裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

土曜日

オタアミの海岸散歩する

男女オタクの二人連れ。

朝8時45分起床、なんとか入浴ざざっと済ませて9時朝食に間に合う。青豆のスープ、夕張メロン。例の極楽とんぼ山本の事件を受けての萩本欽一の球団解散宣言もなんだかなあと思ったが、すぐそれを撤回するのもなんだかなあ。『欽どこ』の高部知子の事件のときもそうだったが、こういうときのファンの混乱した心理をぐいとつかみ、自分の利益にしてしまうのが萩本欽一という人は抜群にうまい。優れた喜劇人は(いや、喜劇人に限らず大衆の前に立つ職業の人間は)優れたアジテーターでなくてはならないわけで、その点については感服する。しかし、ちょっと最近、それが見え見えに過ぎているのも事実。

ジャック・ウォーデン死去。85歳。この人の俳優人生は二期に分けられる。初期は『十二人の怒れる男』や『ドノバン珊瑚礁』などの、アメリカ的軽薄さをダイレクトに表した演技が評判だった。人一人の命が救われるか否かで、ヘンリー・フォンダやリー・J・コッブが激論を交わしている中、ひたすらヤンキースの試合のことしか意中にない陪審員(『十二人の〜』)、アメリカに妻子を残していながら南太平洋の島で現地妻を作り、三人も子供を産ませてしまう軍医(『ドノバン〜』)。やがて彼の娘がその島にやってくることになり、真面目人間のジョン・ウェインが彼の代わりにその子供たちの父親を名乗らざるを得なくなる。決して悪人ではないのだがポリシーも計画性もなく、自分の快楽を何より優先させる現代人的キャラクターが逆に印象的だった。

ところがそんなキャラクターを演じた彼が一転、後年は主人公を助け、見守る便りになる友人役を持ち役にするんだからわからない。転機になったのはアカデミー賞候補になった『シャンプー』だろうか。ここで、かつて自分が演じたような、軽薄で金目当てに有閑マダムと浮き名を流しつつ美容業界での立身出世をねらうプレイボーイ役のウォーレン・ビーティに、自分の妻と彼との関係を知りつつ資金援助を申し出る男をウォーデンは演じている。彼の愛人は実はビーティのかつての愛人だったという乱れた関係だが、最後まで女性との関係を肉体を通じて、としか考えられなかったビーティと対照的に、ウォーデンは真実の愛に目覚め、妻と離婚して、全てを捨てて愛人との結婚を誓い(つまりビーティから女性を奪い)去っていくのである。

それ以降の『チャンプ』『評決』『天国から来たチャンピオン』などの、表立ちはしないがいつも側にいてじっと主人公を支え続ける、“頼れる友人”としての役柄は、全てこの作品のウォーデンの後の姿、として重ね合わさって見える。役の人格向上と共に、本人のイメージもそうなっていった珍しい例であろう。

もっとも、『ナイル殺人事件』では、アルマジロの尿を直接血管に注射するという怪しげな健康法で患者を植物人間にしてしまい、訴えられかけているという変な医者を演じてこれも面白かった。彼を訴えようとしていた若い億万長者の女性が殺されて、容疑者の一人になるのだが、しかし殺害の方法や時間などに対するポアロの推理は全て医者である彼の診断にかかっているのである。こんなアヤシゲな医者の診断を元に推理して大丈夫か? と思ったのは私だけではあるまい。

昨日のハイテンションの反動で、今日はぐずぐずの体調。それでもヤフーコラム『眠りと雑学』の原稿、書いてメールする。4時、渋谷に出てタントンマッサージ。若い女性の先生で、ソフトな揉み方でもあったため、グーと寝てしまうが、自分でもはっきりとわかる、疲れのたまった寝方だった。ときどき呼吸が苦しくなる。

『うつうつひでお日記』読むが、中の編集との会話の部分で、吾妻さんが『アイラブ火星人』と言っているのを編集が知らなかったのはまあ、推定される年齢から言って無理もない。知らないものは間違えていても訂正できないし(正しくは『ブラボー火星人』。たぶん、『アイ・ラブ・ルーシー』との混同だろう)。しかし『がき刑事』てのはどうか。まさか『がきデカ』を知らないでマンガの編集をやっているわけでもあるまいし。

どんどん人は古いことを知りたがらなくなっていく。樋口監督の『日本沈没』のミクシィのレビューを読んでいたら
「どうせ、原作はマンガだろう(多分)」
と書いている人がいて全身の力が抜けた。こういう時代になったか。

仕事場でファックス等をチェックし、6時、中野へ。アニドウ恒例上映会。芸能小劇場、満席の盛況。いつものさざんかQさん、まるさん、植木さんなどの他、中田雅喜さんやFKJさん、加藤礼次郎、中野貴雄なども来る。ぎじんさん、まだアルコールが残っているとのこと。加藤・中野の二人は、某知りあいのお見舞いの帰りとのことだった。胃を全摘出したというから、王監督と同じである。全然情報が入ってなかったので驚いた。そう言えば、今朝メールでこれも知人が明日から癌治療で入院、という知らせを受けて愕然としたばかり。

アヌシー映画祭が選んだアニメベスト100、というのが発表されたそうで、それに対抗してアニドウが選んだアニメベスト100というのを選出して、その中から何本かを上映しようという試み。両方のリストが手渡されたが、見てみるに、もう少しなみき会長の趣味が満開になるかと思ったが、意識したかやや、お行儀がよい印象。アヌシーの100選にはチャック・ジョーンズが二本も入っているのに、アヴェリーが『太りっこ競争』のみ、というあたりがちょっと首をかしげるところ。オペラネタでアヌシーが選んだのがジョーンズのバッグス・バニーの中の『これがオペラだ』、アニドウがアヴェリーの『へんてこなオペラ』というあたりが色の違いかもしれない。どちらにも手塚治虫の『ジャンピング』と『おんぼろフィルム』が入っているが、それほどのものかな?

上映作品はほとんど既観のものだったが、ロバート・ミッチェルの『アンクル・サムの大冒険』(1970)が大冒険と言いながら妙にクールなムードで面白かった。なお、今日はアニドウのフィルム編集機が壊れたそうで、一本ごとになみき会長自身が掛け替えをするというある意味ぜいたくな上映だった。

終って加藤、中野両氏を加え、植木、さざんか、まるの常連メンバーで食事。植木さんがパソで探してきた店がみつからず中華になる。また中野監督の独演会みたいに。紹興酒二本あけたが、ちょっと中途半端な酔いのまま植木氏にタクシー便乗させてもらって帰宅。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa