裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

金曜日

アニドレイ・タルコフスキー

難解なアニメを上映しそうですね。

朝8時45分起床、今日も朝食30分ずらし。霧雨のような雨もよい。入浴もさっさと。今日はヘアカットする予定なのでシャンプーのみでリンス省略(ここらへんが貧乏臭い)。

9時朝食、青豆のスープ、夕張メロン、青汁。麻黄附子細辛湯のんで、今日のハードスケジュールに備える。とは言っても午前中に動かねばならないというようなものでないので気は楽。午前中の出仕事は本当に気伏せである。

弁当を使って(お菜はキンピラと焼きタラコ、卵焼き。それにニラと油揚の味噌汁)12時半、家を出て代官山。15分遅れでエド・エド。髪をやってもらう。Sセンセイ、“夏向きにちょっとしてみました”と言うが私のヘアスタイルはいじりがいがないと思えるくらい変わりばえせず。スッキリすればそれでよし、といったところ。

代官山からタクシーで事務所、車中モバイルでメールチェック。必要な返信のみ事務所でパパッとやって、またすぐ出て雨の中『時間割』。自宅を出るときに赤いビニール傘があったので何の気なしにそれを持って出たのだが、開いてみると、一ヶ所だけ色違いのところがあって、そこにゾウさんの絵が書いてあるプリティーなもの。これをもうじき50になろうというおじさんがさして歩いているというのは。

ミリオン出版Yさんと打ち合わせ。主要打ち合わせはK子との書き下ろしの単行本のことであるが、それに派生した企画として別件のものをこのあいだ思いつき、ちょっとフってみると“実は……”と、その企画をノセるのにちょうどいい媒体が、まさにジャストタイミングで出来るという話を。これこそ機至るの兆候、といささか強引にYくんに、その話通すようにプッシュ。

本日のスケジュールこれでまず一件消化、しかも上々のすべり出しに気をよくして事務所に帰り、上記企画に関して少々頼みごとある人に連絡。30分後にオノと共にタクシーで麹町のMXテレビスタジオへ。エフエム東京のビルの隣で自社ビルだというのだがそんな看板を見た記憶がない。車中
「そんなところにスタジオビルがあったかねえ?」
と話していたのだが、着いてビックリ、なんと以前トンデモ本大賞の打ち上げをやった東條會舘ではないか。訊いたらこの7月に、サテライトスタジオとしてこのビルを買い取ったとのこと。もっとも、居抜きで買って、応急で使っているという感じなので、出演者控室というのは結婚式の関係者控室。調度とか照明、内装が妙に豪華で笑える。放送が始まって、いつもの癖で財布等、荷物を控室に置いてスタジオ入りしたが、帰ってきたとき気がついたのだが、そういう控室なのでドアに鍵がついていないのである。向後は貴重品はスタジオまで持っていかなくてはな。

なにしろ入りが本番30分前、ちょっと遅れたので打ち合わせ時間が15分ほどしかない。説明聞きながらメイクをし、着替えをする。かなりせわしない。お気に入りのアニメを、というので『ケロロ軍曹』をあげるが、この番組の裏番組。しかし、マーいいでしょうと許可降りる。太っ腹だ。すぐに一階の、ガラス張りで外が見えるスタジオで『5時に夢中!』本番。司会は徳光正之、あの徳光和男の息子さんである。

新聞記事にコメントを添える、街角(神保町)で私の顔写真を見た人たちの質問に答える、など、いろいろといじられる。徳光さん、どうもかなりのオタクらしく、『魔法使いサリー』の話や昭和映画の話でCMタイムなどに盛り上がる。なにしろ顔を合わせていきなり
「カラサワさん、『幽』に書いてますよね!」
などと話しかけてくるのである。“『二代目はオタクちゃん』理論”の証明がまたここで。

ここで今話題の首相の靖国参拝賛成/反対の視聴者アンケートがあったが、僅差ではあったが最終的に賛成が上回るという結果が出た。コメントを求められて
「靖国参拝自体の是非はともかく、この“行くと言ったら行く”というガンコさが小泉首相の人気の秘密でしょうね」
と答えておく。立場不明瞭と揶揄されるかもしれないが、“ワイドショー政治”研究を主な守備範囲にしている私の、こっちが主要な興味のポイントなのである。日本という国は首相を精神的象徴性で選んでいる国ではない。実は靖国問題というのはマスコミや親中韓派が勝手に騒いでいるだけのことだ。現在の心境としては中国や韓国に対する政治的嫌味として行くべきではある、と思うが。

なんとか無事に番組、終えて、着替えもそこそこにタクシーに乗って、すぐ赤坂へ向かう。今日の収録で使うCDを事務所に忘れてきたので、オノに取りに行ってもらったので、TBSで合流。海保アナに先日の観劇のお礼を。ダンスチームの美加子ちゃんの実力をきちんと認めていたのがさすが。

さて、お題は『カメラ』と『クスリ』。カメラは下調べざっとしてあったので、話自体は楽。クスリの方は文字通りの“自家薬籠中”である。時間もさすがに十何回目になると読めて、過不足なく並べることが出来る。ただし、あまりに過不足なく並べると幕の内弁当になってしまう。時にはウナギ弁当のように、“今日はこれだけ!”の回も作らねばならん。ポッドキャスティングの方が聞き所は押さえられているかも知れぬ。

今日は珍しくI垣プロデューサーが来て、ずっと調整室の中で番組を聞いていた。番組終って、これからすぐ新宿なので挨拶もそこそこにエレベーターに乗るが、二人きりになったところでオノが、さっきから口がむずむずしていた、という感じの早口で
「I垣さんにさっきお話受けたんですが」
と、耳打ちをしてくる。プロデューサーがずっと収録につきあっているんで、予感はあったが、ちょっとテンションがあがる。まだオフレコなんで詳しくは言えないが、いろいろと他のスケジュールと合わせて、頭の中がカチャカチャと動き出す。

赤坂から新宿。オノが“お腹が減ったのでロフトで梅チャーハンでも食べようかな”と言うので、ヤメトケ、後でご馳走するからと制止。胃袋は無駄に使うものでない。木原浩勝さんプロデュースの『妖・怪談義』ゲスト出演、本来はその予定はなかったのだが、佳声先生(正式ゲスト)から、やはり脇でサポートしてほしいと要請があったもの。小屋入り、10時からのオールナイトイベントだというのに客席満員。しかもまだこの倍くらいは入るだけ前売りが売れているという。

楽屋で佳声先生、佳江さん、かずおさんに挨拶、製作委員会SくんとエースデュースKさんももちろん詰めており、それに木原さん、化野燐さん、それから東雅夫さんも来て挨拶。さいとうさん、佳声先生が出てくれてうれしそう。ぎじんさんも来ていて(近くで飲んでいたらしい)バーバラにビデオカメラを貸していた。

開演早々に呼ばれて壇上に。ちょいと話して、佳声先生お呼びして、座談会となる。猫三味線について、また紙芝居、怪談劇について。佳声先生、楽屋では“初めてのお客だし、果たしてうけるか”とご心配のようだったが、出てしまうともう、その融通無碍なしゃべりでいきなり客をワシづかみにしてしまう。大したもの。もっとも、今の日本で猫三味線の話題でどこの客にウケるかと言って、ここの客以上にウケるところがあるとは思えない。私も正式に聴くのは初めてだった『怪猫伝』、語りが完全に歌舞伎調で格調高い……と思ったら主人公が惚れた腰元の幽霊に下半身を固くする、などという佳声調の部分もあり。

『猫三味線』予告ビデオ、紙芝居のあと、私があとは主体でいろいろと梅田佳声リスペクトトーク。ウケたウケた。しゃべることが心底好きなんだろう、ああ楽しい、と壇上で思う。私のクセで、芝居にしろトークにしろテレビやラジオ出演にしろ、引き受けたときは大乗り気で、やがてそれにからむスケジュール調整や準備などを考え、
「アア、引キ受ケルデハナカッタ」
と憂鬱になり、いよいよ逃れられなくなって現場にいくとアドレナリンが出てノリノリになる、というダンドリを大抵踏む。これで一生、忙しい忙しいと言ったまま、たぶん死んでいくのである。楽しがってだからいいのかも知れないが。

さいとうさんから促されて8月4日の『無駄にいい声ナイト』の告知もする。客席にプロの声優さんの茶風林さんと水落幸子さんがいらっしゃる(なんと楽屋に訪ねて来られて、一緒に写真を撮った)のでちょいとテレる。楽屋には角銅博之さんも来てくれた。najaさん、宮古さん(クスリ娘さん)にサイン頼まれる。

11時半、佳声先生送るのはバーバラにまかせ、打ち合わせ兼ねて青葉へ。イニャハラさんも見に来てくれていたのでご一緒にと誘う。Sくん、製作委員会の女の子、Kさん、イニャハラさん、ぎじんさん、それにオノと私、猫三味線初お目見えイベント大成功に青島ビールで乾杯。

オノにロフトでの食事を上司命令でストップさせていたのだが、ここの塩漬け豚(ニンニクと香草をまぶして食う)がいたく気に入ったようで、腹を空かせていた甲斐があったと喜ばれる。Sくんもマコモダケの炒め物の美味に驚いていた。他に炙りアヒル、大根餅、白身魚の塩炒めなど。みんな佳声先生の大ウケでちょっとごきげん、話がはずむ。私もハードデイズ・ナイトを無事、クリアして解放感で、いささかハイテンション。製作委員会の子が北海道出身なので、北海道言葉づくしで盛り上がる。イニャハラさんとは、例のことで。ぎじんさん、すでにアルコールが入っていることもあり、かなり酔ってワケがわかんなくなってオノにいじられている。いつもエージェンシー本社でのクールな代理店マンのぎじんさんしか見ていなかったSくんがそれを見て大喜びで笑っていた。DVD発売間近のストレスで、最近額に皺を寄せた顔しか見ていなかったSくんが爆笑するのを見て、私もうれしくなったことである。

2時まで食べて飲んで。しかしこの『青葉』は貴重だ。ロフトプラスワンに出演する者たちの前線基地といって過言でない。ア・青葉・クーである。支払い、Kさんがしてくれた。感謝。タクシー相乗りでオノと帰還。車中、いろいろと今後の策を練る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa