚愕。
「ええーっ、葬式饅頭ってのは大きめのどらやきを二つに折ったような、ああいうもんじゃないんですか!」
と。私もそれを知ったときには驚いたものである。

10時過ぎ、お開き。タクシーで帰宅、まだ夏は終らないのだなと今後の予定を眺めて思い、ちょっと楽しくなる。体はバテているが気はバテていない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa