裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

月曜日

土用のウヒヒのヒ

ウナギ食ってセイつけて……ウヒヒのヒ。

朝6時半に目が覚めてしまい、そのあとぐずぐず。8時起床。今日は一日寝るぞーとは思うがそう人間、ベッドの中だけにもいられない。9時朝食、スイカとジャガイモのスープ。かなりどろりとしたスープだがパイデザ夫妻の大好物。母、昨日の舞台では佐々木輝之が気に入ったとか。やはりいい男好きなのである。橋沢さんのことも、“貫録がある”と言ってはいたが。

トイレ読書『ウォーホル日記』そろそろ終盤。ちょうどエイズの大ブームの時期で、ロック・ハドソンや、ウォーホルの恋人だったジョン・グールドがエイズで死んだりして、精神的にかなり不安定だったのだろう、水晶治療などにハマったりしている。バブル景気の真っ最中なので日本人がやたら出てくるのも可笑しい。日記には死への予感は書かれていないが、これはそのことを口にしたり思うことへの恐怖にさいなまれていたため。しかし、ほんの一年後に死ぬ人間の日常を読むというのは日記というのは妙なものだ。

公演日記をつけ、橋沢さんや原田さんからのメールに返事。麻衣夢ちゃんからマイミク承認メールが来た。週刊ポストのゲラチェックが今日までなので、事務所へ出る。ここ数日オノも舞台にはりついてくれていたので、まったく整頓掃除等されておらず送られてきた書籍や手紙類が堆をなし、事務所というよりは物置である。その乱雑の中でゲラ返送。マッサージを予約して、パルコブックセンターで本、十冊ほど買い、すき家でキムチ牛丼。

タントンマッサージ、ひさしぶり。疲れがたまっているからたぶん寝るだろうと思ったが、案の定寝入ってしまう。しかし背中の凝りをぐいと指で押されるだけでなぜこうも気持ちがいいのか。

その後、HMVに寄る。CDのフロアを見てからDVDのフロアに行き、ボックスの棚を見ていたら『ミス・マープル・ムービー・コレクション』という四枚組のボックスがあったのに仰天する。ミス・マープル映画と言っても、これは1960年代に、マーガレット・ラザフォード(『月ロケット・ワイン号』のグロリアナ太公妃)がミス・マープルを演じたシリーズである。白黒であり地味であり、かつ時代の制約でクリスティの原作に必ずしも忠実でない(3作目の『船上の殺人』などはミス・マープルのキャラクターだけ借りたオリジナルである)ということで、評価は必ずしも高くない。ただ、名老女優ラザフォードの演技を楽しむというだけの価値の作品群であって、原語版を洋モノビデオ屋で買うしかないかな、と思っていた。それが字幕入りで見られる時代になったとは。

それから西武で買い物し、帰宅。半身浴たっぷりして、塩ホルモン焼き、アボカド、ハムなどで生ギネスと酒。ゆっくりとマープルものの第一作『夜行特急の殺人』(原作は『パディントン発4時50分)を見る。夜行特急が出てくるのは冒頭だけだが、その、いかにもツクリモノめいた殺人事件の描写が実に60年代的でいい。これを楽しめるか否かがこの作品にハマれるかどうかの境目であろう。驚いたのは、チョイ役で若き日の(そう若くもないか)ジョーン・ヒクソンが出ていたこと。後のBBCの『ミス・マープル』シリーズでマープルを演じたあのジョーン・ヒクソンである。まさかこの作品に出たときは、後年自分がミス・マープルを代表作にするとは思っていなかったに違いない。あのポアロ役で有名なデビッド・スーシェも、その前にはピーター・ユスティノフがポアロを演じた『エッジウェア卿殺人事件』でジャップ警部の役を演じていたし、こういうことは役者の世界ではよくあることなんだろう。

12時半ころ就寝するが、半身浴したせいか、足が火照って、よく寝つけず。鮎川哲也の初期短篇などを読む。

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